第77話 剣を作る
いつも読んでいただきありがとうございます
今回、いよいよ剣作りに入りました。ただ専門の方や詳しい方から見るとなんだそれって話かもしれませんがそういうものと思って読んでいただければ幸いです
あと活動報告にも書きますがストックが大分前に切れて毎日2話投稿が若干難しくなってきました。少し構想を練る為にも更新ペースが週に1度~2度程度の不定期更新になるかもしれませんがよろしくお願いします
清十郎はいま熱く燃え上がる炉の前で腕を組み思考に耽っていった
となりには鈍い銀色に光る鉄のインゴットが木箱に詰めて置いてある
清十郎はその一つを手に取る
バングリーにはすでにウェインからの依頼の話を打ち明け協力を仰いだ
豪快に笑いながら工房にあるものはすべて好きに使っていいと言われているがその代わり出来上がったものは必ずみせろよと言われている
いろいろな箇所を指でたたいて硬度を確かめる
「ふむ。一回、鋳造してあるだけ純度は均一か・・・」
清十郎は悩む。前世ではたたら製鉄で玉鋼が作られそこから水減らし、小割を行い皮鉄と心鉄に鋼を分けることができたが純度が均一なると話が違ってくる
また工房に通いこちらの世界の武器の作り方を一通り見てきたが切れ味を優先する刀とは勝手が違いどちらかというとこちらの世界では強度を優先しているように感じる
魔物がはびこるこの世界では武器が壊れればその瞬間命は終わることを考えれば壊れない武器が優先されてきたのかもしれない
壊れない武器と切れ味の両立はなかなか難しい
清十郎は既存の刀の作り方で作るべきかこの世界のように鍛錬で均一の硬さを目指すべきなのかそこで迷っていたのだ
理想は硬度と切れ味の両立。果たして自分にできるか
わずかな逡巡の後、愚問だなと清十郎は自分に言い聞かせる
「よし、やってみるか!」
清十郎は炉で火を入れていた若いドワーフに変わって火を入れる
ここから清十郎の異世界初めての剣作りが始まる
木を削り清十郎が思う片手剣の原型を彫り上げると砂型に押し込み型を作る
今回作るのは剣と柄の一体型だ。重心が決まっていないと扱いずらいがウェインから国王の大体の体格や動き方は聞いている
まずは鋳造からとりあえず剣の最終の形態のイメージは片手剣だ
鞴を動かし火を起こす。もっともっとと炉から声が聞こえてくる。その声に合わせ鞴から炉に風を送る。
もう十分と声が聞こえなくなるまで火をおこし切ったところで火の上がり方から鉄が溶けたのを確認するとハンマーを使いふさいでいた土をたたいて割ると溶けた鉄が勢いよく流れだし砂型に流れ込む
次に冷めたころ合いを見計らって砂型を壊し中から鉄の棒にしか見えない物を取り出し空いている火床を使い火をおこしそこに鉄の棒にしか見えない物を突っ込み十分に熱したのを見計らって火箸で掴み取り出し叩いていく
清十郎はもっとという声をを聴きながら叩き一文字鍛えと十文字鍛えを場所によって変え使い分け柄の部分から刃までまずは均一に叩く。その後もっとと声が聞こえるがいったんやめる
いつの間にか周りにはドワーフたちが集まって自分が見られていたのに気づいた
その一番手前にはバングリーがまじめな顔で腕を組んで作業を見守っていた
「おお。バングリー場所を借りておるぞ」
清十郎がバングリーに声をかけるがバングリーは難しい顔をしたまま微動だにしない
「おい」
やがて口を開いたバングリーはどこか怒っている様子だ
「なんじゃ?そんなに険しい顔をして」
「なんで中途半端で放っておく」
「ふむ・・・」
清十郎はバングリーが怒っている理由を大方察した
「まあ。みておれ」
「お前がそういうなら考えがあるんだろうが中途半端はゆるさねえぞ」
「ああ。わかっておる」
清十郎は囲んでいるドワーフを押しのけもう一度、炉に向かう
再度、炉に火を入れ鉄を溶かし今度は棒状にした砂型に流し込む
頃合いを見て砂型を壊し鉄の棒を火床に持ってくると今度は剣の時と違い全力で精錬する
鬼気迫る清十郎の雰囲気に周りにいたドワーフたちはバングリーをはじめ息を飲みじっと見守る
やがて四枚に鍛え上げた鋼の板を最初に鍛えた剣に包み込むように合わせていく
清十郎がやろうとしているのはあえて叩きを少なくし心鉄の代わりにしよりたたき上げた皮鉄をそのまわりに巻いていく造り込みの作業だ
火床で熱しては叩いていく。そのころになると剣から聞こえてくる声も統一され満足そうな声になる。清十郎は一通り満足すると最後に焼き入れを行う。本来、日本刀は土置きをするが反りをつくらないこちらの剣には土置きは使わない
そこまで終えていったん清十郎はふうーと長い息を吐く
最後、自分で持ち込んだイグリッドの店で買った研ぎ石を使い研ぎを行っていくとやがてきれいな刀身が現れる。工房にある数々のやすりを使い柄の部分まで磨き上げる
「よし!できたぞ!」
その瞬間、周りから大歓声があがる
「な、なんじゃ!?」
「お前の技術にこいつら全員見惚れちまってたんだよ!」
バングリーは破顔しながら清十郎の背中がをばしばし叩く
「いたっ!いたいぞ!バングリー、力が強すぎる!」
「がはは!途中はどうしたものかと思ったがさすがじゃな!」
「うむ。一応はできたが果たして儂の思うような物にできあがっているかどうか・・・」
周りの反応とは正反対に清十郎は難しい顔をする
柄を持ち目線の高さに剣を水平にし確認する
樋が刀身に二本入り澄んだ輝きを湛えている
「そうか・・・なら、一つ試し切りをしてみるか」
バングリーはそう言うと弟子に命じて木偶人形に鉄の鎧を着せたものをもってこさせた
「清十郎斬ってみろ」
「ふむ。なら言葉に甘えさせてもらうか」
清十郎は今、作り上げた剣を持つと袈裟切りに鎧を切りつけるとまるで熱したナイフでバターを切るようにするりと刃が入る感触がした
剣を振り切った後、しばらくしてから木偶人形は鎧ごと斜めに切れ倒れる
「すげー切れ味だな!」
「ふむ。まあまあじゃな」
「それでまあまあか・・・」
清十郎の言い草にあきれるバングリー
「目指すはやはり納得のいくものでないとな」
「というか・・・この剣、一本で金貨100枚は行くぞ」
「もう一本作ってそちらを贈り物にするか」
先が見えてようやく笑顔をみせる清十郎にバングリーはあきれる
「こちらでも十分だと思うがな」
「まあ。それでもいいができるならびっくりさせてやりたいではないか」
「それもそうか」
清十郎とバングリは顔を見合わせると笑いあうのであった
周りのドワーフたちは自分たちが目指す遥か高みを見せつけられて火が付きしばらくバングリーの工房では泊まり込みで槌を振るう音が響きこの時に作られた剣の数々はバングリー工房きっての名剣と謳われるのだがそれはまた別のお話
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