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第50話 清十郎とバングリー

いつも読んでいただきありがとうございます!

 ベッドで薄茶の髪の少女がすーすーと寝息を立てながら静かに眠っている

 その顔色はまだ白く回復するには当分かかるだろう。少女の顔色を見てから青い髪の女性は傍を離れる


「容態はいかがですか?ポーラ殿」


 部屋の隅でその様子をみまもっていた白髪を油を使いクラシックフェードに固めた男がカイゼル髭を触りながら訪ねる


「今すぐの命の危険はないわよ」


「そうですか。それはよかった」


 ポーラの答えにロムアは何でもないように答える


「それで何かわかりましたかな?」


 ロムアの問いにポーラが難しい顔をする


「蛇の呪印といえばわかるかしら」


 一瞬、ロムアの髭を触る手が止まる


「蛇ですか・・・」


「ええ、しかもあの子、強く洗脳されていたわ」


「厄介ですな。それで、目的はわかりましたか?」


「どうやら清十郎さんの命を狙っていたみたいね

 肝心の狙った相手については喋る前に蛇の呪印が発動してしまって聞けなかったわ」


「そうですか。さてどうしますか・・・」


 ロムアはそこで髭を撫でながら少女を鋭く見つめる


「私としてはこの子がどうなろうとかまわないけれど清十郎さんが助けることを望むなら死なせたくないわね」


 ポーラが頬に手を当てて、ほうっと溜息を吐く


「とりあえずウェイン様に指示を仰ぎましょう

 蛇の呪印はあなたに解呪できますか?」


「難しいわね。発動してしまったのを一時的に抑えることはできるけど完全な解呪となると無理ね」


「ふむ」


 ロムアは解呪できないとなると清十郎には申し訳ないが死んでもらうしかないと考える

 ウェインより敵に対して現場での生殺与奪の権限をロムアは与えられている。ハーミットの害になるなら殺すしかない

 そこまで考えたところで自分が覗かれている感覚を覚えポーラにロムアは顔を向ける

 ポーラが細い目を薄く開き自分を見ていた


「駄目よ。まだ手がないわけじゃないわ」


「私の心を勝手に見るのはやめていただきたいですな」


 ロムアは表情を変えずに窘める


「ふふ。ごめんなさいね」


 ポーラはおっとりとした顔でにこやかに微笑みながら謝る

 ロムアは髭を触りながら嘆息するとポーラに問う


「今後、気を付けていただければ構いません。それでその手というのは?」


「殺します」


「殺す?」


 ロムアは眉が眉間により怪訝な顔をする。ついさっき自分は殺すことを考えていた。なのに手を聞けば殺すという。どういうことなのかと聞く前にポーラが答えていく


「ふふ。一時的にね。呪印が死んだと認識すれば解けるわ」


「つまりは仮死状態にすると?」


「いえ、本当に殺すのよ。心臓を刺して」


 訳が分からないとロムアが難しい顔をしてポーラを見る。髭を触る手は止まっている


「仮死では呪印は解けないわ。過去に試したもの。心臓にナイフを刺して体の活動が止まった後、呪印は消えるの」


「ですが、それでは助けられないのでは?」


「普通ならね。でも清十郎さんがいるわ」


 そこでロムアは段々と話が見えてきた。つまりは清十郎の力を使って助けようという話だ


「ただ、清十郎さんの力というより清丸ちゃんの力かしら」


 話がまた見えなくったロムアの難しい顔とは反対にポーラは頬に手をあててにこやかに微笑んでいた



 いくつもの武器が飾られた部屋の中、バングリーはソファーにどっしりと座り普段でもしっかりと伸ばしつながった口髭と顎髭、つるりとした頭、強面の三拍子がそろい一見すれば子供が逃げ出すであろう顔をさらに眉間に皺を寄せることで子供なら必ず泣くこと間違いなしの必殺の強面を作り上げ目の前の男を見ている


