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ヴィルディステの物語  作者: あるかな
【第1章】
8/218

1‐01‐2 戸惑い



 心地よい柔らかさに体が目覚めようとするのを、思わず抑え込みたくなる。


 暖かで柔らかい布地。微かに安心する香りもする。


 このまま寝ていたいと思いながらも薄目を開けると、布越しなのかわずかに陽の明るさを感じる。


 ——朝?


 なんとか誘惑に打ち勝って薄く目を開ければ、天蓋付きの大きなベッドにいる己に気づく。豪奢というわけではないが、かなり品格を感じる寝具とベッドである。


 ——んん、なんでこんな立派な場所で寝ていたんだっけ......。


 眠気を振り払いながら身を起こし、混乱する頭で記憶を手繰り寄せた。


 ——ぁ......。万象のあるじに《女神》!


 確かあの時《女神》に手を包まれて、何かいろいろ伝えたいけど時間がないからとか、そんな言葉を聞いて......。


 あれ?


 その後、何が......?


 覚えていない......。


 そもそも、ここは《女神》がいう“エイルタム”なのだろうか?


 《女神》にすぐ会えると思っていたが、それは間違いだったのか?



 もやもやと浮かんでくる疑問を、今は考えまいと一度頭の隅に追いやる。そして、この天蓋の中から出てみることにする。


 閉じた布をつまみ、そっと外を窺うが、誰もいないようである。


 静かにベッドから滑り降りた。裸足の足を受け止める絨毯は、毛足も長く、驚くほど柔らかだった。


 軽く辺りを見渡してみると、誰かの私室なのか生活感の感じられる部屋である。


 部屋の様子も気になるのだが、それ以上に、ナギサは先ほどから自分自身に強い違和感を覚えていた。視界に入る自身の手足、その視点、すべてがちぐはぐに感じられるのだ。


 周りを確かめていると、丁度良いところに姿見があることに気づく。

 大きな鏡面に磨き抜かれた木製の枠。木と花の飾り彫りが美しく、幼いころに憧れたような設えの姿見である。

 違和感の元を確認すべく、ナギサは姿見の前に立った。


 鏡に映っていたのは、肩にかかるかどうかの短めの白髪。青白い肌。紅い瞳。そして、痩せこけた体。ストンとした白っぽい寝間着をまとった、紛れもない十歳ぐらいの己の姿だった。


 ——何故?


 この状況、今すぐ全力で誰かに説明してもらいたかった。

 《女神》の誘いを受けた後に、何が自身に起きたのか?

 そもそも、ここは“エイルタム”なのか、自分は何故この姿なのか、何故ここで眠っていたのか!




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