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ヴィルディステの物語  作者: あるかな
【第二章】

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2‐07‐1 錬金の調合を試す

舞台は大神殿、聖都イスに戻ります。


(セラス、元気かな......)


 今節の初週にセラスが『挨拶なしで出掛けるかもしれない』と言った通り、セラスが属する班は第二週早々に出立してしまった。が、もう10の節も終わってしまう。


 巡回班の出立はセラスから聞いていたとおり何の式典もなく、関係者のみが集まって事務的に、準備が整った巡回班から出立していった。セラスの加わった班はその中でも一番早く、他の班より1週間も早く出立していた。


 そして、もう節が変わる。セラスが加わる班以外はすべて帰還している。帰還しても、これまた何か式典めいたものが開かれるわけでもない。出立もバラバラであったが、帰還もバラバラである。


 数日前までは戻らないセラスをとても心配していたのだが、知らせがあった。最後に立ち寄った村で何かあったようで、戻りは11の節になるという伝令が届いたという。

 特に負傷者があるとかそういう事故めいた知らせはなかったので、ナギサはホッとしたのだが、セラス大好きカエルは『大丈夫でしょうか? 何があったのでしょう? 早くお顔が見たいです~』と、知らせが来てもまったく安心していなかった。




「ナギィ~、ぼぉーっとしていると魔力を注ぎすぎちゃうよ」


 モリスの言葉にハッとする。しまった、今は錬金の調合中、空いた時間にモリスとちょっとした実験をしていたのだ。


「ごめん、セラスのこと考えていた」


「えっ、ファイヌム様のことじゃないんだ」


「ええっ! どうして?」


「だって、ファイヌム様と最近仲いいでしょ?」


(いや、待て、モリス! 何を言っている! 歳の差を考えて!)

 ナギサの意識は一気にセラスのことから、横で攪拌棒を握っている友人へと移る。


「軽く相談にのってもらったりしているだけだよぉ、そういうのないからぁ」


「ふ~ん、まぁ、いいけど。ほら、手元、かなりポーション化が進んでいると思うよ」

 モリスの視線は糸のようで、疑わしげ。だが、口から出る言葉は手元への注意である。


「これは...... 上手くいったかな?」


 器の中の液体はキラキラと輝き、少しトロリとした状態だ。ナギサは薬瓶に移す前に鑑定を試す。


 名称:ローズマリー化粧水

 カテゴリ:化粧水/薬

 効能:保湿

 効能レベル:大

 属性:なし

 特記:香りによる安静作用あり


「出来ているよ!」


「ほんとに? 鑑定も出来たの?」


 喋りながらもモリスもしっかりと調合を仕上げたようだ。ただ、上手く鑑定ができなかったようで少し不満げではある。


「うん、鑑定成功!」


「ナギ、すごいよね~ もうここまで鑑定できるようになるなんて。わたしなんか、今半分ぐらいしか鑑定内容が確認できなかったよ」


「う~ん、ファイヌム様から教えてもらった練習をしているだけだよ」

 ファイヌムに言われて日々行っている鑑定の練習。まだ試して数日だが、かなり効果的なようで、これぐらいのものであれば苦労することなく鑑定できるようになっていた。


「ほら、またファイヌム様じゃない。それと、あの方法、わたし達には無理! 多分、ナギとカエルぐらいだよ、指輪を鑑定する、なんて練習方法」


「どうして?」


「あぁぁ~、わからないかぁ...... 講義を一日受けて、魔力をしっかり使った後にあの練習は無理です。もうね、魔力切れしちゃいます!」


「あ...... ごめん......」

 ファイヌムが提案してくれたのは魔導書を鑑定すること。だが、カエルはともかくモリス達友人は魔法学をとっていない。魔導書を話題にすることがまず憚られるので、かわりに指輪─ID代わりとなっている魔道具だ─の鑑定を薦めてみたのだ。

 だが、この指輪の鑑定は魔導書に負けず劣らず物凄く魔力が持っていかれる。日中講義でしっかり魔力を使った後に、あの魔力量を持ってかれたら......


「分かればよし。で、鑑定結果は?」


「保湿効果が高くて、香りで安静作用もあるって!」


「やったねぇ。ナギから話を振られた時には、ローズマリーで何が変わる、って思ったけど、すごいよ。もう少しローズマリー、分けてもらえないかなぁ。これからの季節、コレ絶対に助かるもの」


「どうかなぁ、薬草学の先生には錬金で実験したい、って言って少量分けてもらえただけだから。それに化粧水自体の素材も用意しないとダメでしょ?」


「ああ、そうかぁ。素材集め、街の外に出たいなぁ。買うとお金が持たないし......」

 モリスは腕を組んで考え込んでしまった。



 今ナギサはモリスと二人、錬金の実習室にいる。ナギサが以前薬草園で思いついたローズマリーを使った錬金による調合を試してみるためだ。


 錬金に熱心なモリスにも声をかけてみたのだが、最初はあまり乗り気ではなかった。

 モリスは化粧水にローズマリーを加えたぐらいでは香りが良くなる程度だろうと考えていた。ナギサが『数をこなす、と思って一緒にやらない? 化粧水のレシピも相談した神官様から教えてもらえたから』と再度誘うと

『確かに。数をこなすのもいいかも』と今、ここで一緒に錬金をしてくれているわけだ。


 そして結果が考えていた以上に気に入ったのか、ローズマリーをもっと手に入れて化粧水を量産したい、などと言い出すほどだ。

 素材集めをどうすべきかと腕を組む友人の姿に何故か笑いがこみあげてくるナギサであった。





ナギサの物語にお付き合いいただいてありがとうございます。


「秋の歴史2024」に『この煌めきが手に入るのなら ~焦がれる想いの行く先は』(https://ncode.syosetu.com/n5640jo/)という短編で参加しております。魔力溜まりの浄化の辺りで少しだけ触れた、聖国の南国境から南方方面についての昔語りです。

お読みいただけると嬉しいです!


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