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ヴィルディステの物語  作者: あるかな
【第二章】

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2‐07‐3 ユリウス先輩

 

(気まずい......)


 ナギサは慣れぬ相手にどう話しかけてよいのかわからず途方に暮れてしまう。


「ナギサさんだったよね。確か魔法学でこの秋から一緒だと思ったが......」


「っ、ひゃぃ。ユリウス先輩!」

 ナギサは緊張のあまり変な声になってしまう。


「すまないが、わたしはどうすればいいのか。先程の話の流れでは君に指示を仰げばいい、と聞こえたが」


(そうだった、ファイヌム様も馬丁さん達もかなりアバウトな指示で行っちゃったから......)


「えっと、外に出ている子達はもう少ないですよね。厩舎へ一度に連れて行きたいので......」

 と、ユリウスへ今ここにいる馬達へのブラッシング等をたのみ、練習場に散っている馬達をナギサが集めてくることにする。



 練習場に散った馬達を連れてユリウスがいる場所まで戻り、二人で手分けして必要な世話を済ませ、

「厩舎までいきましょう」とナギサはユリウスを促す。


「この頭数を一度に? 素直に僕らの言うことを聞いてくれるとは思えないが」


「あ、大丈夫です、先輩。経験ありますから。皆いい子達なので手間もかかりませんよ!」

 不安がるユリウスへナギサが問題ないと請け負う。


 実際、「ほら、皆、行くよ!」とナギサが声をかけて先導すると、馬達は大人しくついてくる。

 ユリウスはそんな馬達の様子に驚きながらも、ナギサに並んで歩きだす。


「随分と慣れているね。おまけに馬達も懐いているようだし」


「ああ、これは......」とナギサは秋休暇時のことをユリウスに説明する。その縁もあって、必須ではないがこの秋学期も乗馬の講義をとっているのだと続けて話をする。


「─そうなのか。騎士志望でもないのに乗馬を継続してとっているから不思議だと思っていたんだが」


 そんなことを思われていたのかとナギサは考えながら

「神官になっても馬の扱いや馬車の扱いに慣れておいたほうがいいとの助言を受けたので。それもありますね」と付け加えた。


「先輩は騎士希望なんですよね? 履修説明時の記憶ですが」


「ああ、よく覚えていたな。なので騎士見習いになれるように講義はとっているが、最低限の魔法は使えるようになりたいと考えている。マグナルバ先生の受け売りではないが、自身の回復ぐらいはスクロールではなくて自分で行いたいからな。それに、剣に属性魔法を纏わせたいと考えているのだが、今回履修してみて思ったが簡単にはいかなさそうだ」


「剣に属性魔法ですか?」


「ああ。剣技は剣術を鍛えれば身につけられるが、それに属性を持たせたいと考えているんだ。騎士の中でもそれが可能な方はほんの一握りだと聞いている。難しいのだろうが、やってみたいと思って履修したのだが......」


「そんなことができるんですね! でも、属性魔法なら既にわたし達、聖属性は使えますからもう第一歩は踏み出していますね!」


「あっ、そうか、聖属性ならもう使えるのかわたしは」


 どうもユリウスは火属性や水属性といったものを剣技に利用することを考えていたようで、聖属性を纏わせた剣技というのは思いついていなかったようだ。


 そんなことを話しながら厩舎へと向かい馬達をそれぞれの馬房に戻していく。すべての馬を戻し終えたころ、馬丁達から一緒にファイヌムのところへ向かおうと声がかかった。




 馬丁達と一緒にファイヌムが指定したという広場まで向かうと、人、人、人。そして馬達がいた。広場に近づく前から馬のいななきや人々の喧噪が聞こえていたので、想定はしていたが、考えていた以上に騒然としている。


 騎士達の馬は見るからに立派だ。長旅で疲れているだろうに、そのような様子を見せずに騎士に従っている。ただ、以前聞いたシンバではないのか? とナギサは不思議に思う。と同時に、何か違和感のようなものを騎士の馬達から受けるのだが、それが何なのかわからない。じっと見つめていると馬達もナギサの視線に気づいたのか、同じようにこちらを見つめ返してくる。何頭もの馬から視線を集め、なんだかナギサのほうが落ち着かない気分になって視線をそらしてしまった。


 騎士達の馬以外の馬は長旅に疲れた様子で、馬丁達に気付くと嬉しそうに嘶いている。


 まずは馬達を引き取ろう、と馬丁達の指示のもとユリウスとナギサは動く。騎士達の馬は厩舎でも専任がいるようで、その者達が引き取って厩舎のほうへと連れて行く。

 ナギサとユリウスは馬丁達から預けられた手綱を手に厩舎へと向かった。





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