番外編 れみ☆さくのしょーと劇場ぱーと1
暗雲立ち込める空の下、廃墟と化した〈シンジュク・シティー〉をセーラー服を纏ったジョシコーセ・スタイルのレミリア・スカーレットと十六夜咲夜が必死に形相で疾走している。
「アイェェエエエエッ!!? いきなりどういう状況ぉぉおおおおおおおおおおおおおおおっっっ!!!!?」
200X年、巨大企業レイン・カッパ社の研究所からバイオ・ハザードした《オタラント・ウィルス》がまたたくまに蔓延し、人間達は次々とオタデッドと化していった。
僅かに生き残った人類にはオタデッドに対抗する術はなく、彼らの恐怖に怯えながら隠れ、逃亡する日々を送るしかなかったのである……。
「……って! 設定メチャクチャすぎるわぁっ!!! ツッコミどころ多すぎるだろぉぉぉおおおおおおおおおおおおっっっ!!!!!!」
「この状況下でも的確なツッコミ……流石です、お嬢様」
「流石です、お兄様みたいな事言ってる場合くぁぁあああああああああああああああああっっっ!!!!!」
明らかに生存者はいないであろう廃墟ビルが立ち並ぶ中を漫才めいた会話をしながら疾走する少女らの背後からは、彼女らを獲物とし襲おうと何体ものオタデッドが追いかけてきていた。
「ヨ~ジョ~ヨゥジョ~~~……!!」
「ハァ~ハァ~~ヨウジヨォォオオオオオオオ!」
「スワクヤスワンハウォレノヨメ~~~~!!」
およそ人のものは思えぬ叫び声を上げるオタデッド達に、レミリアは戦慄を覚えて身震いした。
しかし、それはこの世界ではもう日常の事だ。
幸運にも生き残った人間には、しかし恐怖と絶望に怯えながら生きるという不幸しかないという現実に、レミリアは涙を浮かべて叫んだ。
「もう嫌ぁぁぁああっ! 何で普通の女子高生の私がこんな目に会わなきゃいけないのぉおおおおおおおっ!!!!?」
「……普通の?……」
「疑問系!? ナンデっ!!!?」
「……と言いますか、お嬢様の容姿では誰が見ても小学生かと……高校生は無理があるのでは?」
「書き手に言えやぁぁあああああっ!!! てか、余裕あんな、おいっ!!」
そうして何キロ、何十キロの距離を走ったのだろう……が、にも関わらず二人の少女はたいして息を切らす事もなくペースも落ちる様子も無い。
それは実際ウィルスに感染したもののそれを制御して超人的な能力を得たかのようであった。
「単に描写が面倒でテキトーやってるだけだろぉぉおおおおおおおおおっっっ!!!!!」
「……あ! そういえば、お嬢様……」
「あん? 何よ、咲夜?」
「私……逃げるときに家のガスの元栓を閉めたでしょうか?」
「知るかぁぁあああああっ!!……てか、そんな事を言ってる状況かぁああああああああああああっっっ!!!!!?」
「ですが、避難の際にはガスの元栓はしっかり……」
「地震じゃないわぁぁああああああああああっっっ!!!!!!」
「……仕方ありません、家に一回帰りましょう……」
「どうやってっ!!!?」
少女らが逃避行漫才?をやっている間にオタデッドは更にその数を増やしていた、この状況で挟み撃ちでもされたら実際オワタである。
とても家に帰宅できる可能性があるとはレミリアには思えない。
「止むを得ません、奥の手を使います!」
そう言っておもむろにセーラー服のスカートに手を突っ込む、そして中から取り出したのは……。
「スカートの中に《火炎放射器》っ!? ナンデっ!!!?」
疾走しながら驚愕に目を開くレミリアの前で足を踏ん張り急ブレーキをかけつつ身体の向きを反転させる咲夜、女子高生?が持つには重過ぎるであろう《火炎放射器》を両手でしっかりと持ち構える。
「慈悲はない! ハイクを詠め、オタデッド=サンタチっ!!」
そして躊躇なくスイッチを押した咲夜は、レミリアが近くにいすぎたのには気がつかなかった。
「汚物は消毒だぁっ! きゃっは~~~~~~♪」
「お約束でたぁぁあああああああっ!!?……って、あちっ!?」
《火炎放射器》から放出された紅蓮の炎はまさに慈悲もなくオタデッド達を飲み込んで「「「「アイエェェエエエエエエッ!!?」」」と悲鳴を上げる彼らの土気色の身体を焼いて逝く。
だから、当然ハイクなど詠んでいる間もないが、それは実際些細な問題である。
「……ふ~。 これでお家に帰れますね?」
「………………って!! だったら最初からこうしろやぁぁあああああああああああああああっっっ!!!!!!」
荒廃し生きる者も少なくなった世界にレミリアのツッコミの叫びが響く。
こうして、かろうじて?今日を生き残った二人の少女達であったが、彼女らの戦いはこれで終わりではない。
そう、この世界では生き残る為には死ぬまで戦い続けないといけないのだ。
レミリア・スカーレットと十六夜咲夜、二人の少女の生きるための戦いはまだまだ続く………………のかな?
「…………のかな?ってなんだぁぁああああああっっっ!!!!」
ツコッミの叫びと共にレミリア・スカーレットが目を覚ましたのは、見慣れた天蓋付きベッドの上であった。
しばらくキョトンとなっていた彼女は、キョロキョロと周囲をその紅い瞳で見渡してみて「……夢?」と小さく呟く。
そのレミリアの青みがかった銀色の前髪が僅かに焦げていたのには、まだ本人は気がつかないでいた…………
今回はレミリアと咲夜の二人に様々なシチュエーションでショートコント?をやってもらおうというコンセプトの元に書いた番外編となります。
そのためというわけでもないですが、文体を変えてありますが、紅魔のお嬢様とメイドさん物語本編の方は今後もいつも通りの文体でいきます。
そのうちパート2も書くと思います……おそらく、多分……。




