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自身の能力を説明するようですⅣ

 「『思考共有』が危ない能力、ってのはわかったみたいだし、次に行こうか。次は……うん、『物質転換』でいいかな?」


 パンパンと手を叩いて、みんなの意識を戻した。どうやら話が移る、とわかったので、そっちに食いついたみたい。……あ、シーちゃんがちょっとへこんでる。あとでフォローしてあげよう。


 「『物質転換』は『状態変化』の上位交換かな。凛花さんなら、大体想像できるんじゃない?『状態変化』がどんなものなのか」

 「え、私?うーん、と……想像でしかないけど、物質の固体、液体、気体、の3つを自由に変化させる、っていう能力じゃないかと思ったんだけど………」


 凛花さんの言葉に頷く。それで大体あってるからね。


 「そうだよ。この能力の強弱は、何個の物質を変化させられるかに依るかな。普通の人は一つだけだけど、強い人ともなれば10個だったりするんだ」

 「へー、大体どんな使い方してたの?」

 「んー、やっぱり戦争だったからね。相手に水を飲ませて、一気に気化。急に増えた体積によって、体の内部から相手を殺す、っていうのが主な使い方だったかな」

 「そ、そうなんだ………」


 凛花さんが困ったような顔をしてる。それもそうか。殺す殺される、なんて話はあんまりしてて楽しくはないしね。


 「ふむ。金属を変えることも可能だったのか?」

 「ああ、うん。希少な人は可能だったよ。珍しいとこで言えば、鉄だったり銀だったり。金属以外で言えば、窒素を変えれる人もいたかな」


 空気中にある窒素を液体窒素に変えて、凍傷にするっていう使い方だったかな。あれは。液体窒素の温度は-196℃を下回るし、直接長時間触れてたらまあ、凍傷になるよね。ひどい使い方をすれば、心臓に近い部分で発動すれば即死させられるし。あ、話がずれてるか。


 「あの、ユート様。こたい、というものが何であるのかがいまいちわからないのですが………」

 「あ、そっか。そこから始めないとね」


 シルヴィアさんが首を傾げて聞いてくるので、そこで気付いた。そう言えば、こっちではそのことも知られてないのか。まあ、場所によって呼び名が違う場合が無きにしも非ずなわけだし、概念は知っているかもしれないけれど。僕は簡単に説明することにした。詳しく知るのなら、また明日、ってところかな。


 「で、今度はどんなとんでも能力なんだ?また人殺し用に使うものなのか?」

 「んー、これはどちらかと言えば、補助用の能力だし、お金稼ぎ用の能力だったかな。まあ、見てもらった方が早いよ」


 僕はつま先で地面を何回か小突く。すると、みんなの目の前に光る物体が現れた。銀色に輝くそれは、驚かせるのに一役買ったみたい。


 「お、おい……これって、まさか………」

 「予想を裏切るようで悪いけど、それはただの鉄だよ。銀じゃないんだ」

 「そ、そうか………」


 あらかさまに残念そうなジリアンさん。でも、がっかりするのにはまだ早い。この能力の本来の力はここからなんだから。


 『ああ、マスターかい。僕の能力を使うんだね。弱くて笑っちゃうよね。ははは』

 「んー、フーちゃんの力は凄いと思うけどな。この力に助けられたこともあるし」

 「ああ、はい。もう慣れてきたので先に聞きますけど……フーちゃんって誰ですか?」


 カトレアが達観したような顔で聞いてきた。……なんだか、かわいそうになってきたなあ。頑張って、カトレア。いつかいいことはあるよ。


 「フーちゃんは『物質転換』の子だね。すっごくネガティブで、口を開けば鬱になるようなことを言ってるよ。でも、いつも最悪のことを想定してくれてるから、そのことを加味して作戦を立てられるし、必要な存在だよ」

 『ふふふ、マスターは優しいね。けど、事実さ。僕は他の能力と比べたら、派手さがなくて、何の役にも立たないからね』

 『うっさい、黙って。こっちまで鬱になる』

 『ほら、この通りさ』


 あ、フーちゃんがぼろくそに言われてる。クーちゃん、それぐらいにしてあげて。フーちゃんがさらに落ち込んじゃうから。


 「ええっと……もしかして、これ地面の中にある砂鉄を集めたの?」

 「うん、そうだよ。砂鉄だけ集めて、精製することで鉄の塊にしてみたんだ」

 「そんなこともできるのですね………」


 シルヴィアさんが感心してるんだけど、『物質転換』の本当に凄いところはここからだ。研究者たちだって、この力に興奮していたのだから。

 僕は目を閉じて、箱で囲むイメージを練り上げた。幸い、みんなが手伝ってくれたからそこまで苦労はしなかった。


 「『水壁』」


 小さな鉄の塊が、水の壁に囲まれた。いきなり魔法を使った僕に、他の人はあれ、という顔をした。


 「急にどうしたのですか?魔法を使うなんて………」

 「ああ、そのままじゃ危ないからね。こうしといた方がいくらか安全なんだ」


 危ない、という言葉にみんなが身構えていた。いや、そんなに構えなくても大丈夫だよ。爆発とかはしないから。

 再び足で地面を小突いた。すると、水壁内の鉄に変化が起こった。だんだんと銀色に金色が混じっていき、1分もしない内にすべてが金色に変わった。勿論、水壁はまだ解除しない。


 「……おい、ユート。まさか、あれって………?」

 「今度はジリアンさんが考えてる通りだよ。あれは金だね」

 「鉄は……鉄はどこに消えたってんだ………?」


 ジリアンさんだけでなく、この場にいる全員が言葉を失っていた。僕はそろそろかな、と思って、『水壁』を解除した。


 「これが『物質転換』の効果だよ。全物質の状態変化をすることが可能。そして、強制核分裂、強制核融合が可能なんだ」

 「……つまり?」

 「鉄から金を作ることができる。反対に、金から鉄を作ることも可能だよ」


 まあ、他にもいろいろ作れるけど。人を殺すために使うなら、殺したい人物の周りの気体をすべて毒ガスに変えればいい。塩素にでも変えれば、殺すことは十分に可能だ。塩素じゃないなら、酸素でもいい。酸素を大量に作れば、可逆反応で酸素分子からオゾンができる。オゾンは人体には毒になるわけだし、この方法でも可能だ。

 それに、強制核分裂・核融合は放射線を発生させる。だから、遮ることができる水でみんなを守っていたわけなのだけど。あ、この水どうしよう?まあ、地面の深くに埋めとけばいいか。足で地面を小突くことで、廃水を地面の深い方へと移した。


 (さてと、どうしよっかな………?)


 みんなの予想を超えてしまったらしい能力に、フリーズしてしまった面々を見ながら、次の能力に移ってもいいかなあと考えるのだった。

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