2‐26‐15 ニール
——何故こんなに胸騒ぎがする......。
ニールは娼館を出た後、一人夜の街を彷徨っていた。
特に行先があるわけでもなく、ただ思考の渦に沈みながら歩いていた。
明るく華やかな花街から、下町へ。
夜に出歩くには危険な場所へと足は向く。
特に意図して歩いているわけでもないが、滅入る気持ちに引きずられるように、足は自然と陰鬱な場所へと向かっていく。
——リュークは、何故あの人の子に執着するのだろう。いつものように、僅かな時を過ごす恋人を作ればいいものを。何故、それをせず、まだ子供であるあんな人の子に......。
『もっと、誠実に接してください』
——あの人の子も変わっているといえば、変わっている。僕に殺されそうになったのに、面と向かって意見してくる。
——いや、そんなことよりも。あの人の子は何故気づいたのだ。この200年、誰も気づかなかった。それなのに、突然現れて答えを突き付けてきた。
考え歩くうちに、貧困街の奥深く、危険な場所へ入り込んでいた。
気づけば目の前に人が立っていた。後ろにも一人。ニールは娼館帰りの身なりで、そのまま歩き回っていたのだが、無言で立つ男の手には小刀らしきものが見えた。
(ほら、人の子なんて、どうしようもないじゃないか......)
人の目から見れば、ニールは何も手を出していない。だが、ニールを挟み撃ちにしようとしていた者達は、口の端から血を流し、その場に倒れていた。
ニールは深く溜息をつくと、後ろを振り返ることなく歩き去った。




