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 レイナルド殿下との手紙のやりとりと並行して、私は相も変わらずアドレアン様との手紙のやりとりも行っている。こちらは元通り週に1回ペースだ。何か特別なことがあるとそれ以外に送ることもあったりするのだが、基本的には週に1回ペースを守っている。領地にいるので口の堅い使用人達が手紙を送ってくれるので、手紙が溜まることもなく無事にやりとりを続けている。


(ところでアドレアン様はこんなに頻繁に手紙のやりとりをしていて、家族に不審に思われないのかしら?私が送っているからなのだけれど気になるわ。)


 そんな疑問を直接アドレアン様にぶつけていいか悩みつつ、私はペンをとった。


『アドレアン様には以前、お兄様と一緒に授業を受けることになったとお話したと思うのですが、この度お誘いを受けまして私も一緒にレイナルド殿下の勉強会に参加させていただくことになりましたので、お伝えいたします。

 王宮の講師の方は各界の第一人者の方ばかりだと、お兄様が言っていたので楽しみです。家庭教師の授業も悪くはないんですが、教科書通りで最近ちょっと飽き飽きしていたんです。現場にいる最前線で働いている方から生の声が聴ける機会があるなんて今から興奮してしまいます。』


 必要なことを伝えてはいるものの、聞きたかったことと違うことを書いてしまった。


(どう書いたらいいかしら?そもそも手紙を送りつけている私が聞くのもはばかられるのよね。)


 ところでアドレアン様は、こんなに頻繁に手紙のやりとりをしていて家族や使用人に不審がられたりはしていませんか?私がアドレアン様の家族なら絶対に気になると思うんですが。相手は誰なのかとか、相手との関係はとか。

 頭の中で考えたアドレアン様への質問の文面を破り捨てた。


(ダメだわ。さすがに私が言えた義理じゃないわ。気になるけど考えないことにしましょう。)


 私は必死にその考えを保留にすると、当たり障りのないことを書いてアドレアン様への手紙を書き上げた。





 時の経つのは早いもので、お兄様の足を踏みながら一生懸命ダンスの練習に励み、お兄様と一緒に授業を受け、レイナルド殿下やアドレアン様に手紙を書き、休みには大衆恋愛小説を読みふけり、と過ごしているとあっという間に社交シーズンがやってきた。



 社交シーズンが始まるとわりとすぐに私の誕生日が来る。今日で私も8歳になる。今年はもっとダンスがまともに踊れるようになりたい。せめてお兄様の足を踏むのを3回に2回くらいにしたい。このままじゃデビュタントの時にレイナルド殿下の足を踏んでしまう。それだけは避けなければ・・・。

 この国ではデビュタントの令嬢達と王子が踊る習わしがある。令嬢達は皆それを楽しみにダンスの練習に励むのだ。私も例外ではない。デビュタントで王子様と踊る、というのは理由はわからないがなにか特別なものがある。結婚式で白いドレスを着るようなものだ。なぜ白いドレスに憧れるのかはわからないけれど、結婚式はやっぱり白いドレスが着たい。デビュタントで王子様と踊るのはそんな感覚なのだ。


(せめて王子様がレイナルド殿下じゃなくてアドレアン様とかなら足を踏んでも罪悪感に駆られずに済むのかしら?)


 私が現実逃避をしていたら、遠くでお父様が私を呼ぶ声がした。


(いけない、今は誕生日パーティーの途中だったわ。主役なんだからしっかりしないと!)


 私は慌てつつも優雅な足取りでお父様の方へ向かった。


「やぁルーチェ、誕生日おめでとう。8歳になってもルーチェは可愛いね。妖精のようだよ。」


「ありがとうございます、お父様。大げさですわ。」

 満面の笑顔で言うお父様を淑女の笑みで躱す。


「おや、つれないね。もう赤くなって照れてはくれないのかい?」


「私はもう淑女(レディ)ですから。今年はダンスでお兄様の足を踏まないようにするって決めましたの!もう今までのルーチェとは違いますわ!」


(そう。デビュタントのために!)

 私は心の中で誓った。


「おやおや。それは立派な心掛けだね、レディ。

 ところで小さなレディ?君のお誕生日にプレゼントが届いているよ?」


「まぁ、ありがとうございます。」


「レイナルド殿下からだよ。

 これは半分。もう半分は重かったから君の部屋に運ばせているよ。後で見てごらん?」


 そう言ってお父様は私に綺麗にラッピングされた小箱を手渡してくれた。包装を破かないように丁寧に箱を開けると、薔薇を模した髪飾りが入っていた。金色の茎にサファイアの薔薇がついている。去年の豪奢なものとは違い、普段使いできそうな可憐なデザインだ。


「可愛い。これならいつでもつけられるわ。」


「つけてあげよう。おいで、私のルーチェリア。」


 お父様が髪飾りをつけてくれた。私は髪飾りを見せびらかすようにその後もパーティーを楽しんだ。




 部屋に戻るとお父様が言ってた通り、レイナルド殿下からのプレゼントが届いていた。なんだろう。とても重い。

 開けてみるとそれは外国の本だった。何か国かのものがある。


(そういえばレイナルド殿下にどの国の言葉ができるか聞かれたわね。このためのものだったのね。)


 見ると恋愛小説ばかりだ。どうやらレイナルド殿下は私が手紙に書いたことを覚えてくれていたようだ。少しめくってみるとどれも王子様と貴族令嬢との話だった。


(外国ではどこの国でも王子様と貴族令嬢とのラブストーリーが主流なのかしら?)


 レイナルド殿下に感謝して今夜から少しずつ読み始めることにした。しばらくは王子様と聞いただけでときめく毎日になりそうだ。領地にいるおかげで本物の王子様であるレイナルド殿下に会わなくていいことを心から感謝した。その状況で本物の王子様なんかに会ったら変な行動をとってしまいそうだ。



 レイナルド殿下からのプレゼントの陰にこっそりとアドレアン様からの手紙が置かれていた。今年は何も言ってないが私の誕生日を忘れないでいてくれたみたいだ。

 そっけないカードの他に今年は耳飾りが入っていた。私の瞳と同じしずく型のアメジスト。

 アドレアン様はどんな顔をしてこれを選んだのだろう。そもそもどうやってこれを入手しているのだろう。アドレアン様が家族や使用人からどんな風に思われているのか、やっぱり気にならずにはいられなかった。





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