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ヴィルディステの物語  作者: あるかな
【第二章】

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119/313

2‐14‐1 学院内に初めて足を踏み入れる

 


「ナギ、ほら行くよ」


 モリスが遅れるナギサを振り返り、声をかける。


「ごめん、初めてだから気になって」


 今、ナギサとモリスの二人は学院内にいる。

 学院は学舎卒業生が学ぶことができる高等教育機関。基本は神官や神官見習いのうち、学問を学び続けたいものが籍を置いている。


 冬休暇の間、聖の曜日同様、学舎内施設は利用できない。学院内の調合室を借りて作業を行うために、二人は今学院内を歩いている。モリスは既に何度か利用したことがあるからか、慣れた足取りで先に進んでいってしまう。

 一方ナギサは学院内に入るのは初めて。洗濯場の手伝いでもここを担当したことはない。久々に大神殿内での初めての場所ということで、ついあちこちを見回してしまうせいか、足取りも遅くなってしまう。


「そのうち慣れちゃうから。ほら、あそこの部屋」


 モリスに促され調合室に足を踏み入れる。学舎のものと似た造りではあるが、もっと規模が大きく機材も見慣れないものが揃っている。

 見渡せば、何人かの神官や神官見習いが静かに作業を行っている。邪魔をしないよう二人は静かに隅のほうの作業場を確保する。


 モリスに尋ねながら必要な機材を用意し、二人で調合を始める。今回はローズマリーの化粧水を調合する。既に何度も行っているので手慣れたものなのだが、販売用に調合するのは初めてのこと。少し緊張しながら作業を進めるが、やはり慣れは大きく、問題なく調合作業は完了する。


 仕上げは出来上がった化粧水を販売用の小瓶に移し詰めること。静かに丁寧に、今日一番の緊張の時間だ。


「完成、だね」


「ん、完成」


 お互い顔を見合わせ、どちらともなく微笑みを交わす。


「じゃぁ、次は魔導工房まで行って許可をもらおう。今日はここまでかな」


「ん、じゃぁ、行こうか」




 魔導工房での手続きはあっさりしたものだった。既に販売許可を受けているので、その手続きは不要。販売する商品の確認のみである。

 材料費や素材採集の制約もあり、販売用に用意できたのは20本。それでも、一本一本丁寧に確認されるので、意外に時間がかかってしまった。


「上出来だよ、君達。以前注意したこともしっかり守られている。今回は10本を大神殿の販売所用、残りは君達が街に卸す、ってことでよかったよね?」


「「はい。お願いします!」」


 二人で神官に腰を折るほどに頭を下げた。


「そこまでしなくても。じゃぁ、この10本は預かるね。お疲れ様」


 受付の神官はナギサ達の態度に苦笑しながらも、二人に労いの言葉をかけてくれる。そんな神官にもう一度丁寧に礼を行い、二人は魔導工房を後にした。




「無事に手続きが終わったね」


「ナギ、手伝ってくれてありがとうね。初めての販売、ドキドキするよね」


「ん、大神殿の販売所には明日から並べてもらえるって言われたよね。嬉しいよね」


「後は街での販売。ナギ、明日もよろしくね」


 ナギサとモリスは明日の予定を確認しあう。明日はモリスが懇意にしている小物屋に化粧水を委託するために、再び街に出る予定だ。ナギサがついていく必要はないのではと思ったのだが、モリスがどうしても一緒にというので、二人で行くことになっている。


「ナギ、この後は? わたしは調合室に戻って、いろいろ試すつもりなんだけど」


「わたしは厩舎へ行こうかなって」


「ナギ、ほんと馬が好きよね。馬術の講義、もう必須でもないのにとっているし」


「ん、もちろん好きだけど、馬に懐かれて嬉しいから遊びに行く、って気分かな」


 そんなやり取りの後、モリスは学院へ戻り、ナギサは厩舎へと向かった。




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