事情を説明するようです
「シルヴィアさんは超能力のことを知りたいの?」
「……ええ。ぶしつけで差し出がましい願いだとはわかっています。ですが………」
「いいよ」
「どうにかしてお教えいただけ……って、ええ!?」
いきなり驚いたシルヴィアさんに、僕は首を傾げた。変なことでも言ったかな?
「え、でも、シルヴィアさんは知りたいんじゃなかった?」
「え、ええ、そうですが……こんなにあっさり頷くとは思っていなかったと言いますか………」
「別にいいよ。シルヴィアさんだし」
王様とか、周りの騎士の人たちだったら、迷わずやだって言うけど。別に親しくもなんともないし。
「それじゃあ、僕のことからでいいのかな?そっちの方が順を追って話せそうだし」
「あ、はい。お願いします」
ぺこりと律儀にお辞儀するシルヴィアさん。いい人だよね。
「それじゃあ、まず自己紹介から。元超能力開発機関『Artificial deus』、通称AD機関の実験体U-10。ユートだよ。ユートは優しいの「優」に人の「人」とも書くかな。ユートって名前を付けてくれたのは姉さんで、漢字を充ててくれたのは先生。名前だけは忘れなかったのは、ここら辺が大きいのかもね」
「そうなのですか………」
「次に。僕が作られたのは、やっぱり戦争で使うため。だから、戦闘経験もあるにはあるって言えるよ。ただ、肉体や魔法を使って戦うのは苦手かな。超能力の方が慣れてるし」
そうなんだよね。魔法は使えなくもないけど、超能力の方が楽。超能力なら目を瞑ってても、口を塞がれてても、それどころか体が動かせなくたって使える。僕としては、馴染みの深い存在なんだ。
「そこまでは知っています。確か人造人間……ホムンクルスというのでしたね」
「そう。だから、この見た目だけど、実年齢は10歳くらいだよ。研究所にはもっと年の低い子もいたかな。もっとも、僕はまだ高齢な方だけど」
「ってーと?」
初めてジリアンさんが口を挟んだ。僕はジリアンさんにも聞こえるように、少し声のボリュームを上げた。
「肉体組成が不安定だからね。10歳まではとてもじゃないけど、生きていられる子が少ないんだ。早い子だと、1日持たない子もいたよ。まあ、成功した子なら、っていう冠はつくけど」
「……失敗してたら、どうなるんだ?」
「培養液の中でそのまま動かなくなる。生命活動が停止するんだ。確か、AからDナンバーの子はその死因が多かったはずだよ」
「……おい、それってもしかしなくても………」
僕は頷く。ジリアンさんの考えたであろうことは間違ってないから。
「実験体とされた子は2000を超えてるだろうね。その全員がもう死んでいるよ」
「腐ってやがるな………」
「そうだね。そうかもしれない。たぶん、僕の世界で戦争に関わった人は、一人残らず歪んでいるんだと思う。先生ですら、初期段階ではホムンクルスによる超能力の研究は肯定派だったみたいだしね」
まあ、ホムンクルスがあまりにも人間と近すぎて。尚且つ、あまりにも不遇過ぎたから、途中からは反対派になっていたけれど。
ジリアンさんは顔を歪めていた。それだけ許し難かったんだろう。凛花さんやコルネリアさんからは最低、って言われてるけど、やっぱり優しいからね。
「ところでなのだが。ホムンクルスは通常、どれぐらい生きられるものなのだ?」
「ええとね、確か5年が限界だったはずだよ。大体の子は自分の能力の暴走か、もしくは肉体が保てずに崩壊していくか。そのどっちかで死んでいくことが多いよ」
今度はアルヴァさんからの質問だった。珍しいな、とは思いつつもちゃんと答えておいた。
「……あの、一つだけお聞きしたいことがあるのですが………」
「ん?どうしたの、カトレア?」
おずおずと手を挙げたカトレアに視線を移す。カトレアは聞こうか聞くまいか悩んでた様子だったけど、意を決して聞くようにしたようだ。
「そ、そのですね……ホムンクルスには、性別などはあるのでしょうか………?」
……みんなの時間が止まった(ように感じた)。クルリ、とみんなが僕の方を見たので、僕としては事実を伝えるしかなかった。いや、すぐにばれるだろうから、嘘ついたり誤魔化したりしても無駄なんだろうけど。
「んー、ない、かな?そりゃあ、研究成果で胸の膨らみがあるかないかぐらいはできるけど。でも、生殖器とかはやっぱりつけられなかったみたい。そもそも、内臓がないんだから当たり前と言えば当たり前ではあるけど」
「そ、そうだったのですか………」
僕が答えると、カトレアが少し残念そうな顔をしていた。どうしたんだろう?やっぱり人間の感情ってものは難しいや。
周りの人は納得したような顔だった。
「ええと、頑張ってね、カトレア……その、むこうも嫌がってはないみたいだしさ………」
「そうそう、あいつに性別がないのなんかは気にすることでもねえさ」
「は、はい……大丈夫です。聞きたかっただけですから………」
はて、と僕はクロに視線を送る。クロは僕に向かって、クイッと顎をしゃくったので、超能力を使った。
『ねえ、どういうことなのかな?』
『カトレアは主の性別を聞きたかったのさ。惚れているからな』
『ふーん……?それならそう言えばいいのにね』
『それが簡単に出来はしないから、女心は複雑なのさ』
『そうなんだ』
僕はカトレアに視線を戻すと、クロから聞いたことを教えてあげた。
「ええと、カトレア?一つ勘違いしないでほしいのだけど」
「はい?なんでしょうか?」
「僕自身は男だよ?」
「……はい?」
カトレアの動きが止まった。僕はそのまま言葉を続ける。
「いやさ。むこうの世界からこっちに来る前に、神様から贈り物をもらったんだよね。散々迷惑かけたから、って。感情を貰ったり、先生たちの埋葬をしてもらったり、クロを魔物にしてもらったり。その中の一つに、僕を人間と同じ肉体組成にするってものもあったんだ。だから、ものを食べればエネルギーにできるし、生殖行為?ってのもできるんだって。それが何かまではわかんないけど」
クロに聞いたら、カトレアに聞け、って言われたんだよね。そっちの方が都合がいいから、って。どういうことなんだろね?
「えええええええええ!?」
カトレアの叫びを聞いて、何か変なことを言っちゃったかな、とまたもや首を傾げるのだった。




