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白縄が結ぶ相思相愛

西地区警備署にやって来たのは白蛇の化身白娘子だった。彼女は行方不明になった恋人許仙を探しているらしい。白くて長い物に好かれる彼が失踪した理由とは?

 その日、西地区警備署遺失物課のカウンターに現れたのは白銀の長い髪を持つ少女だった。カウンターにいたいばら署員を認めると、苺のように赤い瞳でじろりと眺めた後、シュルルルルと音を立てて、舌をチロリと出す。


「今日はどうされましたか?」

「私の名前は白娘子。夫の許仙がまた家出をしたから探してほしいんです」


 令和日本の隣にある街、幻想怪異発生特別区──通称「特区」。その治安を守る西地区警備署には様々な依頼が持ち込まれる。鞄の中で行方不明になったリップクリームから始まり、パンプキンヘッドの中身の捜索や、消えてしまった秋の行方を追うといった、様々な依頼が舞い込んでくるのであった。


 今日の依頼は行方不明者の捜索になりそうだ。


「わかりました。ではその特徴を──」

「顔がとにかく良いんです! 笑うとくらくらしちゃうくらいメロくて、オーラ? みたいなのがすごくあって。それで、背も高くてすらーっとしてて。あ、でも威圧感はなくて、むしろスマートっていうか! 雰囲気もすごく優しそうで、いつもニコニコしてて穏やかで……!」


 いばら署員の問いかけに、白娘子が身を乗り出すようにして話し始めた。いばら署員がその勢いを制止する。白娘子の主観の話はしていないのだ。


「待ってください。もう少し……。もう少し、具体的な特徴をお願いします。服装とか」

「なんでも着こなしちゃうんです!」

「髪色とか」

「うるうる艶々で!」

「……」

「でも、見ればわかります! 白くて長いものに囲まれているはずなので!」


 白娘子が言う通り、「白くて長いものに囲まれた男」が街の中にいるという情報提供があった。いばら署員と白娘子は連れ立って、現場へと向かう。


「許仙さま!」


 白娘子が呼びかけた男は屋台でうどんを啜っていた。振り向いた男がイケメンかどうか、いばら署員には判断が付かなかったが、白娘子のいう通り、許仙は変わった特徴を備えていた。


 男の周りには白くて長いものが集まっていたのだ。白い剣の形を模った長い風船に、トイレットペーパーの山、ユキヤナギの花束、小脇には何か白いものが入った瓶があり、よくよく見るとその中にはサナダムシが浮いていた。どうやら標本らしい。


「白くて、長いもの……」


 いばら署員が思わずつぶやく。


 許仙が頭を掻きながら、白くて細長いものに好かれる体質なんです、といばら署員に説明した。なるほど、白くて長いうどんをすすっていたのはそのためか。


 これにて一件落着……といばら署員は言いたいところだったが、そうは問屋が卸さなかった。


「許仙さま、やっぱり白くて長いものだったらなんでもいいんだわ!」


 サナダムシやユキヤナギ……といった、白くて長いものに囲まれた夫を見た白娘子がぽろぽろ泣き出す。浮気だわ! と言われて、許仙がぐっと言葉に詰まる。それを見た白娘子は白い蛇になってその場からしゅるしゅると逃げ出してしまのだった。


 ──なるほど、白くて長いもの、か。


 果たして、白娘子も許仙の「白くて長いものに好かれる呪い」にかかった一人なのだろうか。


 ***


 逃げ去ってしまった白娘子を探して、いばら署員は許仙とあたりを捜索していた。


「白娘子さんがまたと仰ってましたが……、立ち入った話ですが、仲が悪いんですか?」


「まさか、僕は白娘子のことが好きです」


 その返事に怪訝そうな顔をしたいばら署員に向かって、でも、白娘子は僕のことが本当に好きなわけじゃないかもしれない……と、許仙が話をし始めた。


「僕は見ての通り、白くて長いものに好かれる体質です」


 そう言っている間にも、どこからともなく現れた、ちぎれたスズランテープが許仙にまとわりつく。


「白娘子はもしかしたら、僕の体質のせいで僕のことが好きなのかもしれないから……」


 白いものに好かれる、白くて長いものは好きだ。白娘子に似ているから、かわいい。でも白くて長いだけでは白娘子の代わりにはならない。白娘子が僕の呪いで僕のことを好きだということが、いつかわかってしまうのが怖いんです……、と許仙は続けた。


 いばら署員は白娘子が警備署に来た時のことを思い出していた。興奮して許仙の説明をする姿は、許仙の『白くて長いものに好かれる』呪いによって許仙を好きになっているとは思えなかった。


「でも、白娘子を試すようなことをして、白娘子は傷つきませんか?」


 野梨子が言ったことに、許仙ははっとした表情となり、それから悲しそうな顔をした。


「僕は白娘子が好きだ。だから、彼女を悲しませるようなことはしたくない」


 なら、少しお二人で話してみてはどうでしょう? と、いばら署員の指さす先には、目を真っ赤にした白娘子が立っていた。美しく伸ばしていた白銀の髪の毛はまあるいボブに切り揃えられている。


 驚いてもたもたしている許仙に、白娘子が駆け寄って手を取った。


「私は白くて長いものだから許仙様のことを好きだというわけではありません」


 白娘子は続けた。


「白い蛇だと珍しがられて見世物小屋にの瓶に詰められていた私を助けてくれた優しいところが好きなのです。たとえ私が白くなくても、長くなくても私は許仙様を好いております。だから、白くて長い髪の毛を切ってまいりました。白くも長くもないですが、私が許仙様を好きな気持ちは変わりません!」


 白娘子が、似合いますか? とおずおずとしながら聞いた。許仙がすごく似合っていてかわいいと話す。


 仲睦まじい様子をみて思わず笑顔になるいばら署員であった。

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TAMAコミ10ありがとうございました! BOOTH通販を開始しています。よろしくお願いします☺
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