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ヴィルディステの物語  作者: あるかな
【第二章】

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2‐16‐4 気になる霧 1

 

「おはよう、ナギ。昨日は少し残念だったね。モリスはあの後大丈夫だった?」


「ん、おはよう、カエル。大丈夫だと思う。あの後、時間がまだあるからって、学院まで錬金に行くって言っていたよ」


「はぁぁ、モリスは逞しいなぁ」


 カエルの表情は驚き半分、呆れ半分といった表情だ。

 今から二人は魔法学の講義。まもなくマグナルバもやってくるであろうという時間だ。

 昨日のことを二人で思い出して、ああだこうだと言っているうちに、いつの間にかマグナルバが講義開始を告げていた。




 講義が終わり、いつものごとくナギサとカエルが食堂に向かおうとしていると、マグナルバから声をかけられた。


「マグナルバ先生、何かありましたか?」


「いや、ナギサ宛に工房からの伝言だ」


 小首をかしげマグナルバに問い返すと、意外な言葉が返ってきた。

 何かと思えばスクロールが欲しいという。しかも、工房に来てくれれば作業場とスクロール素材は用意するとの追加の伝言まであった。

 妙に好待遇な申し出にナギサが驚いていると、


「ああ、予備的に数が欲しいらしい。最近また霧が出ているようだから、そのせいだろうな」


「「霧!」」


 ナギサとカエルは思わず顔を見合わせた。霧と言えば昨日の林、というか、湖。二人とも頭の中には昨日の景色が浮かんでいた。


「なんだ、お前達。林のほうにでも行ったのか?」


 ナギサとカエルは昨日のことをマグナルバに話した。ナギサ達6人は採集と狩りを目的に林に行ったのだが、湖面が霧に覆われ、その霧が林や周囲にも漂っていたため、結局、馬を放した場所で少ししか採集を行えなかったことを説明した。


「なるほどな。工房の者達もお前達と同様だろうな。ただ、行き慣れている分、いつもと違う場所に迷い込んだ時、そのスクロールがあれば助かるのだろう」


 言われてみれば納得である。工房の神官達にとっては、仕事としての採集である。道も採集場所もある程度決まっているはず。だが、何かで夢中になって道をそれてしまう時もあろう。そんな時、あの霧では少々困ったことにもなろう。保険としてのナギサのスクロールは確かに役に立ちそうだ。


「先生、採集時に神官様は魔獣に襲われないのですか? 僕達は昨日も魔獣に寄ってこられたのですが」


 ナギサが一人スクロールの使い道で納得していると、カエルがマグナルバに質問を投げかけていた。

 このカエルの疑問は、実はナギサも聞いてみたいと考えていたこと。工房の神官だけで採集は大丈夫なのだろうか? 野鼠程度ならコーマと結界でなんとかなりそうだが、先日の野豚レベルの襲撃は対応できないのではと。


「コーマと防御結界で対応するのが基本だな。ああ、あと二人以上で行く決まりだ。対処できないときは“緊急の印”を使うようだが、あまりそれは聞いたことがないな」


 “緊急の印”は信号弾のような魔法だと聞いている。危険・緊急・救助要請、そんな時に使う魔法だ。ただ、この魔法はスクロールを予め用意して、状況に合わせて使うことが多いらしい。


 だが、今のマグナルバの話からすると、ナギサとカエルが遭遇した魔獣は、前回も今回も少し多すぎるのではないだろうか?

 前回など、ひっきりなしに襲われて本当に大変だった。今回も霧の中、林から出てきてまで襲ってくるのだから、たまったものではない。

 そのことをナギサがマグナルバに零すと「お前達二人、魔力量がかなり多いからな。そのせいだろう」と、さも当たり前といった雰囲気で流された。


「それよりもお前達。霧には気を付けるように。過去には、迷い込んで出てこれなくなった者もいると噂に聞くからな」


「「えっ!」」


 マグナルバの意外な言葉に、またしても二人は顔を見合わせてしまう。


「噂だ。う・わ・さ。だが、あまり良い話は聞かないし、湖や林近くの霧は危険であることには変わりないからな」


 だが“火のない所に煙は立たぬ”と元世界では言う。この噂も何か元となる事件があったはずなのではと、ナギサ一は人考え込んでしまう。カエルも少し何か考えているようである。

 が、マグナルバの「時間をとらせて悪かったな。食堂に行くのだろう?」の一言で、慌てて食堂に向かう二人だった。




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