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ヴィルディステの物語  作者: あるかな
【第二章】

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2‐06‐6 最後の村へ

 

 ─翌朝─


 徴税作業やその他の業務も昨日中に無事に終わった。駐在神官の引継ぎも無事に終わったことを確認すると、巡回班は直ぐに次の村へと出発する準備に入る。


 昨日の解呪については村長から改めて礼を言われる。何か礼がしたいと熱心に言われるが、それは不要と断ることにセラスが手間取っていると、アースターがきっぱり「仕事なので不要です」と断ってくれた。


 そう、セラスが解呪を行ったことは駐在神官からアースターへ報告があったのだろう。昨夜の夕食の席で改めて報告を求められた。問われるままに説明を行ったが、セラス自身は解呪の呪文詠唱のみ。その後の少年の治療は他の者達が行った為、あまり報告することもなく終わった。

 アースターもそれで構わないようで「わかりました。魔力切れを起こしていないのであれば問題ありません。くどいようですが、解呪や浄化は必ず人がいる状態でおこなってください」と念を押されただけだった。



 さて、この“秋の巡回”、村にとっては“収穫祭”である。

 村は収穫物から税として農産物等を納め終わると、一年の区切りのようなものになる。“収穫祭”の名の通り、心置きなく収穫の祝いを行うことになる。


 朝食の席で、村長や村人からはもう一泊して今宵の祭りに参加しないかと誘われるが、アースターは丁重に断りをいれる。駐在神官や先日の少年達は残念そうな表情を浮かべていたが、巡回班は昼前には村を出発したのだった。



 △▼△▼△▼



 最後の村へと馬車は進む。

 セラスは今、御者台にいる。自身は手綱をとっているわけではないが、御者の補助のような役割だ。

 だが今は特にすることもなく、あれこれとこれまでの事を思い返していた。


 最初の村での解呪以外、特に大きな問題もなく、その後の村々を順調に廻ることができている。もちろん重病人がいたり、納税される予定の収穫物が足りなかったりと、ちょっとしたハプニングはあったが、予定の日数内で動けている。


 巡回行程に入ってからは狂暴化した魔獣に襲われることもない。稀に子持ちの魔獣に遭遇してしまい戦闘となったことが何度かあったぐらいで、魔獣討伐隊である騎士達はのんびりとした雰囲気を漂わせている。


 そういえば、今回魔力溜まりの大量報告はヴィルディステ聖国南部。今、巡回しているのは聖都イスに近いどちらかといえば中央より北側だ。こちらでは魔力溜まりは報告されていないようだが、何故なのだろう? 地図を見せてもらった記憶では、南部国境に近いほど多かったような...... 国境の外側は大丈夫なのだろうか?

 国境には強力な結界が張られているので、おいそれと魔獣が国境を越えて入ってくることはないと思う。だが、国境を越えてすぐに魔力溜まりがあったり、迷宮が待ち構えていたりするのはちょっと困ると思うのだが。

 そもそも聖国の南側は国がない為、あまり行き来をする商人や旅人もいない。それもあって、国境付近がどうなっているのか噂があまり入ってこないという事情もある。


 あれこれ考えても仕方がないか、こういうことは国を治める上層部の方々が考えてくださることだからと、これから向かう最後の村に意識を向ける。

 この村が終わればやっと聖都イスに帰れる。もうすぐ10の節も終わってしまうと考えれば、今回は長旅だ。早くナギに会って、たわいもないおしゃべりに興じたいと思うセラスであった。




 △▼△▼△▼


 これまでどの村でも先触れを出しているためか、村に到着すれば村長と駐在神官が出迎えてくれていた。


 しかし、今日は違った。

 出迎えどころか、村中が慌ただしい雰囲気に包まれている。


 村の門は何故か開かれていた為、広場まで馬車を進めれば、村長らしき人物が駆け寄ってきた。


「迎えにも出ず申し訳ありません。わたくし、この村で長を務めております。実は村の外に出たものが戻ってこず、捜索に出るか話し合っておったところでして」

 と、村長が挨拶もそこそこに現状の説明を始める。


「待ちなさい。話はあちらで。皆を休ませますので、その手配をお願いできますか」

 アースターが村長の話を強引に遮る。


 既に巡回を受け入れる準備自体は終わっていたようで、セラス達は馬車や馬達を所定の場所に連れて行ったり、宿泊の準備を整えたりと、いつもの作業に入った。




 セラス達見習いが馬の世話をしていると、騎士が数名やってきた。自身の馬の状態を確認したかと思うと、そのまま騎乗し、村の外へと行ってしまう。

 セラス達は説明もなく騎士達が出て行ったことに不安を覚えるのだが、ここでは聞く相手もいない。手早く作業を済ませ村の広場へ向かった。



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