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ヴィルディステの物語  作者: あるかな
【第三章】

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3‐1‐3 大神殿前の賑わい

 



 平日の午後である。

 なのに大聖堂の正門前から南へと下る大通りは、行き交う人と馬車で溢れている。

 もちろん年越しの時に比べてはいけないのだが、何のイベントもない平日の昼間でもこの賑わいである。

 やはりこの街は首都なのだと、ナギサは改めて感心してしまう。

 人混みに目を向け、目を見開くナギサに、呆れたような口調でモリスが話しかけてくる。


「何を驚いているの? もう何度か見た光景でしょ?」


「んと、だって、モリス。今日はお祭りがあるわけじゃないでしょ? でも、こんなに人がいて……」


「ここはこの街一番の大通りだよ。すなわち、この国一番の大通り、ってこと。当然じゃない。大通りにあるお店も有名どころばかりだし、大神殿の販売所だって人気が高いんだよ」


 何故か自慢げにモリスがナギサに説明してくれる。

 そんなモリスに、ゴリツィアが大神殿の正門辺りに目をやりながら、


「でも、モリス。ナギが言う通りだよ。いつもより賑わいがあるっていうか、大神殿が混雑している気がしない?」


「まぁ、確かにね。あっ、それきっと、噂のせいよ」


「噂?」


 人付き合いが苦手なナギサは、当然のように噂に疎い。

 その噂とは何だろうと、モリスに視線で問いかけた。


「モリスの村でも? わたしの村でも、村に来る行商人さんが、みんなその話でもちきりだったの」


 だが、モリスが答える前に、ゴリツィアが噂のことを口にした。

 しかも、普段は大人しく人付き合いが苦手なゴリツィアでさえも、知っている噂のようだ。

 ただし、今の彼女の言い方では“村で聞いた街の噂”らしいが。

 ナギサがゴリツィアに視線を移すと、


「うん、街から来た行商人さん達が言っていたの。『フェロニア様が大神殿に姿を現された』って」


「そうそう、それ。うちの村でも行商人さん達が盛んに話していて……そのせいじゃないかな? だって、ずーっと、お姿を見ていないわけだから。もし本当にお目にかかれるなら一目でも、ってなるじゃない」


「うん、ナギは何も聞いていないの? 春休暇中も学舎寮でしょ? 厩舎のお手伝いとか、食堂とかで噂になっていなかった?」


(驚いた。まさかローニャ様のことが噂になっているなんて)


 ——一体いつの話だろうか。

 ナギサは自身の記憶をさかのぼってみる。

 あの春宵宮での一件が終わった夜、クラーヴィアの部屋で二百年振りの再会があった。けれどあの場にいたのは、ローニャ(フェロニア)にとってごく親しい者たちだけだったはずだ。夜も更け、側付きの者たちを下がらせて行われた、ごく限られた場だったはずだ。

 その翌日もナギサはローニャに会ったのだが、あれはとても個人的なもの。あの後、ローニャは神界に戻ると言っていた。その後ナギサは個人的には一度も会っていない。大神殿に降臨したという話は聞いていないが、いずれかの礼拝時にでも、ふと姿を見せたのだろうか。


「んと、特には。厩舎でもそんな噂は聞いていないし、食堂でも別に」


「そっか。噂だけでなく、実際に見かけたなんて話がナギから聞けるかと期待していたんだけどなぁ」


 モリスの言葉に内心ドキリとするが、なんとか表情に出さないよう首を振る。


「ん、わたしは噂は疎いから……。いつも学舎内の噂、モリスやヴルペから教えてもらっているじゃない」


「うん。そうそう、わたしも今回は村での噂だから知っていたけど、学舎内や神殿内の情報なんて、モリス達はいつもどこで仕入れてくるんだろうって思っている側だよ」


「まぁ、そうだよねぇ。残念。それより、行こう! 立ち止まっていると邪魔になっちゃうしね」


 モリスの言葉に二人は頷く。三人はいつもの小物屋を目指し、活気あふれる大通りへと踏み出した。




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