美少女天使の兄と天界へと
《4話》
フィリスの兄にしがみついて《天使・悪魔領結界付近》
フィリスの兄に言われるがまま、結局フィリスを極刑から救う為に俺はフィリスの兄であるフィーゴの足にしがみついたまま天界付近までやって来た。
やはりフィーゴは天使の中でも最上位、明らかに俺の体感したことのないような速度で飛翔している。そもそも俺は悪魔になったばかりで羽が生えていることに気づいてからまだそれほど飛んですらいない。だからやはり身体がどうしたってこわばってしまう。
だが、こんなところでビビってるとは思われたくない。そもそも俺はフィリスを助けに行くんだ…もっと胸を張っていきたいものだな。
そんな事を思いながらも絶対離されないようにしがみついていると、フィーゴが声をかけてくる。
「それなりに速度上げて飛んでは来たが…そろそろ速度に慣れてきた頃か?あと少しで結界に到達する。悪い、あまり時間が無いもんでな。」
フィーゴはあまり顔や態度には出さないが、そもそも妹が処刑される可能性がある。内心穏やかでは無いだろう、そんな状況で一応対立種族である俺に対し配慮する辺りやはり出来た天使なのだろう…
「まぁ…なんとか。目は開けれるようにはなって来たけど、にしてもどうやったらそんな爆速で飛べるんだよ…!」
「基本は慣れだ。この速度で目を開けれるようになれば後は身体を順応させればそのうち飛べるだろう。」
やっぱこういうのって結局慣れだよな。つまりこの兄もきっと隠れて努力したんだろうか…それとも稀にいる生まれつきの才能だろうか…後でしっかり聞いてみるか。しかしまだ一番核心的な話を聞いていない
「向こうに到着する前にアンタに聞いておきたい。なんでフィリスが極刑を食らうんだ。さっき言ってたが、俺を殴ってきたアイツ(ルクス・バルディオル)に何か関係があるのか?」
「あぁ…さっきは俺の妹自慢を聞かせてその話を忘れていたな。」
「そこは自分で認めるんだな…」
「まァ、俺は妹を誇りに思ってるからな。だからこそ俺は妹が失態を犯したとは思わない。」
「失態…?」
「あぁ。その失態とは俺の妹がそのルクス家の恥晒しを拷問の末殺害したというものだ。天使族の中で同族殺しは重罪になる。」
フィリスにも恥晒しって言われてた気がするが…
「……ちょっと待てよ…俺は怪我とかしてなかったし、フィリスにその辺で勘弁してあげろと言って、そこでフィリスも鎖を解いていた。」
「ディガル、君の言う事が正しいと俺は思っている。フィリスが嘘をついているとも思わない。だが実は、言いにくいが妹は君と協働してルクス家の跡継ぎ潰しを企んでいたのではという疑惑があるんだ。ルクス家の上層部は結構ややこしくてね…」
「…天使族の中で悪魔に対してここまで親切なのってアンタらシエル家の天使だけだったりするか?」
「どうだろうな、少なくともシエル家は悪魔との共存は無理でも戦争をしないことは望んではいる。昔から天魔対戦では多くの血が流れている歴史があるからな。だが、勿論悪魔に対してよく思わない家もある。家のまとまり以外にも最終的にやはり個人でかなり違うしな、だが確実に言えるのはルクス家は悪魔を良しとしない一族なのは昔から事実だ。だからルクス家はずっと悪魔領での統治を担当しているしな。」
「なるほど…だから俺は見せしめみたく殴られたのか…」
「ディガル君が殴られてたのは別の意味があるかもだが…まァそれは今度話す。そろそろ結界に入る、君は悪魔だから少し違和感があるかもだ、意識をしっかり保ってくれ。」
「あぁ……!」
とにかく全ては実際に天界に入らないと始まらない。俺はこの会話でそれなりにフィーゴへの信頼が高まった。さあ、天界に乗り込みに行って、フィリスをさっさと助けようか…
《4話完》