過去にあったことを話すようです
「……話が脱線してきたように思えるのだが?」
呆れたような顔で王様が話に割り込んでくる。うーん、せっかくできなかった自己紹介をしていたのに。やっぱり、この人はあまり好きになれそうにないなあ。
でも、シルヴィアさんがハッとしたような感じになってるし、仕方ないか。王様はどうでもいいけど、シルヴィアさんは大事だからね。
「じゃあ、話を戻そうか。僕は研究所ではかなりの待遇を受けていたよ。クロを飼えたのもそこら辺が大きいかな。自分用の部屋も貰えていたし、欲しいものを言えば大体は手に入ったしね」
「そうなのですか。それはやはり自身が持つものが大きかったのですか?」
「うん。普通の子は超能力を1つ、ないしは2つ持てば上々なんだよ。3、4個も持っていたら、大成功。歴史に名を残せるぐらいだね」
だからこそ、僕の力を知った研究者たちは狂喜乱舞したのだけど。僕は規格外過ぎたんだ。
「へー、ってーと、お前が持ってるのは4つとかあるのか?」
「ううん、7つ。しかも、肉体組成がほぼ完璧と言えるぐらいだった。だから、かなり大事にされたんだ。多少の我が儘は許されるくらいに」
それはそうだろう。あのとき、超能力を保持している最大のホムンクルスでさえ、たったの4つだった。それが7つともなれば、大きなビジネスチャンスになる。研究者たちは手放したくはなかったんだろうと思う。
アルヴァさんを除くみんなが絶句していた。いや、カトレアもか。教えてたから、頭を抱えてるだけだった。アルヴァさんは平常運転だね。
「そうか。それならば納得もいくな。へそを曲げて脱走でもされないために、融通を利かせて、居心地をよくした、ということだな」
「うん。でも、ある日それが終わった。超能力を12個所持した子が出たんだ。それがわざわざ僕たちのところを訪ねてきた。たぶん、自慢したかったんだろうね」
今でも思い出す。あれは確か、クロを飼いたがっていたときだったかな。突然、彼らが現れたんだ。と、そうだ。
「言葉で伝えるのは難しいし、こっちで伝えるよ」
「え?何を………」
僕は能力を発動して、みんなの頭に直接見てきたものを送った。こっちの方が楽だし、わかりやすいよね。
映像はこんな内容だった。
『おやおや、AD機関の方といえど、これは想像できませんでしたかな?まったく、それが貴殿らの限界だったのですよ』
眼鏡を掛けて、明らかにこちらを見下している男の研究員が僕と、僕の開発者を笑っている。開発者の人は40代ぐらいの髪が薄くなってきていることを気にしていた、割と細身の男性だった。そこそこ顔はいいんだけど、今は屈辱によって顔を歪めている。
『黙れ!調子に乗りよって……私はまだ負けてなどいない!』
『なんと見苦しい。いいですか?『発火能力』、『転移』、『切断』、『テレパシー』、『サイコキネシス』、『状態変化』、『透視』、『加速』、『千里眼』、『発電能力』、『人形使役』、そして何よりも強いのが『未来視』。この12の能力を前に、その7つしかないホムンクルスでどう対抗すると?できるわけがないでしょう』
『……いいや、方法ならある。U-10!こいつを殺せ!』
しばらく蚊帳の外だったので、ぼんやりしてた僕は開発者の方を向いた。
『それは命令?』
『そうだ!ただでとは言わん!もしこいつを殺せれば、あの連れてきたいぬっころを飼ってもいい。飼育に必要な金は出してやる!』
『うん、わかった』
僕は転移で、開発者の前に立った。けれど、眼鏡の人は笑うだけだった。
『馬鹿め。それぐらい予想できないとでも思ったのか?いいか、『ディアボロス』!私を守り、やつを殺せ!くれぐれも実験体の方は殺すなよ?いい研究材料になる』
『なっ……貴様ぁ!』
『はははは!さあ、無様に死ぬといい!』
目の前のディアボロス、ということ向き合う。この子は仰々しい機械を身につけ、僕と対峙している。僕はしばらく動かずにいたけれど……
『何っ!?』
驚きの声を上げたのは、眼鏡の人だった。なぜなら、ディアボロスからは機械が取り去られ、ヒューヒューと苦しそうな息をしていたからだ。これがディアボロスの本体なんだろう。ガリガリにやせ細っているし、呼吸は一定のペースをキープできていない。それどころか、青い顔をしているし、今にでも死んでしまいそうだ。あの機械は恐らく、生命維持装置か何かだったんじゃないだろうか?
