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ヴィルディステの物語  作者: あるかな
【第二章】

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126/314

2‐14‐8 石

 


 ──その夜、大神殿内の一室にて



「お呼び立てして申し訳ありません、アウルス殿」


 ウォーリは立ち上がると、アウルスを奥のソファへと案内する。


「いえ、我が屋敷内のことで、わたしが相談を持ち掛けたわけですし」


 アウルスが腰も低く挨拶を返してくる。


「堅苦しいのはやめましょう。この4人しかいないのですから。それにアウルス様の屋敷の問題と言いますけれど、これは聖都イスの問題でもありますわ。汚染されたものが街の中に存在しうる。本来ならありえないことですもの」


 クラーヴィアがふわりと笑みを浮かべながら、アウルスの前にお茶を用意する。


「ああ、昨日知らせを受けた時は驚いた。まさかと思ったが、今朝ナギサとモリスからも確認がとれたしな」


 マグナルバの言葉にアウルスのカップを持つ手が止まる。


「昨日の書状だけで、彼女らに確認していただけたのですか」


 マグナルバは今朝方の話を3人に伝える。まずはモリスとナギサ二人からの話。そしてナギサ一人から聞いた話を。


「待て、マギー。それは、ナギサは魔力探知を持っているということなのか?」


「ああ、ウォーリ。《女神》様に賜ったそうだ。わたしも驚いたのだがな。まぁ、本人が一番戸惑っていたから、少し講義もしておいた」


「なるほど、それでいろいろわかりました。あの少女がどのように判別したのか非常に気になっておりましたので。魔力探知に加えて、直近で同じようなものを浄化している。それは確かに気を引いたでしょうね」


「ところでアウルス、件の石は?」


「ああ、もちろん。こちらです」


 マグナルバに促され、アウルスが石を取り出す。薄桃色の綺麗な石だ。クラーヴィアが可愛い石だと手に取って眺めている。ウォーリから見ても綺麗な石だと思える。これなら部屋に飾ろうと考えるかもしれない。


 石を見たマグナルバは一言「同じだな」とだけ。何か考え込んでいるようだが。


「それと、石を我が家に持ち込んだ者が判明しました」


「随分とあっさりと見つかったな」


 アウルスの言葉にウォーリは少し驚いた。使用人も含めて考えればかなりの人数。確認するといっても手間なはず。昨日の今日ではないか。


「それが、お恥ずかしい話ですが、孫娘が街で買ってきたものでした」


「アウルス様の屋敷は結界が」


 クラーヴィアが思わず声をあげる。ウォーリも驚きに声をあげそうになったのだが。いやそんなことより、アウルスの屋敷の結界はそれなりに強固なはず。いったいどうやってそれを超えたのだ?


「わたしの屋敷の結界もそうですが、それ以上に街の結界です。実は孫が石を買ったという露天商にも会ってきたのですが──」

 アウルスは今日街で露天商をあたり、石について聞いた話を3人に伝える。街の外から素材と一緒に持ち帰ったこと。この石については同じようなものを既にいくつか売り切ってしまったことを。


「その露天商、知っていて売っていたのだろうか」


「そう考えたほうがよいかと。話をした限りでは目利きの素材商という感じでした。だが、汚染された石を持ち込める手段を持ち、どうにか誤魔化して売ることができる人物です」


「街の結界は魔封箱でなんとかなるとして、公共の場で普通に売られていたわけだ」


「しかも、同等のものが街にばら撒かれていると」


 ウォーリとマグナルバの言葉にアウルスが頷く。


「しかも12の節頭より露店で売っていたようで」


 街の結界も屋敷の結界も“魔封箱”に入れてあれば持ち込める。だが、アウルスが試しに購入した石は、そのまま露店に並べられており、買った時も何か包装されるわけでもなく、そのまま渡されたという。この薄桃色の石も恐らく同様の売り方であろう。

 そもそもこの露天商。素材を扱っているのであれば自身が鑑定で気づくであろうし、客も鑑定がある程度できる者が多いはず。どうやって胡麻化していたのか。だが、この考え方では露天商が何か企んでいることになってしまう。まぁ、アウルスは既に怪しいと考えているようだが。


 街に持ち込むことが出来たとして、露店からアウルスの屋敷にそのまま持ち込むのは無理がある。

 何らかの魔法を使って一時的に偽装したのか? だが、そのような魔法があるのだろうか。


「マギー、魔法で一時的に汚染されいてるものを、偽装することは可能なのか?」


「ウォーリもそう考えるか。出来るか出来ないかで言えば、出来るだろうな。ただ、聞いたことはない」


 ウォーリはマグナルバの言葉に眉を寄せる。


「やる意味がないだろ? 調査の為に持ち込むなら魔封箱を使えば済む話だ。それ以外にそんなことをする必要など、嫌がらせ以外思いつかないぞ」


「嫌がらせか。もしそうであれば質が悪いな。それよりこの石だが、いつその露天商は手にいれたのだろうか?」


「ああ、ナギサが気にしていた件か」


 そう、この石がウォーリ達が浄化する前の魔力溜り近くから採取したものなのか。それとも、その後なのか。浄化前でも問題なのだが、浄化後であればもっと問題である。再びあのあたりが魔力溜りの影響を受けていることになる。ウォーリ達が魔力溜りを浄化をする場合、必ず周辺も魔力探知で確認している。それが済んだ後での採集であれば......


「浄化は11の節だったかしら。巡回が大半戻ってきたのを確認してから行ってもらったはずだから」


「露天商にいつ採取したかまでは聞いておりません。迂闊でした」


「いや、アウルス殿に非はない。それより、早急に調査を行う。まずは、この石がもともとあった場所の確認からか」




「よろしいでしょうか」


 突然、扉の外より声がかかる。ウォーリが扉を開けると一通の報告書を手渡された。アースターからのものだ。はて、今アウルスがここにいるが、その関係か?


「どうした?」


「アースターから何か急ぎの報告書が上がっているのだが」

 ウォーリはマグナルバに答えながら、報告書に目を通す。眼鏡を抑える手に力が入り、眉間に皺がよる。


「街で魔力溜りが見つかったそうだ」


 ウォーリの言葉に、3人の動きが止まる。


「街とは、イスのことですよね?」


「ああ。下町の井戸端にある祠だそうだ」


「すぐに浄化に向かわないと。あ、アースターからの報告ということは対処済みですか?」


「セラスが対処したそうだ」


「一人で、ですか? それは危険では......」


「街の神殿巡回中のことだったようで、他に見習い仲間と神官がいたようですが。実質彼女一人で対応したようですね」


 クラーヴィアやアウルスの問いかけに、ウォーリが報告書を見ながら淡々と答えていく。ウォーリ自身もセラスが一人で対応したということには不安が残るのだが、他に人がいて、アースターがセラスの状態を確認したとあるので、ひとまずこのことは置いておくことにした。


「アースターがセラスの報告を受けて、現場を確認に行ったところ、祠にあったそうだ」


「例の石か」




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