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同行者

 で、翌日出発するわけになったのだけど。


 「ええと……どういう状況?」

 「せめてもの条件で認めさせました。私もついていきます」

 「そ、そうなんだ……いいの?」


 シルヴィアさんにも聞くけど、それよりもその後ろ(、、、、)にいる人たちに向かって問いかける。


 「まあな。いるかもしれねえんだろ、魔族がよ?」

 「うん……でも、上級かもしれないんでしょ?」

 「だったら尚更じゃない。このまま何もしなかったら後悔するかもしれないし」

 「そうですよ!こういうときくらいは私たちに頼ってください!」

 「……いいの?シルヴィアさん?」

 「本当は私だけで行くつもりでしたが……皆さんが一緒に来ると………」

 「それならみんなで残った方がいいんじゃ………?」

 「「「「それはない(ですね)」」」」

 

 瞬時に否定された。ひどいなあ………


 「……アルヴァさんから何かないの?やめといた方がいい、とか」

 「あまりいい状況とは言えんな」

 「だよね?」

 「ああ。素人が多いうえに、魔族と互角に戦える者がどれだけいるかわからない。そんな状況で魔族と、更に上級と戦うのは難しいだろう」

 「ああ?だったら見捨てろっつーのか?」


 ジリアンさんが怒りの表情でアルヴァさんを睨みつける。だけど、予想に反してアルヴァさんは首を横に振った。


 「いや、最悪とも言い切れないところはある」

 「どういうこった?」

 「これだけの人数がいる。もしかすると何の反応もなかった魔族が釣れるかもしれん」

 「囮に使おうってのか?」

 「そういうことになるな」

 「……正気か?」

 「ああ、こうでもしなければ尻尾も出さないだろう。それにしなかったところで死人が出るのが速いか遅いかの違いだ」

 「ふざけんなよ?何も知らねえやつらはどうすんだよ!?」

 「あの商人にでも魔族と遭遇し次第、すぐに逃げるように伝えればいい。そうすれば被害は最小限で済むだろう」

 「……チッ、わかったよ」


 そう言って、ジリアンさんは歩いて行っちゃった。あの商人さんに伝えてくるのかな?


 「ってことはみんなついてきちゃうんだ?」

 「そうだな。いずれ上級魔族どころか八魔将とも戦うのだろう?今戦うか、少し先に延びるかの違いでしかないだろう」

 「意外だね、そんなこと言うなんて」

 「もっと大きな理由もあるがな」

 「そうなの?」

 「正直、別れたときのままならお前は邪魔にしかならなかっただろう。身体能力において、常人よりも遥かに劣っているからな」

 「あ、アルヴァさん?流石にそれはひど過ぎないでしょうか………?」

 「だが、今のお前にはクロという魔物がいるだろう?その魔物がいるならば話は大きく変わる」

 「と言いますと?」

 「考えてもみろ。いざというときに逃げることができるのとできないのとでは違う。ユートがいるということは作戦の安定性を保てるということだ」

 「あ………!」

 「でもクロが聞いてくれるとは限らないでしょ?」

 「だからこそお前が必要だ。あの魔物がいうことを聞くのはお前の指示のみだろう?」

 「うーん、そうだね。たぶんだけど」

 

 でもそれってクロがいるからいてもいい、っていうことじゃない?なんだか情けない気がするような………


 「クロが運べるのって何人?」

 「主を入れれば3人だな。その男の策に乗るなど不愉快極まりないがな」

 「クロって人を嫌ってばかりだよね………嫌いじゃない人いないの?」

 「主だな」

 「簡潔な答え、ありがとう。何を言っても意味ないのはなんとなくわかったよ」


 大変だ、クロは不良だったらしい。すぐに誰かに喧嘩を売っちゃうし。


 「何はともあれ出発しよっか。なんかもう動き始めるみたいだし」


 再び馬車に揺られる生活が始まるのだった。……途中で寝ちゃったのは気のせいだと思っておこう。


※               ※               ※

 「んー、それにしてもお姫様がこんな所にいるなんてねえ……驚きでしかないよ」

 「そうだよね。野宿とかしないだろうな、って思ったんだけど」

 「姫さんはなかなかに根性ある方だたぁ思うぜ?前の遠征のときも不平不満なしでついてきたぐらいだしな」

 「お姫様、ってこれくらいが普通なんでしょうか………?」

 「いえ、そうではありませんよ。昔は勉強が嫌いでしたから……外によく逃げ出していたんです。その影響かもしれませんね」

 「……イメージできません………」

 「今は嫌というほどに教えられましたから」

 「チッ、とっとと城に戻ればいいものを」

 「あなたこそ早く寝たらどうですか?」

 「そういうわけにもいかんさ。主のことがある。そんなこともわからぬとは……お前が馬鹿だというのは本当らしいな」

 「あら、あなたこそ耳が悪いのでは?私は勉強嫌いだった、としか言っていませんよ?」

 「……二人とも?そこら辺にしとかない?なんかみんなが呆気にとられてるっぽいから」


 今日の宿泊に適した場所に到着してから。シンシアさんたちが来てくれたんだけど、シルヴィアさんたちはみんな自分の立場を明かしちゃったんだよね。すごく驚いてたよ。まあ、普通はお姫様や勇者がここにいるなんて思わないよね。あ、ちなみに僕が勇者だってこともばれちゃった。こっちはなんだか意外そうなものを見る目だった。……なんか反応に困るなあ。

 しばらくもすれば気兼ねなく会話するくらいの仲にはなった。たぶん、ジリアンさんの力が大きいんだろうけど。そして食事をしながら話しているわけなんだけど………


 (……ねえ、ユート。なんでこの二人こんな仲悪いの?シルヴィアがあんなに嫌味言ってるとこ見たことないんだけど………)

 (さあ……?でも一方的にクロが嫌ってて嫌味を吐いてたら、シルヴィアさんもああなった、って感じかなあ?)

 (そ、そうなんだ………)


 いまだに睨み合ってるんだけど……どうしようかなあ?

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