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返り血ー2


2



ガルディアン第14支部基地管轄内ー特別演習場



ガルディアン第14支部基地司令の案内でテモワンとシレディアは、会場であるスタジアム型の特別演習場に到着した。



普段この特別演習場は、主にレアシオン社が利用し、新規武装やエグゼキュシオンのテストだったりを行っている。



そのため、会場内の安全性は非常に高く、設備もしっかり整った会場だ。



「今回は参加者が多いな」



入場手続きを済ませ、会場入りするとそこには同じように招待を受けた人たちが行き交っていた。



招待を受けたガルディアン支部司令や企業関係者たちが集っている。



「来たかテモワンにシレディア」



会場入りしたばかりの2人に声をかけてきた中年男性、ディラ・ファンディ。



長年レアシオン社に勤める凄腕のメカニックマンで、技術・開発部門の所長を務めている。



その腕はガルディアンも高く評価しており、度々ディラの派遣をレアシオン社に要請するくらいだ。



「お前さんたちが来るのを楽しみに待っておったぞ」



レアシオン社の社紋が入った作業着を身に纏い、顎周りに生やした白い髭を片手で撫でる。



「私もだディラ」



ディラと挨拶を交わすテモワンの後ろにいたシレディアは、会うのを楽しみにしていた人物と出会い、自ら前に出て挨拶を交わす。



「久しぶりじー」



「こうして顔を合わせるのは丁度1年振りになるかのシレディア。テレビ電話では顔を合わせていたが」



シレディアとディラは、互いに時間が合えばテレビ電話で通話する程の仲だ。



そのことは彼女の保護者であるテモワンもディラから聞いて知っている。



父親である自分には話さない友達のことや趣味の話をディラと交わしているらしく、テモワンは複雑な感情を抱いている。



「うん、去年会って以来」



去年もこの特別演習場で同じイベントが開催され、テモワンとシレディアが参加していた。



そこでディラと顔を合わせて以来、なかなか直接顔を合わせる機会がなかった。



「こうして直接シレディアを見ると去年よりさらに美人になったの」



ディラは、黒いダイレクトスーツが密着する美しく華奢なシレディアの全身を見渡す。



その姿はまるで孫の成長を間近で見て喜ぶ祖父のようだ。



「びじん?」



『美人』の意味がよく分からないシレディアは、首を傾げてディラをぼんやりした表情で見つめる。



「お前さんの花嫁姿が楽しみで仕方ない」



その言葉を隣で聞いていたテモワンは、過剰な反応を示し、わざとらしく咳払いをした。



「まだシレディアには早い」



「相変わらずの親バカじゃな」



「余計なことを言うな」



さっぱり会話についていけないシレディアは、気が抜けた表情で2人を見つめた。



「それにしても今年は参加者が多いようだな」



「当然じゃろ。エグゼキュシオンに次ぐ新型兵器のお披露目ともあれば人も集まるじゃろ」



今回、中小企業『アンビダル社』が新型兵器のデモンストレーションを行う。



アンビダル社は、数年前に兵器開発の業界へ新規参入を果たした中小企業だ。



そんな企業がエグゼキュシオンに次ぐ新型兵器を開発し、それを披露するとあって例年よりも注目度が高い。



「初参加の舞台で新型兵器をお披露目とは思い切ったな。」



「レアシオン社への宣戦布告と言ったところかの」



初参加でエグゼキュシオンに次ぐ新型兵器を披露する当たり、業界を牛耳るレアシオン社への対抗心が伺える。



「しかし、ライバル出現の割にレアシオン社の重役たちの姿が見当たらないな」



「ガルディアン上層部の輩もいないようじゃぞ」



テモワンは毎年必ずこのイベントに参加している訳ではない。



しかし、少なくとも彼が参加した時にはガルディアン上層部の人間やレアシオン社の役員が必ず1人は参加していた。



「確かに見当たらない」



ディラに言われて注意深く辺りを見渡しても今のところ会場内に彼らの姿は見当たらない。



各ブースで自社製品を紹介している企業側の人間も平社員と思われる若い人たちばかりだ。



「今回は特に興味を示しそうなものだが」



場合によっては、エグゼキュシオンに代わるかもしれない新型兵器のお披露目だ。



