第56話 清十郎解呪する
いつも読んでいただきありがとうございます!
昨日は大変申し訳ありません
手違いで連続投稿になってしまいました(^^;
「これは・・・」
清十郎は目の前の状況に唸る。ベッドの上で眠る薄茶色の髪の少女。そこまではいい。自分が助けた娘だ。
しかし問題は掛布をめくって露わになった肌だ
いたるところに焼きごての後が残り他にも鞭打ち等をうけたであろう古傷が胸部から腹部にかけて無事なところを探すのが難しいような状態だ
「清十郎さんが驚くのも無理はないわね。でもこの子は今まで虐待を受けていたみたい。それと強力に洗脳されていていたわ」
黙ってベッドに眠る少女を見ている清十郎に後ろから青い髪のおっとりとした顔の女性ポーラが声をかける
あの後マリーの店でダメージを受けた清十郎はそこを最後にアンガスと別れ屋敷に帰ってきたところポーラに呼ばれこの間、助けた娘の状況を聞かされている最中だ
「つまりは清丸で心臓を寸分たがわず貫けばいいのじゃな?」
清十郎はポーラに視線を向ける
「ええ。あなたの清丸ちゃんはおそらく神剣と呼ばれる神級の武器になっているわ。清丸ちゃんなら心臓を止めても心臓の代わりを果たすことができるはずよ」
ポーラのいう事はこうだ蛇の呪印が心臓に巻き付いている為、心臓を一旦破壊することで殺したことにする。しかし心臓が全身とつながっていては心臓を破壊して回復させても蛇の呪印は死を認識しない
なので清丸によって心臓だけを隔離した空間に閉じ込め体は清丸を通じて血を通わせて体を生かしたま
ま蛇の呪印に死んだことを認識させる。蛇が霞みとなって出てきたところを清丸によって浄化し解呪するというものだ。心臓は後から清十郎によって回復させるというかなりの荒業だ
「ウェイン様からも、解呪が成功し洗脳をどうにかできればこの屋敷で保護をしてもいいとお言葉を承っております」
トレードマークのカイゼル髭を触りながらロムアが清十郎に言葉をかける。清十郎はその言葉に頷く
現在、この部屋には清十郎とポーラとロムアしかいない。呪いという極めて厄介な代物な為、万が一を考えて事情を知る3人のみがいる状態だ
「しかし、ここまでひどいとはな。この娘はこれまでよう生き残ったのう。可哀そうに」
「ええ。私も最初に見た時には吃驚したわよ。古傷になると体が覚えてしまって回復させることができないからこの子は清十郎さんのところに来るべくして来たのかもしれないわね」
ポーラがにこやかに清十郎に答える。言外に古傷も治してあげてねと言っているようだ
「さて、こうしていても埒が明かない故、さっそく始めるとしよう」
(清丸、どうじゃ?ポーラ殿の言うような事ができるか?)
清十郎は清丸に問いかけると頑張ってやってみると伝わってくる
「よし。清丸、頼むぞ」
清十郎は気合を入れるとティリの心臓めがけて寸分たがわず清丸で一気に刺し貫く
その瞬間、清丸から凄まじいほどの輝きが放たれる
「これは・・・凄まじいものですな」
「ええ。これほどとは思わなかったわね・・・」
ロムアがその光景に目を奪われるも隣ではいつものほほえみを消し真顔でその状況を見守るポーラに気づく
「何か不安でも?」
「これだけの神気を放つとは誤算だったわ。これでは教国にごまかしが効かないわね」
「ですが巫女のスキルは1代限りのはずでは?
失礼ですがあなたが生き永らえた今、神気を感知できる者はいないと思うのですが」
ロムアの言葉にポーラは軽く首を振る
「いいえ。これだけの神気だと教皇様あたりは勘づくわよ」
「ふむ・・・。そうなると教国の対策を練り直さねばなりませんな」
「ええ、そうね、でも今はこの成り行きを見守りましょう」
ポーラはそれ以降、口を閉ざし優しく微笑んで清十郎を見守るのであった
ロムアとポーラが会話を交わす中、清十郎はみるみる清丸に奪われていく魔力に余裕がなくなって
いた
(これ清丸、魔力を吸いすぎじゃ。抑えることはできんのか!)
思わずと言った感じで清十郎は清丸に問いかけるが無理と返してくる
まるでバケツの底に穴が開いたように凄まじい勢いで魔力が吸い取られ清十郎は気を失いそうになるが気合で気を持ち直し体の全魔力を集め枯渇しないように調整する
やがてその甲斐あってかティリの体から黒い霞の様なものが浮かび上がり蛇のように形を作り清丸に
巻き付いてくる
清丸から気持ち悪い!という感情が流れ込んできたところで清丸が一際、輝きを放つと黒い蛇は木っ端
微塵に吹き飛び消えてなくなった
「清十郎さん!ここからよ!魔力を通したまま引き抜く時に貫いた部分を治していくようにイメージ
して!」
ポーラの声に魔力の枯渇で意識がなくなりかけた清十郎は集中し言われた通りにする
もはや余裕がなく顔からは滝のような汗が流れ出るがなんとか清丸をゆっくりと抜き切った
そのあとの少女の様子をポーラが見る
「清十郎さん、急いで魔力を循環させてあげられるかしら?それで心臓も合わせて動き出すと思うから」
今にも倒れこみたいほどつらい。だがこれくらいのつらさは鍛冶仕事では当たり前のことそう思い心を奮い立たせる
「・・・あぁ。今すぐに取りかかる」
清十郎は自分の両手で頬を叩き気合を入れ直すとティリの胸に手をあて集中する
ポーラの時と同じように魔力を流し込む。ただあの時と違い魔力操作はだいぶ慣れている
だからこそ以前よりも楽に魔力を無駄なく流し込めるしポーラの魔鉱石病と違い先ほどまで動いて
いた魔力だからこそより操りやすい。すぐに魔力の循環が始まるとティリの心臓が動き始めたのが感覚でわかる
次いで塞がれたような壁や、やたら細くなった表面側の魔力の通り道を順次広げたり時折壁を壊したり通り道を整えて治していく
ポーラの時とちがい整えていく場所が少なかったのは救いか
やがて魔力が切れる寸前で作業は終わり清十郎はベッド脇に置いてあった椅子に座りこむ。もう立つのもつらいほど魔力の枯渇がひどい
ポーラが少女の様子を再び確認する
「さすがね。傷跡もないし心臓も動き出してる。もちろん呪いも無くなっているわ。清十郎さんよかったわね。無事にこの子を助けることが出来たわよ」
椅子にぐったりと座る清十郎にポーラは優しく微笑みがんばりましたと頭をなでてくる
返す言葉もつらい清十郎はなすがままに撫でられ続けるのであった
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