料理人冥利
タイトル変更まであと三日!
(前話の後書き見てない人は見て下さいね)
ディーネ考案の水魔法披露会の会場から出た二人は、一旦城に帰って休むことにした。
丁度お昼の時間なので、厨房に行ってなにか貰おうという魂胆もある。
早速向かおうと厨房へと足を進め、丁度メイリーの仕事場の前を通りかかったとき――扉から白い腕が伸びてリウの手を軽く掴んだ。
「ひぃっ!?」
思わず悲鳴をあげてリアにしがみつくリウ。
リアが固まり、二人共その場から動けないでいると扉からメイリーが出てきた。
メイリーの片手はしっかりとリウの腕を掴んでおり……どうやら二人を驚かせた腕の正体はメイリーだったらしい。
熱意の籠った瞳で二人を見てメイリーが空いている手でリアの手も掴んだ。
「あなたはリウ様の妹でいらっしゃるリア様でございますねぇ? レアちゃんからお話は窺っておりましたぁ! リウ様と似て非常に綺麗で可愛らしいお姿をしていらっしゃいますねぇ。ではではぁ、こちらへどうぞぉ」
そう言うなり二人を引っ張って専用の仕事部屋に連行するメイリー。
引っ張られている間に正気に戻ったリウがリアから離れ、メイリーに声をかけた。
「メイリー? わ、私はともかくリアまで巻き込むのは……」
「それはそうですがぁ、お客様をお一人にするわけにも参りませんからねぇ」
「だったら離してくれる?」
「全力で拒否させていただきますぅ」
にっこり。
そう表現するのがぴったりな笑顔をメイリーが浮かべた。
そして、フリルやリボンがたっぷりのゴスロリを持ってくる。
……色違いも持っているのはきっと気のせいだ。
リウは現実逃避した。
「ディーネ様の次はリア様とお揃いですよぉ。着替えて下さいぃ」
「うぅうううう……」
不満げに唸りながらもリウがすぐに渡された服に着替えた。
嫌がれば長引くが素直に着ればすぐ終わると知っているのだ。
そんな姉の様子を見てリアも素直にゴスロリの服に着替える。
メイリーが指示した通りに手を繋げば、メイリーが大興奮で二人の姿を眺め始めた。
デザインは全く同じで、色だけが違っている形。
リウのものは濃紺で、リアのものは深紅。
似合っているのだが、リウは嫌そうにしていてリアは姉とお揃いということで満面の笑みになっているのでパッと見では状況が意味不明だった。
「ふふふぅ、やっぱりリウ様は最高の素体ですぅ……妹君であらせるリア様も……ふへへぇ」
メイリーが非常にだらしない笑みを浮かべて二人を眺める。
しばらくすれば、もう充分だろうと心底面倒そうな表情をしたリウが普段のドレスに着替えた。
「「ああっ」」
リアとメイリーが悲しそうな声をあげた。
メイリーはとにかく、なんでリアまでと首を傾げるリウ。
リアは服を気に入ったらしく着替えようとしなかったのでそのまま服を貰い受け、メイリーに感謝を述べてから部屋から出た。
リウはメイリーの給料に少しボーナスを付けておこうと考えつつ、リアを連れて当初の目的の場所、厨房に向かうのだった。
◇
厨房に辿り着くとリウは扉から顔を出して中を窺う。
すると、リウに気付いた数人が笑顔で挨拶をしてきた。
リウが微笑み、厨房を見回す。
中には調理に集中している人たちがたくさん居た。
「頑張ってるわね、ご苦労様。……余った食材でなにか作れるかしら? 無理だったらそれでもいいのだけど……」
「お任せ下さい!」
リウが尋ねると手が空いていた料理人が即答した。
手が空いている他の料理人にも声をかけ、調理を行う人たち。
しばらくすると、ローストビーフがリウとリアに差し出された。
きちんと二人分である。
「簡易的ではありますが、味は保証します」
「そう、ありがとう。仕事中なのにごめんなさいね」
「いえいえ、リウ様に料理を振る舞えるなんてこんなに名誉なことないですよ。料理人冥利に尽きます。では、料理をご堪能下さい」
「ええ。ありがとう」
料理人に微笑み、リウがリアを連れて自室へ向かった。
◇
リウの部屋にて、二人は食事を行っていた。
ローストビーフを口に運び、リアが頬を綻ばせる。
「これ美味しいですね。簡易的って言ってましたけど、これで充分なくらいですよ!」
「そうね。でもまだ美味しくできるって張り切ってるのよ。毎日食べるわけでもないからちょっと申し訳ないのだけど、私に美味しく食べてもらいたいらしいわ。……本当、これでも充分過ぎるくらいなのだけど」
「……とは言いつつ、試食は毎回満足そうな顔して終えるらしいですね」
「……どこで知ったの……」
「ディーネが言ってました」
確かに見られたことがあったと溜め息を吐くリウ。
ゆっくりと料理を楽しみつつ、リアが笑う。
「にしても、ディーネとルリアをからかうネタができたのは僥倖です。次あったらどうからかってやりましょう」
「ほどほどにね。……私もからかうけれど……」
「面白い反応だったら私にも聞かせて下さいね!」
「ええ」
楽しげに笑う二人であった。




