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ヴィルディステの物語  作者: あるかな
【第二章】

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245/317

2‐26‐2 春宵宮、再び

 


 ファイヌムは、ただただ驚いていた。

 視界を埋め尽くす美しい花々に青々とした草や木、そして陽光をきらめかせながら流れる小川に、ファイヌムは目を見張った。

 軽く上を見上げれば、どこまでも蒼く済んだ空と、緩やかな風に舞う色とりどりの花びらに驚きを深くする。

 柔らかな日差しが温かく降り注ぎ、風に運ばれる花々の香りが心地よく鼻腔をくすぐる。


 ——ここは......


 確かあの時、ナギサの肩に手を置いた時だった。

 突然視界がぐにゃりと歪み、一瞬何も見えなくなった。

 そして、今薄っすらと視界が戻ってきたのだが......。


 今、自分はナギサの肩に手を置いたまま、見慣れない美しい土地に立っている。

 そのナギサは驚きよりも困惑といった表情を浮かべ、横でナギサの手を握るクストス・サケルを見つめている。


 先程の会話から考えれば、ここは異層——春宵宮なのだろう。そして、この見知らぬ少女リナ——クストス・サケルがわたし達二人を連れてきた。

 何をどう尋ねればいいのか。そもそも、ナギサに尋ねればよいのか、それともこの少女になのか、それすらもわからない。


 ファイヌムが混乱した頭の中で考え込んでいると、困惑顔のナギサが、横に立つ少女リナに尋ねかけていた。


「リナ、ここって......」


「わたし達のところ、だよ」


「ん、春宵宮だよね。でも、どうして......」


「あなたに見て欲しい。会って欲しい」


 リナの言葉に、目を見開き驚く様子をみせるナギサ。だが、この二人のやり取りは、ファイヌムをも驚かせていた。


 ——誰かにナギサを会わせる、だと。まさか、例の神では......?


「んと、リナ。会うって誰に?」


 不安気な声でナギサがリナに問い返す。恐らく、ナギサも自分と同じ不安を感じているのだろう。


「会えばわかるよ。行こう!」


 なんだろう、リナとナギサの会話は、かみ合っているようで、まったくかみ合っていない。

 横で聞いていると、非常にもどかしくて口を出したくなる。

 だが、自分が口を挟んでも、リナはきっとまともに取り合わないだろう。彼女の眼差しは、ひたすらナギサだけを見つめ続けているのだから。


 ファイヌムとナギサの困惑を他所に、リナはナギサの手を取ると、軽やかな足取りで歩き始めた。

 慌ててファイヌムはその後を追うのだが、ちらりとも気にされず、やはりリナにはファイヌムは目に入っていないようだ。


「ファイヌム様、手を繋ぎませんか?」


 ナギサの横に並んで歩きだして、直ぐ。ナギサが意外な言葉を口にした。

 ファイヌムが見る限り、ナギサは不安そうな様子は見せていない。先程、リナの『会わせたい』の一言には、不安気な様子をみせたが、今はまったく普通に景色を楽しみながら歩いているように見える。


「どうしたんだい? 何か不安なことでも?」


「んと、リナの動きがみえなくて......。また、急に転移でもされたら、ファイヌム様とはぐれてしまいそうで」


 ——それは考えていなかった。確かに、ここでまた転移されたら置いてきぼりだ。


「じゃぁ、お願いしようかな。リュークさんに後で怒られそうだけど」


「? どうしてリュークがここに出てくるんですか? それに、怒らないと思いますよ」


 首を傾げるナギサの表情は、心底不思議そうだ。これはリュークが可哀想かもしれないと思うのだが、ここでその話をしても意味がない。


「ハハッ。じゃぁ、お言葉に甘えて、手を繋がせてもらおうかな?」


 ——素直に後でリュークさんには怒られておこう......。




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