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第46話 領主との話し合い

いつも読んでいただきありがとうございます

 清十郎が着替えを終えて食堂に向かうと既に清十郎以外、全員、席に座っていた。みんなに挨拶をし清十郎が席に座ったのを見計らってウェインが声をかけてくる


「清十郎、今日はレギウスから呼ばれてるからこの後一緒にいくよ」


「ふむ・・・」


 はて?と清十郎はレギウスは誰だったかと思っているとウェインが訝し気に見てくる


「君、忘れてるでしょ。領主だよ。この間、説明したじゃないか、まったく・・・」


「おお、そうじゃった。領主殿じゃったな」


「朝食が終えたら一緒に行こう」


 朝食後、身支度を整え清丸を手に携え玄関に向かうとすでにウェインが待っていた


「お、来たね。じゃあ早速、行こうか」


 そういうとウェインは屋敷の玄関前にとめてある馬車に乗り込む


(ふむ。今日はロムア殿が御者か)

 

 清十郎も客車の扉の前で控えるロムアに挨拶を交わし馬車に乗り込むと扉が閉められ少しすると馬のいななきと共に馬車が動き出す

 いつもは街にいく方向とは逆の方向に馬車は進んでいく。上り坂をしばらく上っていくと街を一望できる場所に立つ豪華な一軒の屋敷についた


 ロムアが扉を開けてウェインが降り立つと清十郎も続く


「ここが領主の館だよ」


「やけに金がかかっていそうな建物じゃな」


「まあ、アボルグを含めて北の領土の中心都市だからね。いろいろな客がくるから見映えだけでもよくしておかないとダメなのさ」


 ウェインが苦笑いしながら説明したところで張りのある野太い声が聞こえてきた


「見映えだけとは結構な言い草だな」


 声がした方をみると鍛え抜かれた立派な体をした男が立っていた

 赤髪を逆立て顔を覆うように生える髭と目つきに鋭さが残る左の額から右の唇にかけて切り裂かれた古

い傷跡が特徴的な男だ


「やぁ、領主殿」


 ウェインが気軽に挨拶すると男の髪と同じように逆立てた眉が寄る


「どうせ周りにはこの屋敷にいる者だけだ。レギウスでいい」


 男は不機嫌そうに言い切るとついて来いと言わんばかりに背をむけた


「ふむ。鍛え抜かれた身体をしていたな。生粋の戦人の雰囲気を纏っておった」


「あれがレギウスさ。さ、清十郎いくよ」


 ウェインは清十郎の独り言に答えると屋敷の中に入るように促す


 レギウスについて歩いていくと途中、廊下で見慣れた大柄な赤毛の少年が母親と思しき意匠を凝らした

ドレスを纏い侍女を引き連れた目鼻立ちのはっきりとした女性の後ろについてすれ違った

 2人はこちらを見ると苦々し気に顔をゆがめるとレギウスに道を譲り端によけた

 なんともいえぬ気持ちで清十郎はすれ違うとレギウスの後を追った


 やがて豪華な作りの部屋にレギウスは入っていくとソファーにどかりと腰をかけた


 「かけろ」


 言葉短めに言うとウェインが対面に座るのを見て清十郎もその横に座る。ロムアはウェインの後ろに立ち控える

 

 座ったところで目の前のテーブルに侍女が紅茶を淹れたカップを置いていく。紅茶に口をつけるとレギウスが清十郎に話しかける


「たしか清十郎で良かったな?俺はこの街の領主レギウスだ」


「うむ。儂は清十郎じゃ。領主殿よろしく頼む」


 言葉短めに挨拶するとレギウスが目の前で手を振る


「やめろ、公務の時以外レギウスでいい」


 煩わしそうにするレギウスに清十郎は驚いた。この一週間でイリアやミーニャから教わった貴族の在り方と違うからだ


「ふふ。清十郎も驚いたみたいだね。レギウスはこういう奴だよ」


「ふん。お前はちっとは敬え。ウェイン」


 軽口をたたきあう二人に昔からの絆を感じる


「さて、清十郎、俺は無駄話は好かん。だから手短に言う。今回の誘拐未遂の件お手柄だった。おかげで王都の宮廷雀どもはもちろん王族をも驚かすことが出来た。これでアボルグの発言権が増す。

