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ヴィルディステの物語  作者: あるかな
【第二章】

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2‐13‐6 違和感の正体

 


「ねぇ、夕食なんだけど、ここで食べていかない? この部屋でとってもいいって、ちゃんと家の者には許可をもらっているから」


「えっ、いいの?」


「ご迷惑では」


「この部屋、そういう使い方をしてもいいの?」


「大丈夫。そのかわり、食事といってもすごく簡単なものだから、物足りなかったらごめんよ」


 そこまで甘えてしまってよいのだろうかと、5人でワタワタとしているうちに、カエルはさっと部屋の外へと出て行ってしまった。




 しばらくするとカエルが戻ってきた。召使の方々も連れて。そして夕食として用意されていたのであろう、ワゴンが何台か部屋に引き入れられた。


「ありがとう。後は僕達でやるから」


 カエルの言葉に召使達は礼をとって部屋から下がっていく。カエルが一人で準備を続けようとするので、自然と皆がワゴンに集まってくる。


「ほら、カエル。皆で用意しよう」


「あ、サンドイッチ! いろいろ種類があるね。じゃぁ、あの大き目のテーブルに置いて......」


 用意されていたのはサンドイッチとスープにサラダ。部屋の中でのピクニックのようだ。大きなローテーブルに食べ物を並べ、その周りで皆が好きにとって食べる形になった。


 手のついていないワゴンが1台まだあることにモリスが気付く。


「カエル、あれはいいの?」


「あれはデザート用。最後のお楽しみだよ」


 見れば、デザートもワゴン1台に十分以上に用意されていた。





 デザートも食べ終わり、とりとめもなくお喋りに花を咲かせ、あっという間に時間が過ぎていく。


「流石にそろそろ帰らないといけないわよね」


「ああ、終課のこともあるし。僕らはそろそろ帰るよ」


「そうだね。かなり遅い時間になったから、馬車を用意するよ。少し待っていてくれる?」


「えっ、それは甘えすぎでは」


「だめだめ。こんなに暗いし、時間も遅いから。気づいている?」


 カエルの言葉にテラスを見れば、外はすっかり暗くなっていた。部屋の中の明るさと皆とのおしゃべりで、外の様子にまったく気づいていなかった。


 カエルはそう言うと、部屋の外、扉の前に控えていたであろう召使に何やら伝えている。

 ナギサ達は、そう言えばと、部屋の中を見回して、あちらこちらに飾られている小物や絵画の鑑賞を始める。


 小物といっても高価そうなものから、おもちゃまで。見ていて惹きつけられる何かを持つようなものが置いてある。こういうものには、やはりモリスが一番反応している。ナギサは魔道具系が多いのかと勝手に想像していたが、よく見れば土産物風のもの、いかにも贈り物めいたもの、どこかで拾ってきたのか綺麗な葉っぱや小石等、本当にいろいろなものが飾ってあった。


 そんなあれこれを見ていた時だ。


 ?


(何か、今視界の隅に......)


 一瞬“何か”に気をとられた。引っ張られたと言ったほうが正しいかもしれない。その何かはどれ? と見まわしてみる。


(この影、間違いない)


 ナギサは改めて鑑定を行い確信する。


「カエル、ちょっといいかな」


「何? ナギサ、どうかした」


 カエルに声をかけるが、恐らくその声に違和感を感じたのであろう。モリス達も集まってきた。

 ならばと、魔力量に余裕があるなら、これを鑑定してみてほしいとカエル達に静かに告げる。


「えっ......」


「ちょっと、これって」


 カエルとモリスが鑑定を試したようだ。二人とも大きく見開いた目でナギサを凝視している。


「何? どうしたの? わたし達、鑑定は苦手だから......」


 ヴルペが3人の様子を見て、不安げに声をあげた。


「この石、“汚染”されているの」



 一番驚いているのは当然カエルである。屋敷は結界で護られているので、汚染されているような危険物が持ち込まれることは本来ありえないこと。それが屋敷内、それもこの歓談室に飾られている。

 一体誰が持ち込んだのか。そもそも持ち込めるのか。


 汚染されたものを軽々しく触ることは危険である。掃除などで召使たちが既に手を触れているはず。触れて直ぐにどうこうするものではないが、ずっと接触している、頻繁に触る、そんなことが続けば別である。

 では、その結果、人が汚染されるとどうなるか。理性を失うことが多いとナギサは講義で教えられた。理性を失い攻撃的なる。友人家族、見知らぬ人に対しても。




「申し訳ないけど、ここにもう少しいてもらってもいいかな。家の者に確認してくるから」


 そう言い置くと、カエルは扉の向こうへと走り去っていった。




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