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ヴィルディステの物語  作者: あるかな
【第二章】

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2‐12‐5 大切な人


 

「夜の薬草園、久しぶりです!」


 リュークに時間があるかと問われ、そのままリュークに付き合うことになった。何処へ行くのかと思えば薬草園。ここはナギサのお気に入りの場所であり、リュークと初めて会った場所。リュークにとっても神殿内でのお気に入りの場所の一つだという。


「お花、すごく綺麗でした。リュークにも見てほしかったです」


 リュークが覚えているかはわからないが、ナギサにとってはリュークと話すきっかけとなった花。実際に咲いた花を見た時にはその美しさに魅入られた。こんな美しい花が咲き乱れる場所があるのならいつか見てみたいと。

 リュークがこの薬草園にもたらしてくれた貴重な花。その咲いた姿を見てほしかったとナギサは残念に思っていた。


「気に入ってくれた?」


「ええ! とても。また来年も咲いてくれると嬉しいのだけど」


「大丈夫だと思うよ。もし芽吹かないようなら、また僕が苗を持ってくるから」


「本当ですか!」


(来年、また花が咲いたなら、その時はリュークと一緒に見てみたい...... いけない、また期待してしまう。ただの親切な旅商人なのに)フルフルと頭を振って心の中を切り替える。(何か、他の話題を......)


「そうこの間、ここで神様に会ったんですよ」


 本当は贈り物のことや首飾りのことが聞きたいはずなのに、またもや違うことを話題にしてしまった。リュークも「へぇ、ウーラニア様にねぇ」とニコニコしながら相槌を打ってくれるので、そのまま普段の何気ない身の回りのことを話し続けてしまう。


 そんな他愛もないことを話しながらナギサがいつものベンチに座ると、リュークもその隣にストンと腰を下ろしてくる。何故かぴったり真横に位置取るリュークに、心音がまた大きくなった気がする。


「元気そうでよかった。会えなくて不安だったんだ」いつもの優しい笑顔を少しだけ翳らせ、リュークがそう呟いた。


「えっ...... リュークが不安って」


 意外な言葉に横を見ると、リュークの手が伸びてきてナギサの髪を撫ではじめる。


「不安だったんだよ。首飾りを渡してあるから大丈夫って自分に言い聞かせていたけど、君に何かあったらってね」


 ますます訳が分からない。何故そこまでリュークに心配されるのか。それに首飾りってあれのことだと思うのだが、一体どんな代物なのだ?

 それに、気づけば盗聴防止の結界と、恐らく寒さ除け? のような防壁が張られている。いつのまに? リュークが魔法を使ったのか、スクロールでも用意していたのだろうか?


「クラウスを先に戻したからその後は安心だったんだけど。いや、ウォーリやヴィアがいるから大丈夫なはずなんだけどね。心配性なんだよ僕は」


 ヴィアって、確か神官長ウォーリがクラーヴィアのことをそう呼んでいた。そんな呼び方ができるほど近しい関係なのか、この人は。一体リュークって何者?


「あの首飾りって何なのですか? 神官長から手渡された時と身に着けた後、まったく見た目が異なります。護符だというのでずっと身につけていますが、特に汚れがつくこともないですし」


「護符と思ってくれれば大方間違いはないよ。見た目の変化は今の君が望んだ形にあれが従っただけ。そういう首飾りなんだ」


「わたしは何から護られているのですか? リュークが恐れているものって何なのです?」


 リュークは護符としか言わない。その中身が知りたいと言っているつもりなのだが、はぐらかされているのか答えをくれない。今もナギサの言葉が聞こえなかったかのように、ただただ優しくナギサの髪を撫で続け、その瞳は遠くを見つめている。




「そういえば、ローブと靴、気に入ってくれたかな?」


 しばしの沈黙の後、リュークが口にしたのは問いかけへの答えではなかった。


「——あの荷物、差出人はリュークだったのですね」


「あれ? 僕ってメモを入れておいたつもりだけど......」


「ええ、一枚、確かにありました。宛先はわたし。でも、差出人がありませんでした」


 護符については何も教えてもらえないようだ。仕方がないので件の贈り物の話に付き合うことにする。どうやらリュークはあのメモにサインを入れたつもりだったらしい。なのでナギサの問いかけは本当に意外だったようで、目を大きく見開いている。


「慌てていたからかなぁ。逆に心配させてしまったよね。ごめんよ。あのローブはね、防寒・防刃・防魔法・防状態異常・その他もろもろが付与されているから、街へ出るときは使ってくれると嬉しいな。靴と部屋着はそういう付与がないけど。あったほうがよかったかな?」


 待て、あのローブ。とんでもない代物ではないか。買おうとしたらいったいいくら必要なのだ? そんなものをこんな子供にぽんと贈るとは。


「——いえ、あのですね、リューク。こんなことを言ってはいけないとわかっています。でも、あえて言わせてもらいます。

 贈り物はとても嬉しく思っています。でもですね、身元がはっきりしない孤児で子供。しかも会ったのは今日で三回目。そんな相手に護符だけでも過剰なのに、魔道具のローブや上等な靴に部屋着。おかしくないですか?」


「そうかな? 大切な人へ贈り物をしたい、護りたい、ってすごく普通でしょ?」


 リュークの表情はいたって真面目なものだ。若干目尻が下がったその眼差しも優しさこそあれ、揶揄いは微塵もない。


(大切な人って...... どういう意味で? まだ3回しか話していないし。それに、そんなに大切に思われるような立派な人間じゃないよ......)


 戸惑うナギサをどう思ったのか、

「そろそろ戻ろうか。夕食も一緒にいいかな?」と、リュークは優しくナギサの手を取った。


 温かく、少し大きなリュークの手が、ナギサの小さな手を包み込む。その柔らかな感触に、ナギサは心音がまたもや大きくなるのを感じた。


 リュークに手を引かれ、ゆっくりと立ち上がる。夜のひんやりとした空気が肌を撫でる。繋がる手から視線をリュークに移せば、星金の瞳が優しくナギサを見つめていた。




ナギサの物語にお付き合いいただいてありがとうございます。


ブクマや評価、とてもありがたく、ものすごく励みになっております。


リュークとナギサの関係はゆっくりと見守ってあげてください。

ナギサは自分に自信がない&経験不足なので、やり直し人生の割には上手く処せないのです。


20250308

ネックレス表記を首飾り表記に修正しました。他に、気になる箇所を少し修正しました。

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