第47話 ゴーレムマスター
「伝説のクラン関係者が多すぎないか?
という顔をしているね」
「……人の心を読まないでください」
「ふふ、読まなくても分かるさ。
それに、あたし自身も驚いてるよ。
皆とうの昔に死んだと思っていたからね。
リンナ殿は魂だけの存在になり、ユウヒは……ふむ、胸と太ももが増量した以外はまるで変わっていない。
そして、あそこの少女――マリアベルの子孫だろう? 面影が強すぎる」
一瞬で全てを見抜いた。
酒に酔っているように見えて、その実、観察眼は研ぎ澄まされている。
これがクロノ・クロノスの一員か――。
「不思議なことだがね。
時代が大きく動くとき、人は惹かれ合うんだ」
「惹かれ合う?」
マキナは酒瓶を傾け、喉を鳴らして一口。
唇の端を袖でぬぐいながら、静かに言葉を続ける。
「《《あんな別れ際》》で――日常的に願っても、二度と再会なんて訪れない。
だが、不確定要素が絡み合い、特異点が現れたとき……不思議と物語は回り始めるのが世の常。
……そういうもんさ、ミスターギリアム」
「は、はあ」
いまいち分からないが、運命的な出会いってことだろうか。
「ああ、そういえば、まだちゃんと名乗っていなかったね」
マキナは酒瓶をテーブルに置き、背筋を伸ばした。
「――あたしはマキナ=ドール。
ゴーレムマスターさ」
「ゴーレムマスター……って、あの人形使いの魔女ですか!?」
うわあ、クロノ・クロノス関連の書物は何度か読んだけど、剣聖リンナほどではないにせよ――隠れたファンの多い伝説の人物じゃないか。
「世間ではそう呼ばれているのか。
可愛らしくない、実に華やかさに欠如している。
あたしとしては、もっと夢と可愛さが詰まったふわふわな通り名を欲しているがね」
人形使いの魔女――その名は、かつてクランメンバーが危機的状況に陥るたび、必ず助けに現れる存在として知られている。
いつも派手な登場と、奇跡のようなタイミングで舞台に現れるその姿が、多くのファンを惹きつけた。
「じゃあ、あのメイドさんたちはもしかして……!」
「もちろん、あたしのゴーレムさ」
マキナは、まるで我が子を見守るような優しい眼差しを、メイド姿のゴーレムたちへ向けた。
ふんだんにフリルをあしらった衣装に、整った所作。髪型もそれぞれに個性がある。
――ただし、表情だけは一様に無機質。そこだけが、確かに人形だった。
「ミスターギリアムは、このクランのマスターらしいね?」
「はい、いつかクロノ・クロノスのようなSSS級クランになるのが夢です」
一瞬、マキナの瞳が細くなった気がした。
だが、すぐにいつもの柔らかな笑みに戻る。
そういえば――“人形使いの魔女”って、たしか人間の種族だったはずだ。
なのに、なぜ彼女は今もこうして生きている?
「それは実に素晴らしい―――――――――――ほど、一般的でくだらない夢だね」
微笑を浮かべたまま放たれた言葉。
その声音には、薄刃のような冷たさが宿っていた。
マキナはグラスを手に取り、淡く酒を口に含む。
「いや、失礼。思ったことは言ってしまうといったろう。
……追わない方が身のためだ。
君の歳なら嫁を取り、子どもを育て、未来へと子孫を繋いでいく。
なにも叶えられない夢と一緒に、危険へ身を置くほど愚かな男ではないだろう?」
「……それはどういう意味ですか」
彼女はわずかに目元を緩め、言葉通りさ、とだけ答えた。
そして、ゆらりと椅子から立ち上がる。
「目的はクラン強化合宿だったな、手を貸そう。
おままごとを見る程度なら、苛立ちもしないさ」
それだけ告げて、マキナは背を向けた。
乱暴な言葉のはずなのに、どこか――自分を罰しているようにも見えた。
【カクヨム】
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