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ヴィルディステの物語  作者: あるかな
【第2章】

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2‐06‐10 魔力溜まり

 

「手筈どおりに」


 騎士達がスクロールを手に散開する。魔力溜まりの周りを結界で囲う為だ。浄化の影響で何が起きるかわからない為、魔力結界を展開する。魔獣対策は騎士達がそのまま行う。濃い魔力を好む魔獣は少なからずいる。これだけの魔力溜まりと浄化魔法。いくら聖国がそのような魔獣が少ないとはいえ油断はできない。


 魔力触手への対応もスクロールを使う。聖属性魔法で攻撃してもよいのだが、今は神官達の魔力消耗を可能な限り避けることを前提に全員が動く。


 神官達は結界が展開されるのを確認するやいなや、浄化を開始する。全員で一気に行うのではなく、数人で交代しつつ行う。浄化が決して途絶えることがないよう、魔力切れを起こさないようにと。




 徐々に浄化は進んでいる。だが、ここまで育った魔力溜まりは簡単には浄化されてはくれない。魔力触手を盛んに動かし、浄化されては消えていく魔力を目の前にいる神官達から奪おうと必死にその触手を伸ばしてくる。


 魔力触手が認識できるアースターや一部の神官はその様子に眉をひそめ、目を細める。だが、視えない神官達は張られた結界がはじく気配で察するだけ。見えないものに襲われ続けている心理的負担は大きく、次第に顔色が悪くなっていくのが見て取れる。




「よくないですね」


「「「! アースター様、何を!?」」」


 アースターがボソリと呟いたかと思うと、1人魔力溜まりの前へと足を進める。魔力量が多いアースターである。触手は一斉にアースターに狙いを定め襲ってくる。


 触手が視えない神官達は自分達への攻撃が止んでいることで、攻撃の的がアースターに移っていることに気付く。

 視えている神官達はアースターの無謀さに焦りと、自身が代わりに出る勇気がない不甲斐なさを感じていた。


 アースター自身は強力な結界を張っているようで、触手はすべて弾かれている。だが、触手が自身を襲ってくるのを視ているのは気分のいいものではない。


「.........」


 アースターが何か呪文を唱える。と、アースターを中心として光が爆発するかのように溢れだす。その光は周りへと流れ、騎士達が張り巡らした結界までを輝く光で満たしきる。


 その場にいる神官達も当然のごとく同じ光に包まれてしまう。光以外何も見えず、浄化魔法を継続し続けるのが精一杯である。


 結界の外で魔獣を警戒していた騎士達は、結界内が光で満たされていく状況に驚愕するも、その場の護りを続けている。


 光の奔流が結界内を満たしきり、もう一段光が眩くなったかと思うと、スッと光が消えていった。





 “魔力溜まり”は浄化されていた。





 そして、アースターは片膝と片手をついた姿勢で気を失っていた。





 △▼△▼△▼



(ここは......?)


 見慣れないベッドに、見慣れない部屋。アースターは自分がどこに居るのか分からず、しばし戸惑った。


(確か浄化をしていて...... ああ、埒が明かないから高位浄化をして......)


 情けないことに気を失ってしまったのかと不甲斐なさを感じながら、ベッドから身を起そうとする。




「もう体を起こしても大丈夫なのか?」


 アースターがいる部屋へと神官が入ってきた。



「サクスムか...... 無事、解呪できたんだな」


「ああ、お嬢さんが頑張ってくれたよ。一晩休んですっかり元通り、まではいかないが問題なく動けるぞ」


「一晩?」


「ああ、お前、まる一晩眠っているぞ」


 サクスムも半ば人伝の話だと断わりながら、浄化後に起きたことをアースターへと語ってくれた。


 魔力溜まりはアースターの魔法にて無事浄化完了。その場に居た騎士・神官とも負傷者なし。唯一アースターのみ気を失っている状態で、その後の指揮は副班長と騎士隊長が行った。


 アースターが行った高位浄化の威力は絶大で、魔力溜まり周囲に張った結界内はすべて浄化済み。茨模様が浮き出た死骸もすべて浄化されていた。ただ、まだ生存していた魔獣で呪いを受けた魔獣は、浄化では対応できずいまだ解呪されていない状態だった。

 そして、その一回り大きく林一体に張った結界内はアースターの浄化は届かなかった為、魔獣の死骸は未浄化。当然、呪いを受けた魔獣達の解呪も必要な状態だ。

 だが、とりあえずの脅威は去ったと判断し、林一体の結界を保ったまま見張りのみを置いて、一度村に戻り体制を整えることになった。


「まぁ、お前達が戻ってきた時の騒ぎは俺もまだ眠っていて知らないが、凄かったようだぞ。とにかく、昨日は見張りのみ立てて終了。で、今日は神官と騎士、二人一組で解呪と討伐、埋葬、って段取りだ」


「そうか...... 情けないな。では神官の大半が出払っている状態か」


「交代要員と見習いは残っているぞ。お嬢さん、呼んでくるか?」


「! いや、いいから、それは......」


「......たっく、お前、そういうところ弱いな。ま、いいけど。

 しかし、今回の巡回、お前がいてくれて、本当に助かった。あの魔力溜まりを見た時、もうダメだと半ば諦めていたからな」


「諦めるなよ。お前があんな状態で運ばれてきて。手を見た時、一瞬自制がきかなくなりそうでやばかったぞ」


「いや、それやめてくれ! お前が自制きかないって...... ヤバすぎる!」




「おお! 神官様、お目覚めですか。お体はもう大丈夫でしょうか? もう何と言ってお礼を言えばよいのか......」

 2人が話し込んでいると、その声を聞きつけたのであろう。村長が部屋へと入ってきた。

 そして村長の声が他の村人達を惹きつけたようで、次から次へと村人がアースターへと礼を述べにやってくるのであった。




ナギサの物語にお付き合いいただいてありがとうございます。


「秋の歴史2024」に『この煌めきが手に入るのなら ~焦がれる想いの行く先は』という短編で参加しております。魔力溜まりの浄化の辺りで少しだけ触れた、聖国の南国境から南方方面についての昔語りです。

お読みいただけると嬉しいです!


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