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 レイナルド殿下は魅惑的な笑顔を浮かべて、エスコートするように私に手を伸ばしてきた。私はレイナルド殿下の笑顔にドキドキしながらエスコートを受ける。

 


 レイナルド殿下の腕に手をかけ、学園の廊下を歩く。何度か緊張で息が止まりそうになった。永遠にも思える時間、長い廊下を歩き続けようやく食堂が見えてきた。

 食堂に入ろうとレイナルド殿下の腕から手を放す。解放感にほっとしていると、レイナルド殿下の腕が今度は腰に回ってきた。その瞬間心臓が飛び出しそうになる。ようやく落ち着いてきていた心臓がまた激しく高鳴るのを聞きながら、私は冷や汗を浮かべながらレイナルド殿下の腕に導かれるがままに席へと向かっていった。



 レイナルド殿下達が座る席は普段私とクレアが座っている席と違って、階段を上がったところにある王族用のスペースだった。この場所は王族在学中にのみ解放される。王族とそれに関係する者しか使えないためとても静かだ。

 広い室内は落ち着いたインテリアでまとめられており、食事をとる場所であろうダイニングテーブルの他にも広々としたソファセットなどが設えられている。

 そのダイニングテーブルにお兄様とアドレアン様が座っていた。お兄様はレイナルド殿下にエスコートされる私の姿をみとめてひらひらと手を振ってくれる。正直私は腰に回されたレイナルド殿下の手が気になってそれどころではなかった。アドレアン様は興味なさそうで、一瞬だけこちらに視線を寄越すとすぐにそらしてしまった。レイナルド殿下は2人を待たせているからといって特に急ぐ風でもなく、ゆったりとした歩調でテーブルまで歩く。私は緊張と2人を待たせている申し訳なさで走り出してしまいたいくらいだったが、レイナルド殿下の腕がそれをゆるしてくれない。レイナルド殿下はそのままゆったりとテーブルの前まで歩くと、私のために椅子を引いてくれた。私は緊張しすぎてそろそろ気が遠くなってきた。椅子に縋るようにして座ると、レイナルド殿下が椅子を合わせてくれ、そのまま私の隣の席に座った。レイナルド殿下の正面の席にはお兄様が、私の正面の席にはアドレアン様が座っている。


「待たせたね。ルーチェリア嬢も席に着いたことだし、食事にしようか。」


 レイナルド殿下の声を合図に給仕が目の前に食事の乗った皿を並べていく。どうやらここでは普段の私達が食べているような定食スタイルではなく、給仕付きでコース料理が供されるらしい。レイナルド殿下が定食を食べているところなんて想像ができないし、そういう意味では当然なのかもしれないが。

 いつも定食を食べているのでコース料理は新鮮だ。季節の食材を使ったいろとりどりの前菜に目を奪われる。


「ルーチェリア嬢はいつもは貴族用のスペースで食べているのかな?」


「いえ、いつもは平民との共用スペースで食べていますわ。」


「あれ?お友達のランドール嬢も貴族だよね?わざわざ共用スペースで食べているの?」


「貴族用のスペースだと周りの目や耳が気になってしまうので、気の置けない話ができる共用スペースで食べています。」


「そうか。じゃあ定食だろう?貴族用のスペースではコース料理を出しているけれど、平民用には定食だからね。コース料理は珍しいんじゃないかな?」


「はい。コース料理もあるんだということにびっくりしています。でも定食もすごくおいしいのでいつも満足していますよ。」


「それはよかった。王族専用席では貴族用のスペースとも出てくる料理が違うから、君が楽しんでくれると嬉しいんだけれど。」


「お気遣いありがとうございます。」


 今は他に人もいるからか、レイナルド殿下は安全運転だ。私はちょっとほっとした。これなら食事がのどを通らない、なんてことにはならずに済みそうだ。


「ルーチェも時々は僕たちと一緒に食事をしてもいいと思うんだよね。」


 唐突にお兄様に言われる。


「私もそう思うよ。せめて週に1回くらいは私達と一緒にランチにしてほしいな。」


 レイナルド殿下の言葉に私はぎょっとした。誘われることは想定の範囲内だったけれど、その頻度が高すぎる。まさか週に1回とは。どう断ったものかと頭を悩ませる。


「僕たちと一緒に食べるのは嫌かい?」


「そういうわけでは・・・ないんですけど。」


「じゃあ一緒に食べようよ。レイナルド殿下も僕もずっと一緒に食べたいと言っていたんだよ。」


 そう言ってお兄様はぐいぐい迫ってくる。私はとっさになんとか言葉をしぼりだした。


「あの、でも、私がいるとアドレアン様の迷惑になりますから!」


 アドレアン様がすごい顔で私を見る。レイナルド殿下とお兄様の視線が一斉にアドレアン様に向かう。


(アドレアン様、ごめんなさい。でもこうするしかなかったんです!)


 心の中で謝りながら祈るようにアドレアン様を見る。


「俺は別に迷惑じゃない。迷惑なのはお前たちだ。あんまり無理強いするなよ。」


 呆れたような、諦めたような態度でアドレアン様が言う。


「そうだね。ルーチェリア嬢を困らせるのは、私も本意ではない。では二週間にしようか。

 二週間に1度は私達と一緒に食事をとってくれ。」


 レイナルド殿下からこれ以上は譲らない、といった空気を感じて、私は諦めてその提案をのんだ。レイナルド殿下が望んでくれていると思うと、どうしても強く断ることができない。でも週に1回はさすがに心臓がもたない。2人を諫めてくれたアドレアン様に感謝しつつ食事を進めた。

 食事を終えた後も、レイナルド殿下が教室までエスコートしてくれた。去り際に耳元で囁かれる。


「君を困らせるのは本当に本意ではないんだけれど、私のために君が困るのを嬉しくも思うよ。」


 私は一気に真っ赤になった。レイナルド殿下は振り返らずに去っていく。心臓の音が鳴りやまない。二週間後が楽しみだな、気づけばそう思っていた。





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