2‐27‐9 想い 2
ニールに詰め寄って、事の次第を追求したい気持ちは、ここに居る者達すべてが抱えていた。
同じ神であるウーラニア然り、エクース然り、クラウス然りだ。
当然、罠に掛けられ永きに渡りこの地に縛り付けられたアダマースも、その理由が知りたい。
ファイヌムとて、この騒ぎに巻き込まれた元凶であるニール。何を考えてこんなことをしでかしたのか、是非ともその理由を語ってもらいたいと考えている。
守り人であるリナでさえ、この喜びに溢れた常春の地で、神が悲しみを招くようなことを何故したのかが知りたかった。
だが、今は口出しすべきではないと皆が暗黙の内にわきまえ、リューク達の様子を見守っていた。
「ねぇ、アダマースはどうしたいの?」
「ウーラニアよ、その問いの意味は?」
「そのままよ。ニールを許すの?」
「そうよのぉ......ブレスでも一吹き浴びせてやらんこともないが、それはあの二人の娘が許さぬであろうな」
アダマースは軽く口を開け、その口奥でブレスの片鱗を覗かせるが、すぐにそれを収めると、深く溜息をつく。
「ちょっと、ここでブレスは止めてちょうだい。でも、『仲直り』って、彼女も優しいにも程があるわよね......」
ウーラニアも肩をすくめながら軽く溜息をつく。
「それを言うなら、あの人の子も、かな? 殺されかけたのだよね? 不思議な子だな。ファイヌムも随分気に入っているようだけど、どうなんだい?」
エクースにとってナギサは、年越し時にほんの少し見たことがあるだけの少女だ。ファイヌムが馬以外で珍しくも興味を持った人の子である。今、この場で見ているだけでも、随分大人しく引っ込み思案な少女に思える。
「気に入っているというか、気になるんですよ。大人しくて、引っ込み思案で目立たないようにしているのですが、わたしとしてはとても目を引く子供で。放っておけなくて、ついお節介を焼いてしまって。気づいたら、こうやって巻き込まれていますけど。ああ、後悔はしていませんよ。蚊帳の外にいるより、知りたいですから、わたしは」
これはファイヌムが最初から感じていたことだ。何故か気になり、お節介を焼いているうちに巻き込まれた。馬以外に興味がないはずの自分が、この状況に不安を覚えながらも、好奇心で心躍らせている。
《ナギサも《女神》も、ニールを咎めないんだろうな。許す、許さないではなくて》
クラウスは思う。ナギサはニールにされたことを許してはいない。モリスを巻き込んだことで、かなり怒っているはず。だが、ナギサ自身への仕打ちについては、何故かそこまで怒っていない気がする。
皆は様々な思いを抱き、《女神》の言葉を受けて驚き固まった二柱の神がこの後どう動くのかと、固唾を呑んで見守った。
◇
「! お前はこいつを許すのか!?」
「あなたは......わたしを許してくれるのですか?」
リュークとニール、二人の声が重なる。
驚きに、リュークは声を張り上げ、ニールは静かに尋ねるように。
「そうね、許すにはこの200年は長すぎたわ。でも、ニヒルム、あなたを咎めるつもりもないわ」
「それは、どういう......」
二人の声が再び重なった。
「兄さま、わたしはナギサが言うとおり、兄さまにそんなことをして欲しくないの。そして、ニヒルム。わたしはあなたにもいてほしい。そして、ちゃんとお話しをしましょう。ナギサの言うとおりよね。ちゃんと口で言わないと、気持ちは伝わらないわよね」
《女神》はふわりと微笑むと、そっとニールの手をとり、リュークの手と《女神》自身の手を重ねた。
「ねっ、これで仲直り。でも、ニヒルム、ちゃんとお話しはしてくださいね。少なくともここにいる皆には説明してほしいわ」




