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第52話 バングリー家の食卓

いつも読んでいただきありがとうございます!

 

 椅子に座る清十郎の目の前には料理の数々が並び旨そうな匂いが鼻の奥をくすぐる

 腹が鳴り今にもとびついてかぶりつきたいがテーブルを挟んで目の前のこの家の主がいいとは言わない。目の前には立派な口ひげと顎髭を生やし頭が輝く男が座っている


「さぁ。これで最後の料理、子豚の丸焼きができあがったよ」


 ドンとテーブルの真ん中に置かれる子豚の丸焼き

 運んできたのは少し年かさの縮れた髪を上で団子にした恰幅のいい女性だ


「よし。アンナ。お前も座れ。食べるぞ」


「はいはい。清十郎さんお待たせしてごめんなさいね」


「いやいや。アンナ殿、気にされるな」


 清十郎は早く食べたいのを我慢しながらもにこやかに答える

 その時、腹から一際大きなぐうーっと音が鳴る


「わはは!清十郎の腹の機嫌が悪くなる前に食べるか」


 バングリ-は目の前に置かれた木製の大ジョッキを傾けると一気に飲み乾す


「カーッ!うめえ!ほら清十郎も食べろよ!」


 美味そうにエールを味わうバングリーを横目に清十郎は目の前の料理を見る

 ボウルに入れられた新鮮なサラダ、マッシュポテトや豆のスープ等が並ぶ


 手元にはジョッキが置かれているが中身は酒ではなく果実水だ

 バングリーがエールでもいいだろうと言ったらアンナが子供に飲ませるなんて何を考えているんだいと叱られていた。清十郎的には飲んでみたいが周りは許してくれないらしい


 清十郎は早速とばかりに野菜から手を付ける。ボウルから移し野菜を口に運ぶとシャキシャキとした新鮮な野菜の食感と甘味の強いが酸味が若干あるソースの味が口の中に広がる。時折、噛むと燻製した肉の感触がするから野菜といえど飽きさせない


 野菜をひとしきり食べ満足すると次はマッシュポテトに手と付ける。口に入れて噛んでみるとつぶされて溶ける様なイメージをしていたがしっかりとした食感に塩と胡椒による味つけがなされており後から酸味が感じられる食べ応えのある一品となっていた


「いやいや、アンナ殿の料理はうまいのう」


「そうかい?そういってもらえると嬉しいよ」


 清十郎が素直に感想を言ったつもりがアンナにはお世辞と取られたようだ


「おう。かみさんの料理はいつ食べてもエールとあうぜ」


 がははと笑いながらバングリーは2杯目になるエールを流し込む


「しかしお主にも嫁さんがおったんだなぁ」


「どういう意味だ」


 しみじみとバングリーを見つめるとジト目で返された


「ははは。この人は今では威張り散らしてるみたいだけど昔は親方に怒られては泣いていてねぇ」


「お、おい。その話はいいだろ・・・」


「あんまり可哀そうだからほっとけなくなっちまって一緒になってあげたんだよ」


 うろたえるバングリーにアンナは豪快に笑う


「ほーう。バングリーにもそんな過去があったのか」


「よりにもよってこいつの前で言わんでもよかろうに・・・」


 にやにやとする清十郎にバングリーはアンナにジト目を向ける


「ははは。昔のことじゃないか。今では冒険者としても鍛冶師としても大成したし、すべてはあたしのおかげだね」


 アンナは笑いながらエールを一気に飲み干す


「はぁ。昔はもっと可愛げのあるやつじゃったんだがな。清十郎も気をつけろよ。女ってのは家庭に入ると強くなっていつの間にか尻に敷かれちまうからな」


 その様子を見ながらアンガスは溜息をこぼす


「なんだい。今でも可愛い嫁さんじゃないか

 ささ、清十郎さん、料理が覚めちまうからどんどん食べとくれよ。男はしっかり食べないとダメだからね」


 アンガスにアンナはしっかりと言い返すと温かくそのやり取りを見守っていた清十郎に料理を勧める


「うむ。いただいておるぞ。この豆のスープもまた面白いな。豆を煮つぶしてそこに味付けを施したのか。懐かしい味がするな」


「ん?それか?そいつは小豆のスープだ。別段ここらでも取れるし珍しいもんじゃないが・・・」


「なに?小豆じゃと?道理で懐かしいはずじゃ・・・」


 清十郎はスープの色が小豆に似ていたからまさかと思ったがその通りだとは思わなかった


「ほう。そんなにうれしいか?」


「ああ。故郷では米というものに混ぜて炊いて食べるんじゃがな」


「ふむ。コメとやらは知らんな」


「そうか。米はないか・・・」


 寂しさをおぼえたものの豆のスープに舌鼓を打ち最後に豚の丸焼きを食べた瞬間、清十郎の寂しさはどこかへ追いやられた

 時間をかけてしっかりと焼き上げた子豚は表面がパリッとしており肉にナイフを通すと刃をあてた瞬間から沈み込む柔らかさで切った端から肉汁があふれ出て来る


 フォークで刺して口に運び噛んでみればパリッとした皮の食感の後に肉本来の噛み応えを残しながらも上品にさらりと崩れ甘くしっとりとした肉の旨味が口の中に広がる

 噛めば噛むほどに肉に合わせた甘辛いソースが肉の味と絡み合い清十郎の口の中をいじめぬく


「はぁー。これはたまらぬ」


 清十郎は食べ始めるとその手が止まらず気づくと子豚はほとんどなくなってしまった


「ふふ。気に入ってもらえてよかったよ」


 アンナがエールを飲みながら嬉しそうに笑う


「かみさんのとっておきだからな。これでまずいと言おうものなら金槌で根性を叩き直してやるわ!」


 バングリーはそういいながらも嬉しそうにエールを呷る


「こんなにうまい料理を食べてまずいというわけがなかろう。いやはや、これは剣を打った甲斐があったか」


 清十郎は笑いながら先ほどのことを思い出す


 先ほど剣を打ち終わった時にはすでに外は夕闇に包まれており上層区へ行く為に通らなければならない橋が上がってしまい通れない時間となっていた


 どうやらイリアとミーニャは様子を一回見に来たらしいが真剣に剣と向き合う清十郎を見てバングリーに後の事を頼んで帰っていったらしく打ち終わった後、バングリーの家で泊まることになったのだ

 バングリーの家は中層区の一画にあるレンガ造りの一軒屋で急遽、泊まることになった清十郎に慌ててアンナが子豚を買いに走ったのだ


 申し訳なさでアンナに謝辞を述べると気にするなと言われた。弟子を呼んで宴を開いたりはしょっちゅうで急の来客はいつものことらしい


「まぁ。今晩はゆっくりしていけ。あとでお前のさっきの話も聞きたいからな」


「うん?」


「お前なぁ・・・。声が聞こえたとか言っていただろ?

 あれがどうにも引っ掛かってな。あとでゆっくり聞かせてもらうぞ」


「ああ。儂もあれは気になっておるから一緒に考えてくれ」


「がはは!まかせろ」


バングリーは豪快に笑うとさらにもう一杯エールを一気に飲み干した


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