『貴様、何をした!?』
『何って、普通に能力を使っただけだけど。あ、いたぶっちゃ駄目って言われてるから、ごめんね』
僕はディアボロスの体と頭を切り離した。即死だから、痛みは感じていないと思う。呆気に取られている眼鏡の人も、一気に押し潰し、殺しておいた。これで全部終わりだ。
『は……ははははははは!ざまあみろ!私の作品の方が上だったのだ!私の方が優れていたのだ!』
『それはどうでもいいんだけど……あの犬飼っていい?』
『ああ、構わん。今の私は気分がいい。お前が前から願っていたものも叶えてやろう』
『前に言ってたこと?』
『……お前が言ったのだろう。他のホムンクルスたちを戦いから外せ、と。お前が代わりをすれば、それを叶えてやると言っているんだ』
ああ、そんなことも言ったっけ。先生が悲しそうだったから、僕が駄目元で言ってみたんだよね。まさか叶っちゃうなんて。
『わかったよ。それぐらいは構わないし』
『ならばいい。それにしても、いつ『切断』能力など覚えた?能力は8つだったのか?』
『ううん、違うよ?僕は7つしか持ってないもの』
『では、あれは何なのだ?』
『あれはね………』
そこで映像を切る。これ以上流しても、蛇足になりかねないしね。
……みんな、無言だったけど。どうしたらいいんだろ、これ?
「……一つ聞かせてくれ。今のお前は魔族に対抗できるのか?」
王様が僕を見て、聞いてきた。僕はちゃんと目を合わせて答えてあげることにした。
「うん。たぶん、普通の魔族なら相手にならないと思うよ?なんなら、証明してあげてもいいけど?」
「どういうことだ?」
「今、そこにいる騎士たちと戦ってみせるんだよ。そしたらわかるでしょ?」
「それは……確かにそうだが」
「むこうも都合が良さそうに見えるし、いいんじゃない?今ここで始めて」
騎士たちは僕を睨んでいた。……あんまり怖くはないなあ。カトレアに叱られる方がよっぽど怖いよ。案の定、王様は嫌そうな顔をしたけれど。
「ここでか?この部屋はスペースがないぞ?」
「別にいいよ。すぐ終わるし」
「むう、それならば………」
誰かを指そうとした王様を僕は遮った。
「選ばなくていいよ。全員でかかってくれば」
「ユート様!?いくらなんでも、それは無茶苦茶です!」
「大丈夫だよ。勝てるから」
まあ、この言い草に文句があるのは、当然騎士たちだ。
「……陛下。どうかご決断を。この男だけは我々がなんとかします」
「……わかった。よかろう」
「そっちの都合で始めていいよ。僕はいつでもいいし」
「そうか……では、行くぞ!」
隊長らしき人が掛け声を掛けると同時に、一斉に襲い掛かって来た。……不意打ちでもよかったのに。それならまだ勝てる可能性はあったし。0.何%レベルでだけど。
僕は落ち着いて、人差し指を立てる。そして、それをそのまま下に向けた。すると……
「がっ!?」
「ぐおっ!?」
騎士たちが次々に地面に倒れ伏していく。一人残らず。周りの人は唖然としていた。
「……立つんだ。頑張るね」
「……舐めるなよ、小僧………私は、こんなところで倒れるわけには………!」
「じゃ、2倍にしてあげる」
立ち上がった隊長さんは急に地面に倒れ込んだ。その顔は苦悶に歪み、今にも気絶してしまいそうだ。
「で、どうかな?これでも勝負はついてない?」
「……いや、十分だ。この勝負、お前の勝ちだろう」
王様はあっさりと認めた。潔くはあるんだね。
そして、いきなり頭を下げた。なんだろう、と思っていると、王様はこう言ってきた。
「頼む、この世界を救ってくれないだろうか」
僕はその真摯な態度を見て、考えを決めた。うん、やっぱり僕はこうしたいし。頭を下げた王様に僕は……
「え、嫌だけど?」
説明回が意外と長引く………




