第47話 レギウスと清十郎
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凄まじい勢いで燃える大剣が振り下ろされ紙一重で避ければそのまま地面にたたきつけられるはずの大剣が鋭さそのままに切り返してくる
それを予想し一呼吸早く体を両断される寸前で後ろに下がって避けるとその動きに合わせて大剣を突き出すように飛び込んでくる。厄介なと思い突きの軌道を予測しそこで清丸を抜き放ち大剣を下からはじく
「ははは！ようやくそいつを抜いたな！」
笑いながら大剣を自在に振るうレギウス
「ついに抜かされてしもうたな！ならば遠慮はすまい」
答えるのは輝く刀、清丸を右手に持つ清十郎だ
（清丸よ。この相手の刀と命を奪いたくない。切れ味を落とすことはできるか？）
清十郎は自らの刀に問いかけると出来ると返事が返ってくる
清十郎はその返事を聞き自然体に構えると半眼になる。その瞬間、周りの空気が重さを増す
「ふっ！面白い！俺に威圧をかけるか！」
レギウスはそれに対抗するように殺気を膨れ上がらせる
静かな殺気と今にも襲い掛からんとする殺気がぶつかり合う
裂帛の気合とともにレギウスが振り下ろした大剣を清十郎は勢いが乗る前にはじく。はじかれたことに驚くレギウスの眼前に清十郎の刀が迫る
レギウスはその大柄な体に似合わず俊敏にかいくぐると清十郎の背を蹴り間合いを取るが蹴った感触がない。まるで空を切ったように軽い
再び間合いを取り同じ姿勢を取る清十郎。今度こそレギウスは仕留めようと大剣を握る手に力が入る
「はいはい！終わり！もう終わり！これ以上だと殺し合いだよ！」
緑の髪の長身の男が2人の中間地点に立ち両手を広げてお互いに分かるように大声をあげる
その瞬間ぶつかり合っていた二人の殺気が霧散する
「ちっ！ウェイン良いところを邪魔するな」
「何を言ってるんだ！レギウス、ここは戦場じゃない！あれ以上はお互い命の奪い合いになるからダメだ」
2人の殺気に充てられて大量の汗をかきながら努めて冷静に話すウェイン。内心はドラゴンの前に飛び込まされたような緊張感で張りつめている
「ふー。やれやれ。お主も好きよなレギウス」
「いや！君もだから！レギウスを殺す気だったでしょ」
「うむ。仕合いとは己の命を秤にかけるものじゃよ」
「たしかにそうだ清十郎の言う通りだ。男なら命を賭けて戦うものだ」
「「わははは」」
「はあ～。もういや・・・」
レギウスと清十郎、あまりに似ても似つかぬ外見に反して息ぴったりな気の合いように
げっそりとしたウェインが溜息を吐いた
事の起こりはついさっきのこと。話も終わりさあ帰ろうかという段でレギウスが清十郎に戦いを挑んだ
のだ。お前の力を見てみたい。その一言で始まった戦いだ
そうなるだろうなとウェインは思っていたので嘆息しながら成り行きを見守っていたが最初は軽い手合わせがだんだんと白熱しついには殺し合いに発展し始めたので体を張って止めたのだ
汗を拭きながらレギウスは清十郎に尋ねる
「清十郎、最後のはなんだ？俺を吹き飛ばすとはよほどの剣術だな」
「あれは、夢想の型と言って儂の待ちの型よ。間合いに入るものすべてを斬り飛ばす技よ」
「ほぅ。なるほどな。カウンター専用の技か」
「カウンター？」
「ああ。返しといえばわかるか」
「なるほど。たぶんそれじゃな。お主も最後のは凄まじかったな
まるで獰猛な獣じゃぞ。膂力と殺気が尋常じゃない分、質がわるいぞ」
「まぁ。俺のは戦場でたたきあげた剣術だからな。我流よ。我流」
「それにあの火を纏う剣。あれはなんじゃ？」
「あれは昔、手に入れた魔法剣の類だ。それよりもお前の剣も聞いていた通り変わってるな」
「うむ。よき相棒よ」
「しかし、こんなに楽しい仕合いは久しぶりじゃ」
「それはこちらのセリフよ。お前とはここまで気が合うとはな」
「ちがいない」
「「わはは」」
「はぁ・・・。2人がここまで息が合うなんてね。」
ウェインが嘆息する中、レギウスが清十郎をまじめな顔で見ていることに気づく
「おい、清十郎よ」
「うむ？なんじゃ？そのようにまじめくさった顔をして」
「お前、俺の下につかんか」
「ちょっとレギウス冗談はやめてくれるかい？」
「いや、俺はいたって真面目だ。俺の息子を投げ飛ばしたと聞いた時にはどんな奴かと思ったが期待以上だ。どうだ？」
レギウスの射抜くような鋭い目が清十郎をまっすぐ見る
「・・・レギウスよ。それは無理じゃ。すまぬ」
「なぜだ？お前ほどの男がなぜにそこまで頑なに嫌がる？」
「儂はどこまでいっても根っからの職人だからじゃよ。物を作るのに執着しておるのよ」
「だが、剣を交えてお前の事がよく分かったが戦うことも好きだろう？」
解せんとばかりのレギウスに清十郎は嘆息する
「マリカ様にも言われたのう・・・。だが無理なものは無理じゃ」
「ふむ。なにか余程の理由があるか。だがここアボルグは近い将来、戦乱に巻き込まれるかもしれんぞ？」
「ちょっとレギウス、その話は・・・」
ウェインが制しようとするのをレギウスは清十郎をみながら手で制する
「お前という存在が世界に知られるのも時間の問題だ。ならば立場を作らねばお前の大切なものがすべて奪われるぞ」
「・・・」
レギウスの言葉に苦虫を噛みつぶしたような顔をして清十郎は目をつぶる
「ふむ。まぁ、言い方を変えよう。俺はお前を可能な限り守る。お前は俺を可能な限りで助けるではどうだ？」
清十郎は目を開けるとレギウスを見る
「まあ、お主のことも気に入ったしそれならば構うまい」
「よし。言質はとったぞ？
今はそれで納得しといてやる。だが俺はあきらめんぞ？」
レギウスがニヤリとその口角をあげるのを見て清十郎は苦笑する
「素直に友達になろうっていえばいいのに・・・」
そんな二人を傍からみていたウェインは呆れたようにやれやれと首を振るのであった
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