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ヴィルディステの物語  作者: あるかな
【第二章】

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2‐12‐4 ただいま

 

 11の節の終わり頃に、クラウスが戻ってきた。

 その後、ナギサは乗馬の講義が終わった後、クラウスと時間をとるようにしている。ファイヌムから『クラウスの機嫌向上の為、協力してくれるとうれしいなぁ』と頼まれたのだ。これはナギサ自身も望むことなので喜んで引き受けた。


 そして今日も講義の後にクラウスがいる馬房でのんびりと時間を過ごしていた。


「クラウスの毛並みは綺麗よねぇ」


 傍から見れば、ブラッシングしながら馬に向かって好き勝手なことを言っているように見えるだろう。

 だが、実際は念話でクラウスと会話しているナギサである。

 ファイヌムから念話のことは知られないようにしろと念を押されているので、とりあえずその言に従っているわけだ。


《ほんと、クラウスの毛並みって綺麗。まさに漆黒、んん濡れ羽色って感じかな。羨ましいなぁ》


《褒めてくれるのは嬉しいけど、ナギサの髪も絹のようで僕は好きだよ》


《ん...... とりあえずありがとう。わたし、クラウスのような黒髪になりたいってずっと思っていたんだけど......》


 念話でのクラウスとの会話。

 誰にも聞かれない、隠し事が出来ない(思っていることがクラウスにはバレてしまうらしい)ので、かえって本音で話すことができる。今も髪のことをポツポツと愚痴りながらここ数日のことを話している。クラウスがごねた林での採集のこと。そこで野豚に遭遇したこと。帰り道に迷いかけたけど馬達に助けられたこと、そんな他愛もないことを。それに対してクラウスは適度に相槌を打ってくれる。そして今回は林の件でやっぱり話を蒸し返してきたりする。


《ほら、僕を連れて行ってくれればよかったんだよ》


《あの時クラウスがいたとしても林の中までは一緒に来れなかったから》


《いや、行くよ。当然だよ》


《無理無理無理!》


「楽しそうだね」


 突然の声。

 すぐ傍、いや頭上から声がした。


「リューク!」


 気付かなかった。振り返ればリュークはナギサの真後ろに立ち、ナギサを見下ろしながらニコニコと微笑んでいる。いつ? クラウスは気づいていたの?


「驚いた? こっそり気づかれないように近づいたからね」


 リュークはナギサの背後から離れると、ナギサの前で片膝を折り、ナギサに目線を合わせてくれる。


「ただいま、ナギサ」


 柔らかな表情でリュークはナギサに帰還の言葉を告げる。ナギサを見つめる黄金の瞳は柔らかく、その声もナギサを包み込むような優しさが感じられ、体から緊張が取れていくのを感じる。自分は何かに緊張していたのだろうか? 気づけば己の心音も何かを訴えているような......


「おかえりなさい、リューク」

 なんとか一言、口にすることができた。目を合わせてそう言葉を発するのが精一杯で、目線を下に向けてしまう。リュークが帰ってきたら聞きたいことがいっぱいあったはずなのに、続きの言葉が出てこない。


 ナギサが自分の心の内に戸惑っている間に、クラウスとリュークは念話を続けていた。


《リューク、ナギサをあまりからかうなよ。反応に困っているだろ》


《からかっていないよ。君達、すごく仲良しだから少し妬けただけ》


《お前がナギサを放置しているからだよ。これでも僕のほうがナギサと過ごしている時間は長いからね》


《それを言われると反論できないなぁ。じゃぁ、これから挽回かな》


《何? どうやって時間をつくるのさ。やる事があるだろ?》


《無理矢理にでも時間は作るさ。やっと見つけたのだから......》


《まぁ、頑張れよ。せいぜい嫌われないようにな》




「ナギサ、まだ時間はある?」


「えっ? あ、はい。クラウスとお話が済んだらもう今日は夕食とかそんな感じですが」




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