ガルディアン上層部やレアシオン社の役員たちがいつも以上に興味を示すはず。



特にレアシオン社にとって、ほぼ独占状態だった利益を脅かすかもしれない。



「考え過ぎかもしれないが、上層部がシレディアを同行させるよう圧をかけてきたのが関係しているのか」



そもそもテモワンは、この場に招待された時から例年とは違う違和感を感じていた。



執拗に『必ず護衛にシレディアを連れていけ』とガルディアン上層部の1人から言われた時からだ。



理由を尋ねると『いつ侵略者アントリューズが出現するか分からない』というありきたりな回答だった。



確かにいつ侵略者アントリューズが出現し、人類に襲い来るか分からない。



しかし、ガルディアン第14支部基地にもそれなりの戦力は整っており、侵略者アントリューズと戦えない状況ではない。



万が一、ガルディアン第14支部基地が保有する戦力が全滅した時の保険にシレディアの同行を命じてきたと考えれば多少は納得できる。



「まさかシレディアを何かに利用するつもりなのか」



「それは疑い過ぎではないかの」



シレディアを指名してきた辺り、何か裏があるのではないかと勘ぐってしまう。



「最悪何かあっても機体を積んで来たから対応できるが」



大型輸送機で現地入りしたのは、シレディアの黒いエグゼキュシオンを運ぶためだ。



本来なら例年通り専用の小型ジェット機かヘリでガルディアン第14支部基地に向かうはずだった。



「なんにせよ注意しなければならないな」



「お前さんの勘はよく当たるから困る」



「我ながら良くない方向ばかり当たるからそうならないよう祈っている」



「ところであれが発動する兆しはどうじゃ?」



ディラが切り替えた話題にテモワンの眉毛が意図せず反射的に吊り上がる。



「……私はこのまま発動しなくてもいいと思っている」



「開発者としては見届けたい。それにあれはお前さんの」



「言わなくていい」



ディラの言葉を途中で遮ったテモワンは、不機嫌そうに眉間に皺を寄せていた。



それを横目で見たディラは、彼の内に秘めた気持ちを汲み取り、先は言わずに会話を続ける。



「しかし、シレディアでも発動しないとなると設計ミスかの」



「お前に限ってそれはないだろ」



「なにせ不明瞭な点が多くての。ロールアウトしたばかりの新型機にも組み込んだんじゃが」



「新型にもあれを組み込んだのか?」



「可能性があるパイロットなんでな。もちろん上の許可をもらっておるよ」



「どうしてあれに拘る?単に実戦データが欲しいだけではないだろ?」



真の狙いを見透かしているようなテモワンの問いかけにディラは、離れた場所にいるシレディアを見る。



その瞳は孫を見つめる祖父そのものであり、愛しみを感じさせる。



「わしは技術でしかシレディアたち若い世代を守ってやれん」



ディラは、若い世代に命をかけて侵略者アントリューズと戦わせている現状が心苦しくて仕方ない。



できることなら代わってあげたいが、それができる訳もなく、若い世代に頼るしかない。



「あの子たちを守れるならいくらでも強い武器や兵器を開発する。それが悪魔の所業でもじゃ」



「シレディアを苦しめる結果になってもか」



痛いところを突かれたディラは、一瞬黙り込んだ後、重い口を開く。



「孫同然のシレディアが苦しむ姿は見たくない。じゃが、いざという時にわしの開発したものがシレディアの命を守ることに繋がるなら」



シレディアを守るために施したことが、結果的に彼女を苦しめることになるかもしれない。



ディラ自身それは痛いほど自覚しており、シレディアの姿を見る度に心が痛む。



しかし、侵略者アントリューズは飛躍的に成長を重ね続けている。



いずれはシレディアでも対抗できなくなる可能性だってある。



そんな時に彼女の命だけでも守れるならとディラは割り切っている。



シレディアだけでなく、同じく命をかけて戦う兵士たち全員を守ることにも繋がると信じている。



「覚悟はできてるんだな」



「もちろんじゃ」



興味があるのかないのか分からない無機質な表情で企業ブースを眺めるシレディアを見守る2人であった。

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