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久々登場、暗黒脇巫女と進撃の巨人軍編

今回はいつにも増して突っ込みどころ満載な話……


 今日も今日とて平和な〈幻想郷〉、吸血鬼ひまじんの少女が住まう真っ赤な屋敷の

〈紅魔館〉では主人であるレミリア・スカーレットは湖を一望できるテラスで優雅なティー・タイム中であった。

 「……で、今日は紅茶に何を入れたのかしら?」

 そう何度も突っ込んでやるものかと自制心を総動員して堪えている素振りも見せずに、優雅な仕草で白いティーカップを手に取り口をつける寸前でふと思い出したような顔になり背後に控えるメイド長の十六夜咲夜に問うと、「ビオ〇ンテの葉を茶葉に混ぜてみましたが?」と至極何でもない事のないように彼女は答えた。

 「……ビオラ〇テ……?……って、あれ? 薔薇と放射能怪獣と人間の遺伝子を混ぜたあれ?」

 つい先日にテレビでやっていた昔の怪獣映画を思い出して言ってみると、咲夜はにっこりと微笑みながら「はい、左様ですお嬢様」と答えた。 レミリアは唖然となって銀髪の両端を編んだメイド長の笑顔を見つめた、数秒間の沈黙がテラスを支配する。

 「……怪獣の破片を紅茶に入れるなってこの前言ったでしょうがぁぁぁあああああああああっっっ!!!!!」

 「破片ではなく葉っぱですが?」

 「同じでしょうが! この超ボケボケメイドぉぉぉおおおおおおおおっっっ!!!!!」

 勢いよく椅子を蹴っ飛ばしなら怒鳴るレミリア、そんな新年になっても健在なボケとツッコミのコンビに、「今年も〈紅魔館〉は平和やなぁ~~~」と咲夜に用があって来た妖精メイドのチャウ・ネーンは安堵する。

 すぐそこまで迫ってきていた恐怖など想像する事もなく…………。



 〈人里〉に住むごく普通の少年の伊栄牙江蓮いえいが えれんが”それ”を見つけて驚きに目を見開いたのは、友人の阿留眠あるみん魅傘みかさと三人で遊んでいた時だった。

 「な……きょ、巨人……!?」

 身長はおよそ十五メートルくらいだろう、不気味な笑い顔を浮かべた顔からするに全員が男の様であり白地に黒い模様を付けた服はスポーツか何かで着るユニフォームの様な物である。

 「こっちに来る!? どうしよう江蓮っ!?」

 「落ち着きなさい阿留眠! とにかく逃げましょう江蓮!」

 巨人はもう〈人里〉のすぐ側まで迫ってきていた、彼らの進撃を阻止するための壁が〈幻想郷〉にあるはずもなく、この三人の子供達だけではなく里の人々は悲鳴を上げながら逃げ惑うしかなかった。

 だが、この〈人里〉の危機を博麗霊夢が見過ごすはずはない、友人の霧雨魔理沙と共にすぐさま駆けつけてきた。

 「……あれは!?」

 必死に走る魅傘が巨人へと向かって飛翔する紅白と白黒の人影を見つけた。

 「……鳥? 飛行機……?」

 阿留眠がその姿を凝視する。

 「違う! 紅白の脇巫女だっ!!!!」

 最後に江蓮が指を差しながら叫んだ。

 「脇巫女言うなぁぁぁあああああああああああっっっ!!!!!!」

 いつもの事だがいきりなり意味不明な叫び声を上げる霊夢に「……誰も何も言ってないだろうがっ!」と律儀に突っ込んでから眼前に迫りつつある八体の巨人を見据える魔理沙。

 巨人達も二人に気が付いたようで、足を止めると少女達に視線を集中させた。 そして先頭にいた巨人が「ククククク……キタナ……」と声を発したが、魔理沙にはどうでもよく速度を落とさずに更に接近しながら《ミニ八卦路》を構えた。

