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ヴィルディステの物語  作者: あるかな
【第二章】

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114/308

2‐13‐4 教えてくれれば

 


 屋台は中央広場に集中している。中央通りは大神殿正門につながるため、年越しの祭りでは屋台を出すことは禁じられている。街の他エリアでも市が立つ場所では屋台が出ているのだが、やはり一番はここ、中央広場、多くの屋台が所狭しと並んでいる。そこに人が大勢いるのだから、人探しは大変である。


 子供とはいえ、5人が固まってうろうろしているとかなり邪魔なのだろう、あちらこちらからの非難の視線が痛い。仕方がないので少し人気がない屋台のほうへと流れていくと...... モリスがいた。


「「「モリス!」」」


 皆で声をかけると、ビクッと肩を揺らすのがわかる。どうやら自覚があるようだ。




「ごめんなさい...... つい夢中になりまして......」


 今の屋台で何かを買ったようで、店主にペコリと頭を下げ、小さな包みを手に5人のほうへ駆け戻ってきた。

 今手渡されたと思しき包みとは別に、モリスの荷物袋は中身が詰まっているように見える。この短時間にどれだけ何を買ったのか。


「いい買い物ができた?」


「ええ! 怪しいものもあるけど、戻ってから鑑定していろいろ試してみたいわ!」


 カエルが優しい。それに返すモリスも非常に良い笑顔である。


「そうねぇ、しっかり鑑定したほうがいいわよ。今買ったものはよいとして......」


 !!!!!


 気が付くとモリスの横にはローブのフードを目深にかぶった女性神官が立っていた。しかも、ただ立っているのではなく、モリスの戦利品を見ながらあれこれと何か言っている。


 モリスは当然のこととして、他の皆も目を見開いてその女性神官を見つめてしまう。だが、ナギサはその声に聞き覚えがある。それにフードからこぼれ出るあの群青の髪色。そう、確か最近......


 《ナギサ、わたしだってことは今は言わないで》


 《やっぱりウーラニア様。お忍びですか?》


 《そのつもりはないのだけど、ここまで人混みがひどいと、ね。わたしがここから立ち去ったあとに教えてあげて》


 《わかりました。ところで、これって念話ですよね?》


 《わたしから一方的に繋いでいるの。神様ですからね、これでも》




 念話でナギサとウーラニアが会話をしている中、ウーラニアはモリスへの忠告らしきものもしっかりと行っている。

 しばらくすると、ウーラニアはモリスに伝えるべきことを伝えたようで、立ち去る様子を見せる。雑踏へと紛れ込むのかと見ていると、何故かナギサのほうへと足を向けた。ウーラニアは驚き固まるナギサの額に軽く口づけを落とし、


「この子もわたしに気付いているみたいなの」


 耳元でそっと呟いた。

 ナギサがその言葉にウーラニアの視線を追うと、そこには目と口を大きく開いたカエルがいた。ウーラニアはナギサから離れると、カエルに近づき額に口づけを落とす。


「ありがとう、黙っていてくれて」


 その一言を最後にウーラニアは足早に人混みの中へと紛れていった。




「ナギ、今の方って」


「カエルの推測通り、ウーラニア様だよ」


「「「「えーーーっ!」」」」


「ナギ、カエル、どうして教えてくれなかったの! わたし、お礼も言えなかったよ。誰このひと? 何? って、すごく失礼な態度だったよぉ~」


 ナギサとカエルのやり取りを聞き、皆が一斉に抗議の声をあげる。モリスに至っては自身の態度を顧みて落ち込んでしまっている。


「ん、ごめんなさい」

「ごめん」


 皆の抗議の声に、素直に謝るナギサとカエルである。




 △▼


「お待たせ。あの子が例の子よ」


「なるほどね。ありがとう、ウーラニア」


「どういたしまして。でも、こんな回りくどいことしなくても」


「そうだけど。エクースも気になるっていうからいいじゃない」


「ああ、わたしも気になってね」


 今ここには3柱の神がいる。ウーラニア、ミラクルゥム、エクースの3柱。口唇阻害や隠蔽やらを展開して、周りからその正体と会話内容がわからないようにしている。


 そしてこの3柱の神はナギサ達を遠くから観察していた。


「ファイヌムが珍しく興味を示しているんだよねぇ」


「ファイヌムってエクースが加護を与えた子よね? 馬にしか興味がないのよね。優秀な魔導士になれそうなんだけど」


「そうそう。馬をとっても大切にしてくれるいい子だよ。シンバ達も懐いているし、助かっているよ」


「ふ~ん、それでエクースはファイヌムが馬以外に興味を持ったのが気に入らない、と」


「違うよ、ミラクルゥム。そこまで狭量じゃないよ、わたしは」


「はいはい、そこまで。それで、ミラクルゥムとエクース。どう?」


「どうと言われても、ねぇ」


「ああ、あのローブ......」


 ミラクルゥムとエクースは《女神》が呼び込んだという少女を一目見ておこうと、ウーラニアに声をかけたのだが。


「そうよね。過保護すぎるわよねぇ......」





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