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第76話 工房と面倒事

いつも読んでいただきありがとうございます

 朝食後、清十郎はウェインに呼ばれ執務室のソファーで座っていた

 執務室の机の上には大量の手紙が置いてあるがそちらはあえて見ないようにする


 ロムアが淹れてくれた紅茶をウェインは口にする


「清十郎、わざわざ呼び出してすまないね」


「構わんよ。ところで用はなんじゃ?」


 清十郎は今日も今日でバングリーの工房に行く気で気持ちはすでにそちらに行っている


「顔を見ればわかるけどほんと鍛冶が好きなんだね」


「うむ。儂の生きがいじゃからな」


「なら、イリアと比べたら?」


 ウェインは最近の手紙の件もあって少し意地悪をしてみたくなった


「もちろんイリア殿じゃ」


「え?即答?」


 ウェインはてっきり悩むかと思ったらまさかの即答に吃驚する


「うむ。ウェインよ。守るべきものを間違えてはいかん。もし儂が鍛冶とイリア殿のどちらかを選べと言われたら儂は間違いなくイリア殿を選ぶ」


「そ、そうなんだ」


「うむ」


 さすがに予想外の態度にウェインが気持ちを落ち着かせるために紅茶を飲み干す

 すかさずロムアがカップを下げ新しく紅茶を淹れ直す


「ちょっと話がそれてしまったけど今日呼んだのは例の工房の話でね」


「おお!どうなったんじゃ?なかなか話が進んでおらんかったようじゃが」


「ちょ、ちょっと清十郎近い!顔が近いって!」


 テーブルに手を付きウェインに迫る

 さっきの話はどこ行ったとウェインは思うがなんとか清十郎の体を両手で接近を阻止する


「す、すまぬ。つい・・・」


「はぁ・・・そこはぶれないね」


 清十郎が面目ないとソファーに座り直すとウェインは溜息を吐く


「実は工房はすでに用意してあるんだ」


「なに!」


 またもや飛びつこうとする清十郎を両手でなだめる


「まあ、落ち着いて聞いてよ。以前、うちの離れを工房にするという話だったけどあれはレギウスと話し合って無しにしたよ」


「なぜじゃ?」


「君が目立ちすぎて手元に置いておくと要らぬ嫌疑をかけられるからさ」


「ううむ。すまぬ」


 なんとなくレギウスとウェインの苦労を思い謝る


「まあ、今更だからそれはいいとして君にはアボルグの中層区にある一軒の工房を宛がうことにしたんだ。以前、やっていた人が年で辞めてしまってね。空いていたからそこにバングリー殿と話し合って手を入れて使えるようにしたんだ」


「おお。それはありがたい」


 ウェインの話に清十郎は心から感謝する


「ただ、そこ表が武器の商店になっているから武器屋兼工房って感じになるけどいいかな?」


「ふむ。まあ、儂が作ったものを置いておけばいいんじゃろ?」


「まあ、そうだね」


「なら、それで構わん。ただ金勘定は儂は苦手だからな。接客と金勘定をどうするか・・・」


 腕を組み唸る清十郎にウェインはにこやかに笑う


「大丈夫だよ。そこはしっかりとした人物を宛がうから」


「儂の知っている者か?」


「もちろん。よく知っているよ。まあ、楽しみにしておいてよ」


「まあ、お主がそのようにいうなら楽しみにしておくか」


「そうしておいてよ。ところで一つ頼みがあるんだ」


 ウェインはそれまでの和やかな表情から居住まいをただし真面目な顔になる


「申してみよ」


 清十郎が先を促さすとウェインは口を開いた


「王への献上用に一本剣を打ってほしい」


「それはまたなぜじゃ?」


「理由はいろいろあるけど大きくは君の王への忠誠を示す為かな」


 そこで清十郎は渋い顔をする。前世でも権力者からは散々狙われてきた清十郎だ。自由を奪われるのは許容できることじゃない。清十郎の顔を見てウェインは首を振る


「なにも君を縛り付ける為のものじゃないんだ。むしろ君の自由を保障させる為に必要なのさ」


「どういうことじゃ?」


「君はあまりにも目立ちすぎた。王女殿下からのあの山のような恋文を見てわかるだろうけど近々王都へ呼び出される。バングリー殿からも聞いていると思うけど冒険者ランクが上がると思うから否が応でも応じなければならなくなる」


「別に冒険者を辞めてもいいんじゃが・・・」


「辞めても君の名はもう近隣諸国に伝わっているからどこにいっても君を縛り付けようとする輩は現れるし冒険者ギルドの後ろ盾がなくなれば余計に各国が君を狙うよ

 最悪、イリアも狙われることになるかもしれない・・・」


 そこで清十郎の怒気が膨れ上がるのをウェインは慌てて両手で清十郎をなだめる


「そう怒らないで。だからこそ君に一本剣を打ってもらいこの国の王に忠誠を誓っています。と形だけでも示しておくんだよ」


「ふむ・・・」


「落ち着いたようだね。だから君の自由を保障する為にもこの件は僕の言う通りにしてくれないかな。悪いようにはしないからさ」


 そこで清十郎は渋々ながらも頷いて承諾するのであった


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