 かたや清十郎はしょんぼりとうなだれほっとけばいまにも死んでしまいそうに萎えている

 その両脇ではイリアとミーニャが座っているがどちらも困り顔だ


 清十郎がここまで萎えてる理由は先ほどの一件にある

 イリアを貶められ怒りで我を忘れ自らの力でイリアに恐い思いを味合わせてしまったことだ


「おい、清十郎そろそろしっかりせんか!」


 清十郎はこの部屋に入ってから結構な間この状態なのだ


 「そうですよ。清十郎様、私は気にしておりませんから」


 イリアが横から清十郎を優しく語り掛けるように宥めるがあまり効果がない


 「ええんじゃ・・・

 ほっといてくだされ。儂はあなたに怖い思いをさせてしまいました

 こんな男なぞ、呆れ果てましたでしょう。バングリー、剣を貸してくれ」


 「はっ?剣?何に使う気じゃ」


 「この腹掻っ捌いて死んで詫びる」


 「ばかたれ!そんな無駄なことに儂の剣を汚すな!死ぬなら勝手にどっか行って死ね!この馬鹿野郎が!」


 バングリーの怒声が部屋中に響く。ミーニャは耳を抑え目をつぶっている

 先ほどから何回も続くこのやり取りにいい加減どうにかしなければと誰しもが思う中、イリアが突然、清十郎の頭を横から胸に抱きしめる


「な、なにを!?」


 突然の事で清十郎は吃驚して固まる


「もう!清十郎様は死ぬ死ぬと何回、仰られるのですか!その度に私の心臓は締め付けられるように苦しくなるのです!聞こえますか?」


 そういわれて清十郎はイリアの胸の鼓動を目を閉じて聞く

 トクトクとなる鼓動が早い気がする。鼓動を静かに聞いていると徐々に清十郎は落ち着いてくる


「わかりました。儂は知らず知らずのうちにイリア殿をまた傷つけていたのじゃな」


「わかればいいのです。私は気にしておりませんからもう困らせないでくださいね」


 優しく清十郎の頭を胸に抱きながらなでるイリア。それを甘んじて気持ちよさそうに受ける清十郎


 なんだこれ?


 ミーニャとバングリーの心が一致した瞬間だった


「ウォッホン!」


 大きなわざとらしい咳払いで清十郎とイリアは2人の世界から戻ると慌てて姿勢を正す


「仲がいいことは大変結構じゃ!だが、ふたりの時にな!」


 バングリーが茶化すと清十郎とイリアは顔を赤くしミーニャは、はぁーっと溜息を吐く


「さて、お前から話があるのは分かっているがこちらからも聞きたいことが一つある」


「なんじゃ?」


 バングリーはまじめな顔になると清十郎に問う


「お前、さっきヒールを使っていたな。どうやって使えるようになった?」


「うむ。ポーラ殿から教えてもらったぞ?」


「うーむ。やっぱりあの噂は本当だったか・・・」


バングリーは太い腕を組むと唸る


「何か問題でもあるのか?」


「あぁ。ポーラ殿の魔鉱石病が治ったと噂が回っていてな。マリカ様のお慈悲ですとポーラ殿は仰っておられるようだが・・・」


 そこでバングリーは清十郎を見る


「ポーラ殿の魔鉱石病を治したのはお前だろ?」


 清十郎もバングリーに隠し事をするつもりはないので素直にうなずく


「やっぱりお前が関わっていたか。多分、ポーラ殿のことだからすでに手は打っていると思うが後々、お前にも教会からの使いが尋ねてくると思うからポーラ殿とよく打ち合わせをしておけ」


「ふむ。ポーラ殿はそのまま好きなようになさいと言っていたがな。一応、気を付けておく」


「ああ、そうしておけ」


 そこでバングリーは自分の話はここまでと言わんばかりにニヤリと笑う


「さて今度はお前の番だ。どういう内容の話だ?」


「お、おぉ。そうであった。実はのう今度、儂の工房を作ってもらえることになってな」


「なに!?」


「「え!?」」


 驚くバングリーに話を聞いていませんよとばかりのイリアとミーニャ


「どういうことですか!屋敷を出ていくのですか!」


 先ほどの優し気な表情は一転、目を吊り上げ清十郎の胸元を掴み揺らしながら必死になるイリア


「お、落ち着くのじゃ!や、屋敷はでていかぬ!」


「えっ?どういうことですか?」


 イリアが落ち着いたところで清十郎は朝方の褒美の件を話す


「なるほどのう、お主の屋敷に工房か・・・」


 バングリーが思案顔で答える

 イリアとミーニャは清十郎が屋敷を出て行かないことが分かって落ち着きを取り戻しほっとしている


「そこでじゃ、この世界の鍛冶を見てみたくてな。お主の元を尋ねたわけよ」


「ふむ。それは構わんぞ!もともとお前の鍛冶も見てみたかったしな」


「よし、なら話は決まりじゃな。バングリーよろしく頼む」


「おう!こちらこそお前の技、見せてくれよな」


 2人は固く握手をすると呵々と笑いあうのだった


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