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ヴィルディステの物語  作者: あるかな
【第二章】

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2‐07‐5 モリスの計画

 ─翌日 昼食時食堂にて─



 アースター率いる巡回班の帰還の知らせは大神殿内へあっという間に広まった。

 が、学生でその知らせを聞いて騒ぐものはほとんどいない。いても身内が巡回班に関わっていたような者だけだ。


 だが、カエルは騒ぐ。嬉しさを全身で表している。ナギサは昨日少しだけ話すことが出来て落ち着いているが、カエルは当然会っていない為、未だ興奮状態である。


 そんなカエルをモリス達は鬱陶しいものをみるような目つきで眺めている。


「ねぇ、ナギ。あれ、どうにかできない?」


「ん、無理。そもそもカエルがわたしに話しかけてきた切っ掛けを思い出して欲しいよ」


「だね。じゃぁ、アレは無視して。化粧水の件。わたし、周りにちょっとお試しで配ったんだ。そしたら、皆買ってもいいかも、って言ってくれるの。だから、街で売れないかな? って」


「え? どうやって? そもそも材料をどうするの?」


 モリスの考えはこうだ。騎士見習いを目指すウルサスとヴルペが近々街の外で実習を行う。その時、皆で一緒に行こうというのだ。

 補助魔法(防御)と回復役としてカエルとナギ、モリスとゴリツィアは回収係というかお手伝いということで一緒についていく。ウルサスとヴルペが街の外へ狩りに行くという話を聞いて思いついたという。


 なるほど、ウルサスとヴルペは騎士を目指しているので剣や弓を習っているのだろう。その腕試しと実践、ということか。

 このウルサスとヴルペ、そしてゴリツィアは例のカエルとの出会いの一件で出会った友人達だ。モリスとカエルを加えて5人でいつも一緒に動いていたようで、今はナギサが加わって6人の仲良しグループと周りからは見られている。


「そんなに都合よくいくかなぁ......」

 ナギサはモリスの楽天的な案にとまどってしまう。


「そうそう、なかなか無謀だよ、君達」


「「「えっ?」」」


 突然の声に振り向くと、トレーを片手に一人の神官が立っていた。

 学舎の販売所を管理しているフィデューシである。


「フィデューシ様! ご一緒しませんか? あの、わたしの計画は無謀ですか?」


 モリスがフィデューシへ一緒にテーブルへつかないかと誘いつつ、先のフィデューシの言葉への質問を投げかける。


「ありがとう。じゃぁ、お邪魔させてもらおうかな。学生さん達と一緒のテーブルは久しぶりだな」


 フィデューシはテーブルにつくと、モリスの問いはそのままに、

「まずは、売りたいと考えている化粧水を見せて欲しいかな」と口にする。


 モリスが用意していた薬瓶をフィデューシに預けると、彼は食事をしながら器用にも鑑定をしている。


「うん、いい出来だね。君達春学期入学だったよね。それでここまでのものを仕上げられるのはとても素晴らしいことだよ。ただ、これを販売するとなるとね......」


 フィデューシが教えてくれたことをまとめると、まず、調合物のレシピ登録と販売許可が必要である。

 大神殿に所属する間は、大神殿の販売許可が必要で、かつ神殿内にある“商会”を通じてしか販売はできないそうだ。強引に無許可でこっそり街で売ることは可能だが、当然大神殿側に知れたら処罰対象となる。

 登録は元の世界でいうところの特許である。既に登録されているレシピなのかという確認だ。既存であれば販売時には手数料が持っていかれる。新規であればレシピ考案者として登録される形だ。


 次に問題とされたのが、化粧水を入れている薬瓶。実習室で調合したので、用意されている薬瓶をそのまま使っている。が、これは大神殿の備品である。底面を確認してみるよう促され、皆で確認してみると、大神殿所有物であることが明記されていた。登録と販売許可が問題なくても、この薬瓶では神殿内の商会では取り扱ってもらえないし、街でこっそり売ろうにも普通のお店では断られること間違いなし、というわけだ。


 この為、販売を考えるのであれば薬瓶の用意をしなくてはならない。ただのガラス瓶でよいのであれば安価なものが手に入るが、今手元にあるレベルのものを用意しようとすると、かなり費用がかかる。この一見何の変哲もない薬瓶、実は魔道具なのだ。中身の長期保存が可能で、高ランクの薬瓶であれば開栓後の保存期間がかなり長く設定してあったりする。当然用意する薬瓶の原価を考慮して販売価格を決めなくてはならない。儲けやその配分、いろいろ考えると頭が痛くなりそうだ。


 このあたりのことは錬金学の講義で説明してもらえるのだが、大抵は期の最後、3の節や9の節になるらしい。半年ほどで販売を考えるほど上達している学生はまずいないので、今まで特に問題は起きたことがなかったそうだ。



 モリスは俯いてしまっている。ナギサは心配になり声をかけようとしたのだが。


「わかりました。まずは登録ですね」


 モリスが俯いたまま深く太い声でゆっくりと呟いた。

 よく見れば両手は拳を握りしめ、なんだろう“ゴゴゴゴゴゴ”っという効果音が聞こえてきそうな雰囲気を醸し出している。


「あっ、ああ、そうだね」

 フィデューシの声が引き気味だ。


「ナギ! 行くよ!」


 モリスはいきなり立ちあがると、ナギサの手を掴み走り出した。



 △▼


 化粧水の登録と販売許可の手続きはあっけないほど簡単に終わった。


 食堂でフィデューシから忠告を受けた後、ナギサとモリスは魔導工房へと赴き手続きを行った。

 魔導工房内に担当部署があるのだが、学舎の生徒だけでそこを訪れるということが珍しいらしく、ひどく驚かれた。

 だが、二人がこれまでの経緯とやりたいことを説明したところ、あっさりと手続きをしてもらえた。“ローズマリーの化粧水”は既存の届けはないことを確認。レシピ開発者はナギサとモリスの二人の共同という形式で登録は行われた。


 販売許可もすんなりもらえたのだが、フィデューシに注意されたことをやはりというか、再び言われた。薬瓶のことである。とりあえず今は悩んでも仕方がないので、許可を取ることを優先しようとナギサもモリスも頭を切り替えた。



 ─数日後 再び食堂で─


 昼食時、いつものメンバーで囲む食堂のテーブル。


「さて、許可はもらったよ! 薬瓶のことは後にして、素材集め!」


 モリスがテーブルを囲む皆に宣言する。


「僕たちは実習のついで、っていうのと補助魔法をかけてもらえるっていうのでありがたいけど、いいの皆は?」

 ウルサスとヴルペは心配気に皆の表情を確認する。


 カエルとゴリツィアは「付き合うよ」といった雰囲気だ。


 だが、ナギサは言わなければならないことがあった。先日、モリスが素材集めを宣言した時に言おうと思ったのだが、フィデューシが現れてその後魔導工房へ、という流れで言いそびれていたのだ。


「あの...... 忘れているかもしれないけど。わたし、まだ大神殿の外にすら出る許可をもらえていないの......」



「「「えっ~!!!」」」


「ごめんなさい!」




 結局、この後の話し合いで素材集めは一旦保留となった。流石にカエル一人で5人分の防御結界を張り続けるのは無理がある。ナギサの外出許可を取ってから素材集めは行おうということになった。

 そして、補助魔法を期待していたウルサスとヴルペであるが、他の騎士を目指す講義仲間と行くことにするそうだ。




ウルサスとヴルペ、別に補助魔法がなくても、コーマの技で身体強化と防御力上昇を行うので、聖都周辺の魔獣相手であれば大怪我はしない、はずです。


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