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ヴィルディステの物語  作者: あるかな
【第二章】

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267/316

2‐27‐5 視線の先に

 



「エクース様、クラウス、今の話は本当ですか!?」


 ナギサ達の傍で話を聞いていたファイヌムは、ナギサ同様《女神》の言葉に瞳を更に見開いていた。

 だが、ファイヌムの横にいる二人は、なんら表情を変えることもない。驚くファイヌムへかける言葉は至って冷静なものだ。


 《ファイヌム、落ち着きなよ》


「そうだよ。別に《女神》がリュークの妹でも、君達に何か影響があるわけでもないだろう?」


「影響があるとかそういう問題ではございません。リュークさんが国神の兄神と考えると、あまりに恐れ多いのですが......」


 ひたすら驚いているファイヌムへ、エクースがもう一言、驚きの事実を告げた。


「まぁ、だけどこのこと、実は他の神々も知らないことなのさ」


「! なんで!」

 もうファイヌムは驚きにお腹いっぱいである。




 ——えっ、今、あちらでエクース様が言っていたことって、どういうこと?

 ファイヌム達の会話が漏れ聞こえ、ナギサもエクースの言葉に疑問を持つ。何故わざわざ神々の中で、兄妹であることを隠す必要があるのかと。


「気になるかしら?」

 ウーラニアの言葉が響く。ナギサとファイヌムに向かっての言葉であろう。

 ナギサとファイヌムはウーラニアに視線を合わせ、どちらともなく頷いていた。


「すごく単純な理由よ。雑な言い方になるけれど“男神除け”ね。勝手に二人が恋人同士だと思わせて、勝手に諦めてもらっていたの」

 ウーラニアはそう言うと、肩をすくめている。


 ——なるほど。とてもわかりやすい理由だ。カモフラ用ということか。って、《女神》様はそこまでモテていたの?


「二人ともよく言い寄られていたのだけど。リュークはこの性格だからうまくかわせるし、ちゃっかり言い寄ってきた相手と付き合ってもいたわ。でも、彼女はね。優しいから上手く断れないのよね」


「ウーラニア! そこまで! それ以上は説明しなくてもいいから。とにかく、ゴメン、ナギサ。内緒にしていて」


「ええ、本当に兄さまのこと、黙っていてごめんなさいね。ファイヌム、あなたにもわたしの兄が迷惑をかけているようね」


 リュークは、ウーラニアの言葉を余程ナギサに聞かせたくないようで、ナギサをより深く抱き寄せている。

 《女神》は柔らかな笑みを浮かべ、ナギサとファイヌムへ感謝と謝罪の言葉を述べた。




「なるほどのう」


 賑やかしい場の中へ、アダマースの深く低い声が響いた。


 アダマースは目の前の会話を黙って聞き、自身が囚われていたこと、神界と人界で起きていたことを、頭の中で一人整理していた。すべての中心にあるのは、《女神》の名前。どうやら己は、その名前を隠すためにニヒルムに利用されたようだと理解した。

 加えて知らなかった事実も一つあった。リュークと《女神》が兄妹神であること。これは見事に二人に騙されていた。リュークは想い人——《女神》が既にいるのに、小さき人の子にまで懸想していると呆れていたのだが、どうやらそれは違ったようだ。


「すべてはあの“アルタ・ルブラ”を隠すため。わしは体よく利用されていたというわけじゃな。のう、神ニヒルムよ」


 アダマースの視線の先に、彼がいた。

 身動き一つせず、こちらに顔を向けている。

 まるで急に時を止められたかのように、歩いている途中で動きを止めてしまったような不自然な姿勢だ。

 表情からは何も読み取ることができない。

 だが、その琥珀色の瞳は、なんの感情も込められていない綺麗なガラス玉ではなく、狂おしいほどの熱情が燃えるものだった。



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