 よって、お前に金貨1000枚の懸賞金とは別に願いを一つ与えることとする。何か叶えてほしいことはあるか?」


 清十郎はウェインをちらりとみる。ウェインはにこやかに笑うと軽くうなずいた


「ならば、鍛冶ができる施設をもらいたい」


「鍛冶だと?お前は剣士だと思っていたからてっきり爵位やら女やらが欲しいと言い出しそうだったんだが鍛冶とはな」


 解せんとばかりに首を捻るレギウスにウェインが苦笑いしながら答える


「清十郎はそういう奴だよ」


「まあ、望みは望みだからな。さてどこに施設をやるか・・・」


「それだけど、彼はうちの離れでほぼ住んでいるような状態なんだ。今は細工物を作ってるみたいだけど、そこを改造して彼専用の工房にしてはどうかと思うんだ」


「だが、それだと商売にならんではないか」


 分からんといった具合でレギウスが答える


「彼はね、金に興味がないんだよ。ただ作りたいだけの職人だよ」


「職人だと!?」


 レギウスが声を大にして叫ぶ


「うん。そう。前に報告書にあげたじゃないか。彼は自分の刀の強さを試すだけに戦いに明け暮れる男だよ?戦うことだけを望んでいる君と一緒じゃないか。政務をすべて僕におしつけてさ」


「わはは!そうか、俺と一緒か!たしかにそうだ」


そこでレギウスは膝を叩くと笑いだす


「よし!分かった。工房分の金を出してやるからお前の屋敷の離れをこいつの工房にしてやれ」


「清十郎、こういう話になったけど構わないかな?」


「儂はそれで構わん。作れればよい」


「これで、話はまとまった。作ったものはどうする気だ?」


 レギウスが話はこれで終わりだと言いかけて気になったことを尋ねる


「これと言ってないな。売りに出すなりはすべて人任せじゃ」


「面白いな。お前」


レギウスはそういうとニヤリと笑う


「そうそう。これも話しておかねばならん。お前が戦ったオーガ達の情報を元に騎兵隊300を組んで送り込んで調査させたが特段変わりがなかったな。ただ、死んだ奴と思われる骨が散乱していたしお前らの証言通りの交戦後もあったから裏付けはすんだがな」


 レギウスはそこで話を区切ると紅茶を一気に飲み干し息を吐いた


「さて、面白い話は終わったが次はつまらん話をせねばならん」


「それは僕の知ってる話かい?」


「いや、昨日届いたばかりでな」


と部屋の隅に立っていた侍女に手で出てけと合図をし人払いを済ませる


「ロムアはいいのかい?」


「そいつはいい。むしろそいつに聞いておいてもらわんと困る」


 レギウスは一礼して出ていく侍女を見届けてから机の引き出しから封筒を取り出すとソファーに再びドカリとすわり封筒をテーブルの上に投げやった


「これは・・・王家か!?」


 ウェインがやたら装飾された封筒を見てからその裏の封蝋確認すると声に出す


「ウェイン。静かにしろ」


 レギウスに窘められウェインは頷く


「お前も知ってるだろうがこの屋敷の中は宰相殿の手の者で埋め尽くされている。ここの情報はすべて筒抜けだ。俺のことを完全には信頼していないらしい」


「あぁ。知ってる。だから君はここにいるしね」


 清十郎は二人の会話に完全に置いてけぼりだ。それに気づいたウェインが清十郎に説明する


「彼の奥さんは宰相閣下の娘さんなんだよ。そしてこの国の王妃は彼女の姉」


「なんと・・・」


「俺は好かんかったがな。昔、派手に暴れたんで手元に置いておきたくなったのさ」


 レギウスは自嘲気味に笑う


「ま、昔の話だ。ウェイン読んでみろ」


 促されてウェインは読んでいく。段々と眉間に皺が寄っていくのが分かる


「なんとも・・・もう、王家が掴んだのか?」


「わからん。そこでお前に聞きたい。ここ最近、街に入り込むネズミはどうだ?」


「ロムア」


 レギウスの問いにウェインはロムアに声をかける


「はっ。日毎に多くなっておりますな。昨晩だけで10匹は始末しました。1匹は逃してしまいましたが」


「ふむ。所属は・・・わからんか。でも君が逃がすなんて珍しいね」


「面目次第もございません。深く腹を裂いたので生きてはいないと思いますが・・・。捕えようとしても逃げきれないとわかると自ら死を選ぶ輩でして。亡骸を調べましたが身元が分かるようなものは一切もっておりませんでした」


「ロムア、報告ありがとう。」


 ウェインがロムアに礼を言うとレギウスがふーっと息を吐く


「なぁ、何が問題なんじゃ?」


 一人ついて行けない清十郎が二人の難しそうな顔を見て尋ねる


「王家のそれも第1王女殿下がくるってさ」


 ウェインのなんとも言えない答えが返ってきた


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