 「先手必殺っ!!!!!」

 《ミニ八卦路》に魔力を急速に注ぎ込みながら跨っていた箒の上に二本の足で立つと一気に巨人の顔面の間近まで肉薄した、そして「ワガナハ”ナガシマ”……」と言いかけた

のを無視して魔法の力を解き放った。

 「受けろっ!!!! 【マスタースパーク】ぅぅぅうううううううううっっっ!!!!!」

 小さな八角形のマジック・アイテムから放たれた太陽のように眩い閃光は「……チョ……マテ……」という巨人の抗議と共にその頭部を呑み込んだ……。



 里の人々の避難誘導をしていた上白沢慧音は、【マスタースパーク】の閃光の収まった後に頭部を失って倒れた巨人が仰向けに倒れて地響きを立てるのに「さっそく一体か、流石は魔理沙達だなと……」と安堵の声をもらした。

 「……まだですっ!!」

 巨人のいる方へと顔を向けていた慧音が背後からの甲高い少女の声に振り返ると、そこにいたのは貸本屋〈鈴奈庵〉の娘である本居小鈴だった。 険しい表情で手に抱えている本には”進〇の巨人”とタイトルが書かれていたが、慧音には今はどうでもいい事だ。

 「……小鈴か、いったい何がまだなのだ?」

 「おそらくですけど、頭を吹き飛ばしても巨人は倒せません! 巨人を倒すには”弱点”を攻撃しないと……」

 ”進〇の巨人”の本を両手でもっと慧音に見せるように前に突き出してくる、わけが分からず呆気にとられていると今度は巨人達らしき不気味な笑い声が聞こえてきた、再びそっちへと視線を向けた彼女の目に飛び込んで来たのは、先程倒されたはずの巨人――”ナガシマ”がおぞましい笑顔で笑い声を上げていたのである。

 「……なっ!? そんな馬鹿なっ!!?」



 霊夢は驚愕に目を見開きながら「冗談でしょう?」と声を上げた、倒したはずの巨人の傷口がボコボコと泡立ったかと思ったらあっと言う間に頭部が再生して起き上がってきたのである。

 「嘘だろ……どうなってんだよっ!?」

 フルパワーで【マスタースパーク】を撃った魔理沙もまるで悪夢でも見ているかのような顔になっている、手足ならまだしも頭を吹き飛ばして生きている生き物など普通はいるはずがない。 いや、知り合いに約二名いることはいるが彼女らのように《蓬莱の薬》をこいつらが飲んでいるとは魔理沙も霊夢もいくらなんでもありえないと考える。

 「クックックックックッ! ソンナコウゲキデハ、ワレラハタオセンゾォ?……ナア、”クワタ”ヨ?」

 「ソノトオリダナ”マキハラ”ヨ。 ガッハッハッハッハッ!!!」

 身動き出来ないでいる二人の少女を巨人達が嘲笑う、それに腹が立ちつつも次に打つべき手を見出せない。 あるいは全身を細胞ひとつ残すことなく焼き尽くせば倒せるのかも知れないが、通常サイズの人間ならばともかく十五メートル級の巨体を消滅させれる様な火力など霊夢でも無理である。

 その様子は離れた場所にいる慧音と小鈴にも当然見えている、霊夢と魔理沙の表情も見えず、声が聞こえずとも二人が追い詰められているのはよく分かった。

 「何とか……何とか霊夢さん達に”弱点”の事を教えないと……」

 「危険だ! 空も飛べないお前が行っても奴らに踏み潰されるだけだぞっ!!」

 今にも駆け出しそうな小鈴を慧音が制する、弱点を知りさえすればあの二人なら確実に巨人達を倒せるだろうが、その為にまだ若い小鈴を犠牲にするわけにはいかない。

 そもそも、こんな漫画本と同じようにあの巨人達も倒せるとは慧音には信じられず、自分で二人に教えに行くという考えも浮かんでいなかった。

 「グッフッフッフ……グフッ!!?」

 その時、不意に”クワタ”が笑い声を途切れさせてうつぶせに倒れた、首筋の上の辺り……いわゆるうなじの部分に刃物のようなものでバッサリと斬り裂かれた傷があり、そこから赤い血を噴出している”クワタ”は、先程の”ナガシマ”の様に起き上がる事はなかった。 「……ク、”クワタ”~~~~!!!!」という”ナガシマ”の絶叫が、彼が絶命した事を何よりも物語っていた。

 「……な、何が起こったのよ……!!?」  

 「あそこだ、霊夢っ!!」

 魔理沙が示す先には、民家の屋根の上に凛々しく立つ十六夜咲夜の姿があった。 サイドを短く編んだ銀髪やメイド服は普段通りだったが、彼女の両手には《ナイフ》ではなく二本の太刀が握られていて、腰にはその細身の身体には似つかわしくないごっつい機械を装着していた。

