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ヴィルディステの物語  作者: あるかな
【第二章】

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2‐16‐3 素材を求めて林に向かうが

 


 ローズマリーの化粧水完売の話を受けて「聖の曜日に林まで素材採集と狩りに行く」と、モリスは非常にわかりやすく息巻いていた。当然ではあるが、すぐさま皆に話を持ちかけていた。

 だが、昨日の今日ではないが、流石に週末は皆予定がある。6人全員が揃うのは無理。ということで、1の節最終日という案は流れた。


 ナギサ自身も洗濯場の手伝いを休むのは若干憚られた。急すぎる。前回、直前に休みたいと洗濯場にお願いした時、ほんの少し担当神官の返事に間があった。きっとそれはそういうこと。

 何度も急に休まれれば、人員が手当てできず困ってしまうことは簡単に想像できる。そのようなことを繰り返せば、心象も悪くなってしまうだろうと考えると、やはりナギサには今週末に急に休みを入れるのは避けたかった。


 それでも出来るだけ早くと皆が望んだこともあり、2の節の最初の週末に実行することが決まった。




 そして当日。

 今回、移動用の馬はナギサとウルサスが厩舎まで借りに行った。

 最初に手を挙げたのはウルサスとヴルペだったが、予め厩舎にナギサからお願いしてあるから、という理由を付けてヴルペと代わってもらった。


 ナギサには、前回のクラウスのわがままが頭にあった。あの時は本当に辟易とした。頭の中でずっと抗議の愚痴を聞き続けるのは、もう二度と御免だ。

 厩舎に予め頼んであるというのは本当なのだが、念のためだ。クラウスはリュークと出かける予定と聞いているのだが、万が一、クラウスが厩舎に居た時が恐ろしい。抗議の愚痴がどれほど酷いものになるか...... ん、考えたくもない。


 厩舎から馬を連れ出す時、ファイヌムから『クラウスはちゃんと出かけているよ』とこっそり耳打ちされてホッとしたナギサである(クラウスが知ったら文句を言いそうだが)。




「今日も素材が高く売れるといいのだけど。先回は本当に助かったし」


 モリスの心の声が漏れている。

 馬の背に揺られながら、大神殿の敷地内の奥までゆったりと進んでいる。6人ともまだ子供で、借りた馬も子供用の小型サイズ。そんなに速く移動はできない。のんびりと馬上で「今日はどうする? その後は?」と、まるで既に採集が終わったかのような会話で盛り上がっていた。


「流石に2の節だけあって寒いわね」


「ああ。コーマのおかげで自分は暖かいけど、ここまで寒いと魔獣がいないかな?」


「薬草の採集も出来るかしら?」


「ん、工房の神官が採集に行っているって聞いたから、ある程度は大丈夫じゃないかなぁ」


 聖都イスは結界のおかげで、雪が降りづらい、寒さがそこまで酷くないと聞いたが、やはり寒いことには変わりはない。ウルサスが言うように、コーマで体は暖かいけれど、この空気の冷たさは。こうして会話している息も白い......


「?」


「ナギ、どうしたの?」


 急に黙り込むナギサにカエルが心配して声をかける。


「んっと、霧が出ていない?」


 そう、ナギサ達が吐く息が白いのは見ての通り。だが、足元を見ると、薄っすらと白いもやが馬達の足にまとわりついているのが分かる。

 その白いものを辿って前方を見れば、林の方向、いや、湖全体が霧に覆われていることに気付く。その霧は深くはないようだが、昼間であることを考えれば、かなり濃くて重々しい霧にも思える。


「どうする?」


 ウルサスの一言で、一旦皆が立ち止まり、林方向を確認する。

 皆も霧がそこまで深いとは思わないようで、とりあえず湖まで、先日馬を放した場所まで行ってみることになった。




 先日の場所に到着した。ここは湖のすぐ横だが、日中ということもあり、遠目で見た時ほど霧は濃く見えない。足元が白いもやに包まれているのは確かだが、完全に見えなくなるほどではない。



 林の入り口も霧があまりなく、先日使った獣道もこの場所からははっきりと見える。若干靄っている程度だ。


 しかし、湖面は違っていた。霧が非常に濃いためか、水面がはっきりと見えない。先日見た美しい鏡面のような輝きは、今日は望めないようだ。


「モリス、どうしたい? 僕は林の中に入るのは危険だと考えるけど」


 ざっと辺りを見回したカエルがモリスへと問いかけた。今日ここでの採集を一番望んでいるのはモリスだ。

 他の者はいろいろ思惑があってモリスに付き合っている形だ。

 ヴルペとウルサスは狩り、ゴリツィアは素材等の販売益、カエルは......よくわからないけど、恐らくナギサと同じで魔法の練習だと思われる。


「......」


 決心がつかないのか、モリスは黙り込んでいる。ナギサは馬達にこの場の状況を聞いてみた。


《ねぇ、みんな。この霧って何か問題ある?》


《林の中に入るのはお勧めしない。湖に近づくことも》


《危ないと思うよ。それより、僕、少し疲れたから、休ませて》


《霧は霧だよ》


 6頭の馬はそれぞれ勝手なことを言っている。疲れた遊びたい、といった戯言は置いておくとして、馬達が放つ雰囲気は「やめておけ」というもの。

 これぐらいの霧であれば、目印の魔法を使えば帰り道に困ることはないだろう。だがそれは全員が逸れずに行動できた場合。モリス辺りが採集に夢中になって、一人明後日の方向へ行ってしまうという確率を考えると、賭けに近いものがある。

 やはり林の中に入るのは止めておいたほうがよさそうである。


「モリス、無理すると迷子になりそうだよ。この辺りで少し採集だけする、ってことにしない?」


 俯き黙り込むモリスへカエルが続けて声をかける。


「ん、馬を休ませないといけないから、少しだけこの辺りで採集をしよう」と、ナギサもカエルの言葉を後押しする。


 ウルサス達も同意見のようで、見れば3人とも頷いている。


「......そう、だよね。無理しても意味ないもんね。よし! 今日はこの辺りで採集するだけにしよう!」




 △▼


 その後、気持ちを切り替えたモリスは精力的に採集を行っていた。

 存外に気付いていなかった薬草類がそこそこ見つかり、それはそれで嬉しい誤算だった。


 そして当然といえば当然なのだが、魔力量が多いナギサとカエルを狙って、林から小物がわざわざ出てきた。



 寒さのこともあり、すっかり気を抜いて採集をしていたナギサ達である。突然の野鼠の出現にモリスとゴリツィアがとても慌てふためいたのはちょっとした事件だった。流石にその後はナギサとカエルで結界を張り、ウルサスとヴルペが寄ってくる小物たちを狩ったりと、意外にも採集と狩りの体を成した一日となった。





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