第30話 狂気
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今回は短めなので早めにUPしました
ただ、今回はちょっぴりグロが入ります。苦手な方は気を付けてください。
窓のない石造りの部屋の中、蝋燭の灯に照らされて3人の人影が石壁に映し出され時折どこからか吹く隙間風が怪しく人影を揺らす
黒のフード付きマントを纏った男女がすらりと伸びた長身の人物の前で膝をつき頭をさげていた。ダークグレーの髪をオールバックにした男と頭の上でライトブラウンの髪を二つに分け結んでいる女だ
本来は上でツインテールを作る髪が今は床に垂れている。男女は下を向いたままでその表情は伺い知れない
「ゲートがいないな。どうした」
「ゲ、ゲートは任務中に殺されました」
「ははは・・・任務は失敗し奴も殺されたか。どのように殺されたのだ?」
ひとしきり声高に笑うと二人の目の前に背を向けて立っていた人物は振り返る
身体は長身だが無駄な肉をつけず華奢に見えるようで引き締まりその身体に見合うような豪華な意匠で作られた服を身に纏っていた
肩口まで伸ばしたアイスブル―の髪が振り返った時にさらりと舞い彫刻を思わせるような美しい整った顔を蝋燭の灯が映し出す。その顔は柔らかく微笑んでいた
だが目の前で頭を下げている二人は目線だけで微笑みを確認すると背筋に伝う嫌な汗を感じる
二人は知っている。この人物がこの表情をしていて安心した瞬間、軽口をたたいて命を終わらせた人間が何人もいることを
柔らかそうな顔つきで笑っているが纏う雰囲気は鋭くふざけた答えを言えばすぐにその命は消えるだろう
「黒髪の男に一撃のもとに斬られ殺されました」
男は床に垂れる汗を気にせず同じ姿勢のまま答える
「ほう・・・奴は闇魔法を使っていたのだろう?それなのに一撃で殺されたのはどうしてだ?」
「わ、わかりません。私も上からみておりましたがゲートは確かに闇魔法を使い攻撃を仕掛けておりました。相手の男はゲートが話しかけるたびにわずかにグラついておりましたから間違いありません。私がわかることは以上でございます」
「そうか、ならグレイに聞きたいことはもうない。下がれ」
グレイと呼ばれたオールバックの男は言われて静かに立ち上がる
顔には小皺があるががっしりとした鍛え抜かれた体をした威厳のある壮年の男だ。普段ならきっと相応の身分にあると言われても違和感はないだろう
だが顔は蒼白で汗を垂れ流しオールバックが崩れている今、くたびれた中年にしか見えない。今は目の前の男の気が変らないうちに部屋を去りたい気持ちでいっぱいだ
「し、失礼いたします」
部屋の去り際、扉を開けようとドアノブに手をかけたところで後ろから声がかけられる
「まて」
ドアノブを握った掌が嫌な汗をかいてくる
「グレイ、今回の計画は一旦中止する。下がって次の連絡を待て」
「はっ!了解いたしました」
グレイは振り返ると腰を90度に曲げて最敬礼し顔をあげた瞬間、左の視界が見えなくなる。一瞬何がわからなかったが左目に熱した鉄棒をねじ込まれたような激痛が襲ってくる
「ぐぅ!」
思わず唸るとグレイは両手で左目を押さえその場に膝をつく。押さえた手から血が零れ落ち床に染みを作っていく。だがここで倒れる様な無様な真似は許されない
「次はない、下がれ」
「はっ!失礼します!」
グレイは左目からくる激痛に気を失いそうになりながらも両手をそろえて綺麗にお辞儀をし部屋を退室していった
「ティリ」
ティリと呼ばれたツインテールの女が肩を震わせる
「・・・はっ」
「君ならそいつをやれるかい?」
その問答に断る答えはない
「この命を引き換えにしても必ず・・・」
ティリがそう答えると目の前の男は先ほどまでの鋭い雰囲気を消しティリの傍まで寄るとその顔に手を添えて優しくその顔をあげさせる。大きく潤んだブラウンの瞳が男を見る
だがその瞳は恋する男に向けるようなものではなく恐怖の色に染まり本来なら愛らしく年相応の可愛らしい顔が今はひきつっていた
少女がカチカチと歯を鳴らすことを気に掛けることなく男は優しくその頬をなでる
「ティリ・・・そのような悲しいことは言わないでおくれ」
水が流れるような優しい声音で男が声をかける
「かわいい私の妹ティリ・・・
君ならやれる。その男を私のために殺しておくれ」
男はティリに恋人に囁くように優しく語ると小さな手を握り優しく立ち上がらせる
そのままティリの手を優しく包み込み握り拳を作らせると軽くなだめるようにやさしくたたいて微笑むとティリの頬をなでてから流れるような動作で部屋を出て行った
部屋に残されたティリは腰の力がぬけ前に倒れこむように四つ這いになるが握ったままの拳が床に着いた時、拳の中の違和感に気づくと掌を開いた
「ひっ・・・」
ティリは小さく悲鳴をあげた。そこには持ち主を失った虚ろな眼球が真っ赤な血で染まったティリの顔を見つめていた
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