 「咲夜!? 何なのよ、そのみょうちくりんな機械は!?」

 霊夢の問いに「ふっふっふっふ……それは僕が作った《立体な機動装置》さ!」と答えたのは、咲夜とは別の屋根の上に立つ水色の作業着に髪の色と同じ緑色のリュックを背負った小柄な少女だった、「にとりっ!?」と魔理沙がその名を叫ぶ。

 河城にとり、〈妖怪の山〉に住む河童であるこの少女は〈幻想郷〉では機械に詳しい存在として知られている。

 「ワイヤー射出とガス噴射で使用者に高機動戦闘を実現させる新兵器! これこそ、にとり脅威のメカニズムっ!! その性能はもちろんお値段以上っ!!」

 得意げな顔で説明するにとり、いろいろとツッコミどころ満載な設定だったが霊夢と魔理沙には残念な事に”進〇の巨人”の知識はなかった。

 「そして、その装置を駆使して巨人を倒す今日の私は〈紅魔館〉のメイド長にあらず!! そう、今日の私は”紅魔メイド兵団”の兵団長の十六夜咲夜ですっ!!!」

 にとりに続き鋭い目で巨人達を見据えながら叫ぶ咲夜には、更に別の屋根の上にパチュリー・ノーレッジと共にいるレミリアの「……ノリノリね、あの子……」と呆れた顔で呟くのは聞こえていない。

 「コ、コウマダト!? バカナ……”くろまてぃ”はドウシタノダ!?」

 「もちろん倒しまたよ、でなければ私がここにいるはずはないでしょう?」

 驚きの声を上げる”ナガシマ”に不敵な顔で答える咲夜の後に今度はパチュリーが口を開いた。

 「……私達があなた達の”弱点”なんて知らないと思ってたんでしょうけどね、お生憎様、”進〇の巨人”は当然視聴してるし原作も全巻購入済みなのよ?」

 「……〈紅魔館うち〉の腐女子パチェを侮っちゃいけないって事ね……感心して良いんだか悪いんだか……」

 「……感心して良い事よレミィ? そしてそんな私はエレ〇×リ〇ァイ派よ!」

 周りのノリについていけないレミリアは一人脱力状態でツッコミにもいつものキレがなく、「……いや、あんたの趣味とか別にいいから……」とジト目で親友を見やるだけだった。

 「ググググ……ナラバ、マズハキサヲタオシテ”クワタ”ト”くろまてぃ”ノカタキヲトッテヤル!!」

 ”ナガシマ”の言葉を合図に”マキハラ”ら七体の巨人が一斉に咲夜目掛けて突撃したが、咲夜はまったく慌てる事もなく屋根を蹴って跳び上がる。 元より有している飛行能力にガス噴射の加速を利用した動きは普段の彼女のそれを遥かに凌駕しており、巨大な手で掴みとろうと、あるいは踏み潰そうとする巨人たちの手足をひらりとかわしながら”マキハラ”に迫る。

 「アンカー射出っ!!」

 射出されたワイヤー・アンカーが”マキハラ”の額に命中し突き刺さる、同時にガス噴射で加速した咲夜の身体は”マキハラ”の頭上を弧を描くような軌道で跳び越えた。  

 「遅いですよっ!!」 

 躊躇なく振られた太刀は”マキハラ”が振り返るよりも早くうなじを斬り裂き鮮血を舞わせた、「グフェ……」という声を発して倒れ逝く巨人を見届ける事もせずに「……一体目」と小さく呟き次の獲物へと跳ぶ。

 「コノ! カトンボメッ!!!」

 「大きければ強いというものでもありませんよっ!!……二体目ですっ!!」

 二体目を倒し、舞い散った巨人の血が白いメイド服に赤い模様を作るのに、咲夜はぎょっとなった。 一旦屋根の上に着地した時に無意識に服の状態を確認してしまう。

 「……しまった……これでは後でお洗濯が大変です……」

 「ヨユウコイテルバアイカヨッ!!!!」

 ”オウ”はその隙を見逃さずに渾身の力を込め腕を振り下ろす、叩き付けられた巨大な平手は咲夜の身体ごと民家を叩き潰した……かに見えた。

 「……ええ、こいてる場合ですよ?」

 「ナニッ!……!?」

 寸前まで倒壊した家屋の上にいたはずの咲夜の姿が”オウ”の後ろにあった・・・・・・。 そしてやはり躊躇なく振るわれた刃は”オウ”が振り返りさくやの姿を確認する前にうなじを斬り裂く、残った巨人達が驚愕の表情を浮かべる中で”オウ”も地に倒れ伏した。

