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ヴィルディステの物語  作者: あるかな
【第二章】

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2‐15‐2 目印の魔法2



 脇道にそれてしまったが、今日の目的は目印の魔法を完成させること。

 ナギサは気持ちを引き締め魔導書を開いた。


 初めて見る頁だ。説明書きには目印の魔法とある。

 どうやら第一段階としての魔法は出来ているようだ。


 そういえばこの魔導書、いったいどういう造りなのかわからないが、目的の頁がすぐ開く。今も目印の魔法のことを考えていたからだと思うが、当然のようにその頁が開かれた。どうやって造ればこうなるのか、魔法付与(錬金?)はどうやって行うのか。気になることは満載なのだが、100%の鑑定すらできない魔道具相手にいろいろ考えても仕方がないと、本来の目的へと頭を切り替える。


 呪文構成を調べ、口唇阻害を組み込む。他にも細かなところをチェックして、呪文を詠唱する。次は無詠唱で。何度かこれを繰り返し呪文を完成させた。


(やっと本当に出来た!)


 ナギサは呪文が完成したことがとても嬉しくて、大声を上げたい気持ちになるが、なんとかそれを抑え込む。人はいないはずだが、執務室を利用している先生達や、ナギサのように何か理由があって学舎内に入っている学生もいる。

 ここで大声をあげて騒いでいるのを見られたら、恥ずかしくて仕方がない。(部屋自体に防音結界が張られているのだが、今のナギサは失念している)


 完成した喜びで一人表情を崩し、鼻歌混じりで講義室中を歩き回る。当然、目印の魔法を使いながら。わざとよろよろ歩いてみたり、スキップしたり。マーカーも無属性だけでなく、聖属性や無難な水属性を使ってみたり。

 いくつもの目印と足跡が部屋中に溢れて、異様な感じである。


 部屋中を歩き回り、流石に気分も落ち着いてくる。そうなると部屋の状態が見えてくるわけで、これはやりすぎかと、一つ一つ指定ながら消去していく。

 消去も最初呪文に組み込むのを忘れていたものの一つだ。

 目印なので、敢えて消さないと中々消えないのだ。つまりナギサの魔力の痕跡がずっと残るということ。

 ここ最近の様々な人からの注意事項を思い返すと、これは流石にマズイと思い至る。自動消去も考えたが、どれだけの期間なんて目印をつける時にわかっていることのほうが少なそうなので、この案は早々に却下。

 手間だが、術者が指定して消す方法を組み込んでおいた。




「出来たのか?」


 ナギサが半分ほど消去し終わった頃、マグナルバがやってきた。


「聞くまでもないか」


 ナギサはマグナルバの声に、振り返る。若干呆れ顔にも見えるが、部屋の様子から現状をおおまかに把握しているようだ。


「この様子では、終わるところか?」


 ナギサは部屋を見回すマグナルバのもとに駆け寄ると、


「先生、きてくださったのですか! 一度、見ていただいてもいいですか?」と半ば強引に頼み込む。


「それは構わないが、大体この雰囲気でわかるぞ」


 マグナルバはまだ部屋の半分ほどを埋め尽くす目印と足跡を眺めながら呟いた。




 マグナルバの小さな呟きは聞こえぬふりをして、部屋に残った痕跡をまずは一気に消去する。


「では、見ていてくださいね」


 ナギサはマグナルバにそう告げると、マグナルバの元から部屋の反対側まで歩いていく。そして、目印が表示されるようにと静かに念じてみる。


 もやっとした靄のようなものがマグナルバの足元に現れる。

 光珠というほどでもなく、霧のような白っぽい空気の塊だ。


「ほぉ、これがナギサの目印か」


「はい。基本は目立たないように無属性にしました。今は足元に設置したのですが、やろうと思えば、木の上などの高所にも設定できます」


 属性指定のこと等あれこれ説明を続けながら、次にナギサは足跡を表示させる。マグナルバの元から今ナギサが立っている場所まで、歩いた通りに足跡が現れた。続けて聖属性を使って設定をしてみたり、マグナルバがいるならばと火属性も目印で使って見せた。


「これはいつまで残る目印なのだ?」


「消去しなければ、魔力が残っている限り。自動で消去も考えたのですが、適切な期間がわからなくて。必要に応じて消去を起動させるようにしました」


 ナギサの説明にマグナルバは相槌を打ちつつも、いろいろと確認をしてくる。

 そんなやりとりをしばらく続けていると、マグナルバが「せっかくだ。魔導工房で登録をしてくるか」と提案してきた。


「登録ですか? 既にある魔法なのでは?」


「別にあってもいいだろう? 手順というか、手続きを知っておくことも大切だぞ。おまえ、そのうちいろいろ造り出しそうだからな」



 マグナルバの言い方がなんだか気に入らない。まるでナギサが問題児で、何やらやらかしているような雰囲気ではないか。ちろりとマグナルバを見上げれば、口の片端を上げたいつもの皮肉気な笑みが返ってきた。




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