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ヴィルディステの物語  作者: あるかな
【第二章】

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265/316

2‐27‐3 訪れた者達

 


「ちょっと! リューク! こんなところまで呼び出して。もう、「間違いだった」なんて言ったら怒るわよ!」


「ウ、ウーラニア、落ち着いて......。ほら、彼女、君の大声でも辛そうなんだから」


「エクースは黙って! もう、一言ぐらい言わないと気が済まないわ」


 突然の声に、皆の視線が集まる。

 そこに居たのは美しい男女三人。

 ナギサとファイヌムは驚きで言葉も出ない。

 クラウスとアダマースは、気づいていたのか、それとも何か知っているのか、あまり驚いているようには見えない。


「やぁ、ウーラニア、早かったね」


 リュークがそのうちの一柱、女神ウーラニアに話しかける。

 女神ウーラニアの剣幕とは正反対に、リュークは至極落ち着いた表情だ。


「もう、急いで来いって言ったのはあなたでしょ! 私一人では彼女を連れてこられないから、エクースにも手伝ってもらったのよ!」


「悪い、悪い。でも、急いで来てもらった甲斐はあると思うよ。ほら、気づかない?」


「えっ、それって......。本当に......!?」




 ◇



 《えっと、クラウス......》


 《なんだい、ファイヌム》


 《わたしは今日、どれだけ驚けばいいんだい?》


 ファイヌムは突然現れた三柱の神を見つめたまま、クラウスへ尋ねた。

 だが、その問いに答えてくれたのは、久方ぶりに聞く声であった。


「まだまだこれからもっと驚くと思うよ、ファイヌム」


「エクース様! お久しぶりです。ご報告やお聞きしたいこともございますが、今は何よりも、失礼ながら、何故、この場所へお越しになられたのでしょうか?」


 ファイヌムは、いつの間にか自身の横に立つエクースへ慌てて礼をとる。

 エクースは馬の神、ファイヌムがいくつか持つ加護や特殊能力アビリティも、この神が授けてくれたものだ。


「あそこでうるさくしている女神ウーラニアが言っている通り、お手伝い、かな。『あなたのところの子も関わっているのだから、手伝いなさいよ!』って、半ば強引にね」


「! 申し訳ございません。わたしが不用意に......」


「アハハ、気にすることはないよ。人の身で、あのリュークに脅されて、それに逆らうのは無理だとわたしは思うよ。それに、ウーラニアに君のことを口実に使われなくても、《女神》を手伝うのは当然だからね」


「あの......やはり、あのお方は《女神》様でいらっしゃるのですね?」

 ——そう、一柱、酷く辛そうに立っている女神。大神殿で見かける絵姿や彫像に瓜二つだ。だが、国神である《女神》が人界に降り立つことはない。少なくとも、己の記憶の中では一度もなかったことだ。

 それなのに、今目の前に、酷く衰弱した状態でいらっしゃる。一体何が起きているというのだ?


「ん? 君達の国神だよ。何かおかしいかい?」


 《エクース、ダメだよ。人の子らは忘れているから。覚えている者は本当に一握りしかいないんだから。僕とリュークも、この件はファイヌムにまだ明かしていなかったからね》


「あぁ、そうだったね。悪かった、ファイヌム」


「いえ、というか、今のお二人のお話の意味が理解できないのですが」

 エクースに謝られても、ファイヌムは何故謝られているのかすらわからない。ファイヌムは、答えを求めるように、エクースの顔をじっと見つめた。


「ねぇ、ファイヌム。あそこで騒いでいる女神はわかるよね?」


「? はい、ウーラニア様ですが......」


「わたしは?」


「......エクース様、何をおっしゃりたいのですか?」


「じゃぁ、聞くけど、何故彼女だけ《女神》なんだい?」


(あっ、名前が......)


「彼女は誰かに名前を奪われた。彼女自身もわたし達も、君達人の子らも誰も彼女の名前が思い出せない。名を封じられて力が削がれ、彼女は人界したに、もはや降りられなくなってしまったのだよ」


 エクースから明かされた事実に、ファイヌムは驚きで声を出すどころか、言うべき言葉も浮かばなかった。




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