聖女様と初めての決着
落ちた右腕を見ると切断面が赤く染まっており痛々しい。
身体強化50%。
もうこれ以上好きにはさせない。今のはかなり痛かった。
私は右足に掴まっている盗賊の頭を右手で掴み無理やり力で引きはがすと、近くの木に向かって投げ飛ばす。木に叩きつけられた盗賊は体を襲う衝撃に声を上げるとその場にぐったりと倒れこむ。
うん、自分の腕を丸ごと回復するのは初めてだけど違和感なくスムーズに動かせる。
足を掴んでいたもう一人の盗賊は一瞬で回復した右腕で投げ飛ばされる仲間を目撃し、慌てて足から手を放すと、怯えながら後ずさる。
「ば、バケモノだ」
「ム、失礼な私はただのヒーラーです」
失礼な奴のアゴを拳で下から打ち上げると、身長の三倍くらいの高さまで飛びあがった。落ちてくる所をキャッチすると先ほど倒れこんだ盗賊と同じ場所に放り投げる。
「あと一人、悪い盗賊さんはこれで全滅ですね」
残すはリーダー格の一人だけ、男は勝てないと悟ったのか斧を下ろし、覚悟を決めた顔でこちらに話しかけてくる。
「わかってるかもしれないが、俺はガルム。俺の命は好きにしていい、どうかまだ生きてる仲間は見逃してくれないか、盗賊団も結成してまだ五日目なにも奪ってないし、だれも殺してない」
だから私はそんな凶悪な存在じゃないっての、多分まだだれも死んでないし。
というか何も奪ってないって、私の牙イノシシ奪っただろ私の大切な牙イノシシ。
それにしても結成まだ五日目の盗賊初心者なのか、ここは聖女としてこの人たちを更生させてやらなければ、そのためににもここは少し脅かしてやろう。
そうこれは聖女としての大切な役割であって、決して牙イノシシの恨みではないのです。
私は口のはしを吊り上げ悪役っぽく笑ってみせる。うまくできてるか分からないけど。
「聖浄機関第四位、聖拳のエレンを相手に良い度胸です。変わりにあなたは、たっぷりと楽しませてくださいね」
暗殺部隊の名前は今考えた。本物の暗殺者は名乗ったりはしないだろうけど……
私はリーダー格の男を軽く蹴飛ばし尻餅をつかせると、男が持っていた大斧を手に取る。ほかの連中の武器と違って良く手入れがされていてとても切れそうだ。
「動かないでくださいね。動いたら仲間を殺しますよ」
リーダー格の男は一切抵抗しない、私は斧を高く上げる。強化出力100%
私は大斧を男の右太ももに振り下ろす。斧は太ももから先を切断して男は大きな悲鳴を上げた。
「ぐあぁぁぁぁぁ」
うーん斧はやっぱりしっくりこないな、肉を切断する感触もあまり好みじゃないし、しばらくは素手が良いかな。
そんなことを考えてる間も男の悲鳴は続いていた。
「ぐぉぉぉぉぉ」
「いつまで大きな声を上げているのです。自分の足を見なさい足を」
「くっ、いい趣味してやがるぜ……って足がある!?膝から先も!?」
そう、私は切断直後に男の右足を回復させていた。もともと無かった膝から先も含めてである。
おまけに、眼帯の下の目、顔の傷、服の下にある傷跡、お酒で弱っていた内臓、各種疲労まで治す完全ケアだ。
「言ったじゃないですか、私はただのヒーラーだって。それにさっきはノリで聖浄機関なんて言いましたが、暗殺部隊なんて物騒なやつじゃないです」
男は茫然としながら自身の足を触っている。
「じゃあ唐突に襲ってきたのは」
「それも何回も言いました。牙イノシシの奪還のためです。あれは私が捕ったんですからね。すごく楽しみにしていたのに、あなたたちが盗ってしまうから……それよりもあなたの仲間たち、全員治しますから集めてください」
仲間という言葉に男ははっとすると、ひとこと言って吹っ飛ばされた仲間を必死に集めだす。
「ありがとう」
まあ、元々私がやったことだし、死なれたら気分わるいしね。
さぁ、治療が終わったらご飯だ。




