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「ここにルーチェリア・ウィンサー嬢をアドレアンの役職補佐に任ずる。」


 多数決の結果を受け、レイナルド殿下が高らかに宣言した。アドレアン様と私は無言で頭を下げる。周囲から拍手が巻き起こった。

 私達の思惑とは関係なく、今年度生徒会初の議題は満場一致で可決された。先輩方は言うまでもないが、下級生は先輩方の勢いに押された形だ。


「じゃあルーチェリア嬢、よろしくね。アドレアンを探すのは大変かもしれないけれど、君には期待しているよ。」


 レイナルド殿下がとろけるような微笑みを向けてくる。息が止まりそうになった。王子が美形すぎて心臓に悪い。アドレアン様を探しに行く前に天に召されるところだった。


「頑張ります!アドレアン様もよろしくお願いします!」


 私は努めて冷静に見えるように装いながら、アドレアン様の方に話をそらした。





**********





 私は今日もクレアと一緒に食堂に来ていた。お兄様からのお誘いはあのままのらりくらりとかわし続けている。クレアには、そろそろお兄様が焦れてしびれを切らすんじゃないかと心配されている。いや、本人は心配していると言い張ってはいるが、あれは絶対に面白がってるんだと思う。まったく、他人事だと思って!

 お兄様の様子はうかがわなくてはならないが、今のところ平和にクレアと2人で食堂でランチができている。食堂では頼めばお弁当も用意してくれるようなので、今度中庭とかで食べるのもいいかもしれない。

 今日は私はAランチのビーフシチューオムライスを食べている。よく煮込まれた牛肉が舌の上でほどける。シチューもコクがあっていくらでも食べれてしまいそうだ。クレアはBランチの鶏のからあげ定食だ。からっと揚がったからあげからはかみしめる度に肉汁がこぼれ落ちていく。

 相変わらず食堂の食事はどれもこれも美味しい。私も余力があればBランチも食べたいくらいだ。マナーを気にしなければ、絶対にクレアと交換するのに。


「それで、生徒会はどうだったの?あったんでしょ?初会合。」


「うん。でも初回だから挨拶と今後の説明くらいだったよ。」


「王子殿下の生徒会長シーズンはうまくいきそう?」


「うーん、どうだろ。でもレイナルド殿下は問題なく場を取り仕切っていた気がする。先輩達も勝手知ったる感じで心強かったし。」


「そっかー。やっぱり完璧王子は違うなー。」


「完璧王子?」


「あれ?聞いたことない?レイナルド王子殿下のことだよ。あまりにも完璧すぎて誰からともなくそう呼び出して、今では王宮内でも陰ではそう呼ばれてるって話。

 ルーチェのお父さんって宰相様でしょ。聞いてみたら?知ってるかもしれないよ。」


「そうなの。けどたしかにわかる気はする。レイナルド殿下ってすごく頭がいいし、幼いころから王族としての執務をこなしていたみたいだし、剣の腕も素晴らしいのよね。」


「これで魔法ができたら本当に完璧か。魔法はどうなの?」


「魔法・・・。さすがにわからないわね。今度お兄様に聞いてみる。」


「で、魔法とい・え・ば!」


「魔法と言えば?」


「私達もやろうと思えば使用人とか庶民達みたいに魔法を駆使して料理とか使えちゃったりするわけよ。」


「???」


「つ・ま・り!

 大衆恋愛小説の平民女子ルートの鉄板!彼にドキドキ手料理の差し入れイベントが起こせるってことよ!」


「!!」


 クレアが力強く言い、私は感動に目の前がくらくらした。今までずっと差し入れイベントは平民女子の専売特許だと思っていた。貴族令嬢は火なんて起こせないから。

 でも言われてみればその通りだ。魔法の授業を真面目に受けて練習すれば私達にだって差し入れイベントを起こすことは可能だ。目から鱗が落ちた気分だ。


「どう?やる気出てきたでしょう。」


「うん・・・。すっごく。

 すごい、すごいよ、クレア!私今まで思いもよらなかった!魔法と料理を練習すればいいだけだったのよね。なんで気づかなかったのかしら?自分の馬鹿さ加減が恨めしい。」


「そうよ。私そのために魔法の授業すっごい楽しみにしてたんだから!」


「クレアってすごく頭がいいわ!」


「でしょう?もっと褒めてくれてもいいわよ。

 それで作ったら差し入れる相手の心当たりはあるの?」


 私の頭にアドレアン様が浮かんだ。アドレアン様がちょうどいい。多少失敗してもアドレアン様なら多めにみてくれるだろう・・・・・・たぶん!

 

 

 私が考え込んで無言でいたら、クレアは相手が思いつかなくて悩んでいると勘違いしたようだった。


「誰かいないの?生徒会に。あ、王子殿下はダメよ?さすがに王子殿下に手作り品なんて得体のしれないものは渡せないもの。毒見だって必要になるし。」


「そっか。そうね。そういえばレイナルド殿下って王子様だったわ。」


「やだ。忘れてたの?」


「つい、レイナルド殿下が完璧すぎてただのレイナルド殿下という完璧な存在なんだと認識していたわ。いけないいけない。王子様だったわね。」


「生徒会に他によさそうな人はいないの?生徒会と言えば将来有望な人材の宝庫でしょ?」


「うーん。まだよく知らないしなぁ。わかるのなんてお兄様とアドレアン様くらい。」


「!

 いいんじゃない?アドレアン・カタル様。騎士団長の息子だし、将来有望じゃない。

 なんといっても騎士様よ、騎士様。恋愛小説の定番じゃない!騎士様に差し入れ!」


「たしかに!

 そう言われてみるとアドレアン様がとてつもなく魅力的に思えてくるわ。」


「じゃあ決まりね。私達は魔法と料理を練習して、ルーチェがアドレアン様に差し入れを渡す!」


 クレアの剣幕と恋愛小説への憧れから、私は無意識に首を縦に振っていた。





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