 「……にとりの《立体な機動装置》の性能も大したものだけど、やはり咲夜の実力も相当なものねぇ……リヴァ〇も真っ青な強さね……」

 「誰よ……それ……」

 パチュリーとレミリアがそんな会話をしている間にも咲夜は次々と巨人を屠っていく、飛行能力を有する咲夜本来の戦闘力と《立体な機動装置》、そして【時間を操る程度の能力】のトリプルコンボは体格差が十倍近くある敵をも圧倒した。

 そして、とうとう立っているのは”ナガシマ”だけとなった。

 「……ふっ、勝ったな……」

 いつの間にか眼鏡を掛けていたパチュリーが不敵な笑みを浮かべつつ呟くと眼鏡のレンズがキラリと光るのに、「……それ、誰の真似……?」とレミリアが力なく突っ込むのと”ナガシマ”のうなじを咲夜が斬り裂くのはほぼ同時だった。

 「グォォォオオオオオッ!!!……オノレ……ダ、ダガ……ワレガタオレテモ、ワガ”キョジングン”ハ……エイエンニフメツダァァァアアアアアアアアアアッッッ!!!!!!!」

 ほとんどの者にとっては意味不明の断末魔の叫びを残し”ナガシマ”が倒れて逝くが、その光景を目撃した者達の中でレミリア唯一人だけが「……うん、何かそんな気がしたのよねぇ……」と力ない声ながらも律儀に突っ込んでいた……。



  

 日もすっかり暮れて半月の月が昇っている夜空の下にある〈八雲邸〉では、この家の主である八雲紫と彼女の式である八雲藍は、夕食を摂りながら今日〈人里〉で起こった事件の事を話し合っていた。

 「……まあ、レミリア・スカーレットにしてみれば売られた喧嘩を買った……というところでしょうか」

 「そうね藍、少なくとも〈人里〉の危機を救おうとかはないでしょうね……まあ、〈人里〉がなくなるとレミリアも困る事はあるでしょうからねぇ、まったくなかった……という事もないでしょうけど」

 正月も明けた八雲家のちゃぶ台の上には白いご飯と焼き魚に豆腐とワカメの味噌汁が乗っている。 それらの料理を味わいながら、もっとも里の人間にしてみれば自分達を救ってもらった事には変わりなく、レミリアの都合はどうでもいいのでしょうけどねと考える。

 何はともあれ、紫にはこんな騒動を引き起こすような人物には一人しか心当たりはない。 あまりの出番のなさに自分達はおろか書き手あのアホも半分忘れかけていたのであろう彼女・・の仕業には違いないだろうと思った。




 その”彼女”こと暗黒脇巫女ダーク・レイムは、〈幻想郷〉の某所にある自らの〈黒博麗神社〉の屋根の上に立っていた。 何故そんな所に立っているかということに意味なく、強いて言えば何とかと煙は高いところが……というところであろう。

 「どやかましいわぁぁぁああああああっこの書き手どアホぉぉおおおおおおおっ!!!!……つか、いい加減に脇巫女はやめいぃぃぃいいいいいいいいいっ!!!!!!!」

 天に向かってあらん限りの声で盛大な叫び声を上げたダーク・レイムは息を切らししてしまい、しばらく「ゼィ~ゼィ~……」と荒い呼吸を繰り返すしか出来なくなってしまい、再び声が出せるまでにはきっかり五分は掛かった。

 「……ま、まあいいわ。 ともかく、今回は所詮は新年の挨拶程度……次こそは〈幻想郷〉の連中に阿鼻叫喚の地獄絵図を見せてやるわっ!!!!」

 その光景を想像し愉快そうな高笑いをするダーク・レイムは、しかし、それも今後に自分の出番があればの話であるとは考えもしていなかったのだった……。




 「……って!! まさか書く気ないのかっ!? ふざけんなよこの書き手どアホがぁぁぁああああああああああああっっっ!!!!!!!」 

 

 

 

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