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第91話 授業

いつも読んでいただきありがとうございます

 あれから2週間、生徒たちはメキメキと腕を上げ現在はそこそこの彫金による作品を作り上げることができるようになった


「先生!できました」


 そう言って手をあげるのは赤毛の三つ編みの少女ルルだ


「ふむ。どれどれ」


 ルルが今回、作り上げた作品はひし形のプレートに透かしを入れたのペンダントトップだ

 まだ随所に甘さが残るがまあまあの作品に仕上がっている


「ふむ。もうすこし全体的に彫りを深くしみるとがよい。あといつも申しておるがヤスリがけが荒いぞ。もっと丁寧に優しく削るのじゃ」


「はい!わかりました」


 元気よくルルは返事をすると作業に集中し始めるその姿を見て清十郎は満足そうに頷く


 ルルは他の生徒よりも成長が著しく清十郎が指導してから他の生徒たちが作品に銀貨1枚つくのがせいぜいだがルルに関しては時折、大銀貨1枚に手が届くほどになってきている。もちろん最年長の15歳で今年卒業を迎えるのだが


 その一方で清十郎はまだ選択授業に入りたてのビットくらいの少年に声をかける


「ふむ。そなたは彫金作業は苦手と見えるな」


「はい・・・」


 少年が作り上げようとしている作品を見て清十郎は細かな作業が苦手と見抜いた


「たしかおぬしは兜を作ろうとしていたな」


「覚えていてくれたんですか?」


 清十郎に言われぱっと少年の顔が明るくなる


「うむ。しかと覚えておる。おぬしは細かな作業は苦手じゃが叩き出しについてはなかなかのものじゃと思っておる」


「はい!叩き出しについては自信があるんです」


「ふむ。そうじゃのう。じゃがな、将来お主がどのような道を進むかわからぬが今やっておる作業はきっと役に立つ」


「そうですか?」


「うむ。例えば剣には細かな細工が施されておるであろう?」


「はい。見事な装飾が施されています」


「あれはこういった細かな作業の集合体じゃ」


「え?」


「彫りも叩きも透かしもすべて取り入られてこその細工じゃよ」


「そ、そうなんですね」


「うむ。そうがっかりするでない。儂もお主くらいの時は彫りがうまくできず悩んだものよ。悩んで悩んでいろいろ挑戦することで身につけていくものよ」


 少年が思わず清十郎を見る。その顔には清十郎教官が?と書かれている


「ははは。そう不思議なものでもなかろう。誰でも最初があるのじゃ。しっかりと励め!」


 清十郎はそう言うと少年の頭をぐりぐりと撫でまわしその場を離れる

 少年がもう迷うことはなかった。一心不乱に打ち込む姿を後ろ目で見て清十郎は頷く


 こうして中にはまだ作品に値が付かずがっくりとうなだれる生徒もいるが清十郎の的確なフォローもありふて腐らずにがんばっている


 みんなの打ち込む様子を見て一番前の席にもどるとヘレンがにこにことしながら声をかけてくる


「ふふ。みんな以前と違いしっかりと打ち込んでいますね。これも清十郎先生のおかげです」


「いやいや。儂は導いておるだけですべては本人次第よ」


 笑いながら首をふる清十郎をみながらヘレンはこの2週間を振り返り正直感心していた


 清十郎は生徒たちを教えるにあたってまず授業の形を統一した

 各々作り上げていた作品を一回やめさせ彫金をまず覚えさせることを優先したのだ


 手始めに正方形の鉄の薄いプレートを渡しそれを元に作品を作らせることにしまずは紙面で設計図を書かせ荒唐無稽な作品から入ることを省いた。イメージさせる練習もかねてのことだ


 鉄のプレートについては生徒たちに授業の一環として炉の使い方を実践して見せた

 正方形の木のプレートを押し付けて作られた砂型に溶けた鉄が流れ込むのと見た時には歓声があがったほどだ


 いずれ鍛冶の授業をと思うが技術の低いものにレベルを合わせないと授業の進行自体に遅れが出るのでそこは一旦お預けだ


「しかし、ヘレン殿は午後の授業は大丈夫なのか?」


 清十郎はこの2週間、自分につきっきりのヘレンが気になり尋ねてみる


「はい。私は主に午前が担当で午後からは他の先生方の補佐に回るんです。それに今は校長先生からも清十郎先生の補佐に入るように言われておりますから大丈夫ですよ」


「ふむ。それならいいんじゃ。ところでここの生徒は職人科の生徒じゃよな?」


「はい。それがなにか?」


「儂はてっきり鞄やら服やらもつくるものかと思っておったがちがうのか?」


「ああ。その点は大丈夫ですよ。ここの生徒たちは鍛冶などの金属加工を扱うのを目指す子供たちです。鞄とか服を作ることを目指す生徒たちはまた別の教官がおりそれぞれに細かく教室が分かれているんですよ」


「ほう。そうなのか。てっきり儂はそれらも教えねばならんかと思って冷や冷やしておったわ」


 そう言って笑う清十郎にヘレンもつられて笑う


「先生できました!」


 そこに一人の生徒が蔓を巻き付けたようなデザインの指輪の作品を持ってくる


「どれどれ」


 清十郎が持ち込まれた作品を様々な角度から見る

 全体的にルルほどの作品の完成度ではないがまんべんなく統一され一応合格点が出せるレベルだ


「うむ。一応、売り物にはなるじゃろう。ヘレン殿どうじゃ?」


「そうですね・・・」


 ヘレンは清十郎から渡された指輪を様々な角度からみて頷く


「大銅貨3枚ですね」


「だそうじゃ。これを買い取りに出すか持ち帰るかどちらにするのじゃ?」


「大銅貨3枚かぁ・・・。買取でお願いします!」


「よかろう。では、大銅貨3枚じゃ」


「やったー!ありがとうございます!」


「ただし次回はもう少し柄を強調できるように周りの彫りを深くするか透かしをところどころ入れて作品にお主の色をもっと出すとよいな」


「はい!次からその点を気を付け作ってみます」


「うむ。では大銅貨3枚じゃ。これからもしかと励め」


 清十郎は懐から取り出した巾着袋から大銅貨3枚を渡し作品を綿が敷き詰められた買い取りの箱の中にしまう。中には持ち帰り自分の実家の店で並べてもらうと言う生徒もいるが大体は買取を希望する


「生徒たちも腕をあげましたね」


「うむ。きちんと技量も身についてきておるし先が楽しみじゃ」


 そう言うと清十郎は満足そうに頷くのであった


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