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ヴィルディステの物語  作者: あるかな
【第二章】

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2‐26‐4 目指すのは2

 


 洞窟と言えば、迷宮。

 元世界での刷り込みが強く、この世界で迷宮の存在を知ってからは、そのイメージがより強固なものになっていた。


 だが、講義や書物で学んだ限り、迷宮とは魔力溜まりが育ち、核を得て生まれるもの。この洞窟が迷宮であれば、汚染され淀んだ魔力を感じるはずだが、この洞窟からはそうした気配はまったく漂ってこない。

 横を見ればファイヌムも特に警戒した様子はなく、ただ突然のように現れた洞窟に驚いているようにしか見えない。


 ここまで来て気づいたのだが、どうやらこの洞窟は特別な結界で入り口が隠されていたようだ。

 今それを通り抜けてきたので、振り返れば結界を認識できるが、歩いてきた時には遠目からではまったく気づかなかった。

 結界があればある程度認識できると、少し自信を持ち始めていたナギサにとって、通り抜けるまで気づかなかったことは少しショックだった。


「んと、リナ。ここが目的地?」


 ここで落ち込んでいても仕方がないと、ナギサは気を取り直してリナに問いかけた。結界まで張って他者を避けているような洞窟。この奥にその“誰か”が隠れ住んでいるのだろうか。


「ここに“彼”がいる。会って欲しい」


 コクリとリナは頷くと、ナギサの手を引き中へと足を進めようとする。

 このままリナについていくのも躊躇われ、ナギサは先程気になったことを尋ねてみた。


「リナは、ここに直接転移できたんじゃないの? その方がずっと早いと思うけど」


「結界が弾く。ナギサと散歩したかった」


 ——なるほど、結界......って、わたしと散歩?


 リナの言葉にナギサが驚き固まっていると、横からファイヌムの笑い声がする。


「ククッ、ナギサ君、懐かれているね」


 上を見上げると、ファイヌムが何とも楽し気な表情で笑っている。

 何がそんなにおかしいのかと、ナギサが首をかしげると、


「いや、リナ君はナギサ君のことが好きなんだよ。友達、って言えばいいのかな。だから、ほら、一緒に遊びたいとか、そんな感じじゃないかな」


 ——友達......か。

 なんだか不思議な気分だ。

 元いた世界では、自分の白髪も紅い瞳も、ただの奇異な飾りだった。興味本位で近づいてくる者はいても、心を通わせることはなかった。まるでガラスの檻の中に閉じ込められているみたいに、世界から切り離されていた。でも、この世界では違う。セラスも、カエルも、そしてリナも......。皆、ナギサをナギサとして見てくれる。心が通じ合う温かさを、初めて知った。こんなふうに誰かの手を握り返せるなんて、信じられないくらいだ。


「リナ、ありがとう」

 ナギサはリナと繋ぐ手をギュッと握り返して、微笑んだ。


「? それより、早く行こう! 彼が待っている」


 リナは、ナギサに何故礼を言われるのかわからないのだろう。一瞬、キョトンとした表情でナギサを見つめ返す。

 が、余程その“彼”にナギサを会わせたいようだ。あまりにもぐいぐいとナギサの手を引っ張るので、ナギサとファイヌムは顔を見合わせ、軽く頷き合うと、リナに手を引かれるまま、洞窟の中へと足を進めるのだった。



 ◇



 洞窟の入り口付近はまだ明るくて、ナギサは足元の硬い砂地を確認しながら進むことが出来た。洞窟の奥から何の物音もせず、耳を澄ましても、自分の衣擦れの音以外は聞こえない。だが、緩くカーブを描く道を進むと、背後の光が遠のき、すぐに何も見えなくなってしまった。

 どこまで奥深いのか、横に続く道か、下へ下るのか。目を向けた先は真っ暗で、どこまでも暗闇が広がっていた。


 ——何も見えない......。


 外の明るさに慣れた目には、暗闇はより暗く感じる。このまま進めば、足を踏み外すかもしれない。少なくとも暗闇に目が慣れるまで、しばらく先に進むのは控えようと、ナギサは立ち止まる。

 ファイヌムも同じことを考えたのか、数歩遅れて立ち止まった。


 急に足を止めた二人が気になるのだろう。リナがぐいぐいとナギサの腕を引っ張るのだが、流石に手を引かれていても、足元さえ見えないような暗闇では、先に進むのは躊躇われる。


「リナ、リナはこの暗闇でも足元が見えるの? わたし達は真っ暗で足元が全然見えないの。お願い、せめて、目が慣れるまで待ってほしいな」


 ナギサがそうリナに頼んでいると、周りがフッと突然明るくなる。


「えっ?」


 ナギサとリナが驚いていると、目の前に光の珠が差し出された。


「流石にわたしもこの暗さは辛い。ナギサ君、この魔法はまだ知らなかったのかい?」


 ファイヌムであった。よく見れば、その光の珠はファイヌムの空いた掌の上に浮かんでいる。ナギサが掌の魔法で造るものと似ているが、ファイヌムのそれは周りを明るく照らすように柔らかな光を放っている。


「んと、掌の魔法とは違いますよね?」


「ああ、似ているけどね。戻ったら良い本を教えてあげるよ」


「本当ですか! ありがとうございます」


(ちゃんと戻れるのかわからないのに......)


 ふと、ナギサは思ってしまう。

 何故だかわからないけど、戻れると思っている自分がいる。だから、ファイヌムの言葉にも素直に反応してしまった。

 ニールに襲われた時は、戻れる気がまったくしなくて、ただただ不安だった。だけど、今回はファイヌムがいることも大きいのだが、ちゃんと戻れると安心している自分がいて、不思議な気がしてしまう。


 ——最悪でも、門を探せば戻れる。それに、リナがいるのだから。




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