2‐07‐4 再会
厩舎へ戻るとファイヌムがいた。何やら非常に忙しく動き回っている。
だが、馬達が戻ってきたのを見るとこちらにやってきて、
「じゃぁ、馬の世話を皆で手分けしてお願いするよ。わたしは少し確認したいことがあるから、アースターのところまで行ってくる。ユリウス君はまだ時間が許すなら、このまま馬の世話を少し手伝って欲しい。ナギサ君は時間は大丈夫だよね? わたしと一緒に来てくれないか?」と、皆に告げる。
ユリウスは問題ないとそのまま厩舎へと向かい、ナギサはファイヌムと共にその場に残る。
「あの、わたしはどうすれば?」
「まぁ、一緒においで」とファイヌムは詳しく言うことなく歩き出す。
置いて行かれそうになり、ナギサは慌てて後を追う。
「あの、ファイヌム様」
「なんだい? さっきの所まで戻るだけだよ?」
「いえ、騎士様の馬達って、何か違います? あ、いえ。その、戦闘にも怯えないようにとかそういう訓練を受けて、通常の乗用馬と違うことはわかっています。なんて言えばいいのか、上手く説明できないのですが...... 違和感っていうか、すごく人間っぽいっていうか。さっき目が合って、すごく落ち着かなくって......」
ナギサは先ほどの“違和感が何か”を知りたくて、ファイヌムに尋ねてみた。
「──すごいな、君は。それ、あまり人に言っちゃダメだよ。騎士達にもね。その話、また別の機会にしてあげるよ。あまり人に聞かれたくないから。盗聴防止なんて、ここでかけると変に勘繰られるからね」
どうも大っぴらに話していい話題ではなかったようだ。ナギサはファイヌムの言葉に大人しく頷いた。
先程の場所に再び辿り着く。人の数も減り、馬達は既に厩舎へと移動済み。先程の喧噪は随分と収まっている。ファイヌムはアースターを探しているのだろう、辺りを見回している。ナギサもつられるように辺りを見回していると、見慣れた特徴的な髪色が目に入る。
(あっ、セラス!)
気付いた時には駆けだしていた。
「お帰りなさい、セラス! すっごく心配したんだよぉ~」
「ナギ! どうしたの? ここで会えるなんて」
ナギサはセラスに駆け寄よると、思いっ切り抱き着いていた。
「これは、小さなお嬢さんに心配させてしまったようだ。すまなかったね」
ナギサがセラスに抱きつきグズグズと泣いていると、1人の神官が話しかけてきた。
「アースター様、打ち合わせ中に申し訳ありません!」
「セラスさん、大丈夫ですよ。わたしもファイヌムに少し話があるから」
アースターはそう告げると、少し離れたところで立つファイヌムのほうへと向かう。
「セラス、ごめんなさい。打ち合わせ中だったんだよね。つい......」
「ナギったら...... アースター様もファイヌム様とお話があるようだから大丈夫だと思うわ」
「今の方がアースター様? 班長さんだって聞いたけど」
「そう、今回の巡回班の班長。すっごく優秀。今回の巡回もアースター様がいなかったら、って思うと恐怖しかないわ。で、ファイヌム様やサクスム様とお友達だと聞いたわ。あ、サクスム様っていうのは、今ファイヌム様とお話しているがっしりした神官様よ」
「ファイヌム、久しぶりだな!」
「サクスム、相変わらず声が大きい」
「お前、久しぶりに会った親友に冷たくないか? これでも俺、生死の縁をさまよってきたんだぞ」
「冥府の扉石でも叩き割りそうなお前がか?」
「ああ、驚くことに本当だ。ファイヌム、馬をありがとう。助かったよ。全頭無事に連れて戻ることができた。想定外のことが多くてね、またそこら辺のことは別で話そうと思っている。流石に立ち話では無理だからね」
アースターの言葉にファイヌムが目を見開き、サクスムを凝視する。
「ほれ、驚いただろ。ま、お嬢さんに助けてもらったから、もう大丈夫だがな」
サクスムが少し離れたところで話すセラスを目で示しながら説明する。
「セラスさんに? なんだ、呪われでもしたのか?」
「お、察しがいいね、相変わらず。ま、詳しくは今度な。それで、お嬢さんといえば、アースターが相変わらずでな......」
「サクスム!! それはいい、もう行くぞ!」
アースターがサクスムの腕をひっぱりこの場から立ち去ろうと試みる。
すると、ファイヌムの手がすっとアースターの腕をつかんだ。
「何? 進展したの?」
あまりにも直球な質問にアースターの足が止まってしまう。
サクスムがファイヌムの肩に手を置く。
「ファイヌム。街で飲むぞ」
「わかった」即答であった。
ナギサはこの後厩舎に戻って馬の世話の手伝いをしております。




