美少女天使と出会った翌日
《2話》
次の日の朝(悪魔領(魔界)地上)
そういや天使の派閥、家の関係なんて考えたこともなかったなぁ…。シエル家、ルクス家って言ってたな…天使の中でどれくらいの地位なんだろうか…。
そもそもここに来てまだ1週間、自分が悪魔だという自覚がまだ出来てすらいない。はっきりしているのは誰かの声…次に意識がはっきりした時には既に魔界だった。
「悪魔になって変わったことといやぁ…やっぱツノと羽だよな。後は全身から常に力があふれだしているような感覚。いわゆる生命力?魔力?の強さ位か…後は回復力の早さ、昨日フラフラになりながら帰ったのに既に全回復してるし…。」
自分の身体を見ると傷は全回復し、おまけに力があふれ出しているような感覚さえある。人間だった時朝起きるのが億劫になるくらいには朝に弱かったのに、すっと自然と身体が起きるのは良い点かもしれない。それに…自分が現実世界では大学生、いくら体を鍛えても全身から活力を感じるなんてことはあまりなかった……今は全身から力が溢れてくる感覚だ。
「明らかに自分の身体だなっていう実感が人間の時よりあるんだよな……人間の時はってつい1週間前だけど、毎日忙しかったし、肩こりとか…部活した後とか怪我とか筋肉痛含めて疲労感が凄まじかったからな……」
なんにせよ、身体がシャキッとするのは有り難いことだ。その点については悪魔も悪くないと感じる……しかしながらそうは問屋が卸さない。明らかに人間の頃より所謂性欲が増幅しているように感じるのだ。コレは本当に困った。確かに悪魔といえば若い女を攫うイメージとかあるが……。勿論人間の時もそういう気持ちになる時はあった。しかしながらここまで高まるのは中々無い
「……思春期かよ。」
ハァ……っとため息をつく。脳裏に昨日の美しい女天使……フィリスの姿が思い出される…。思わず握りそうになるが、流石に最低だなと考えがよぎりなんとか耐えた。
「仕方ない……ちょっと身体動かしたりでもして紛らわせよう。」
そう言って俺は家を出た。
走り始めて10分程、やはり自分が人間の時より体力や走る速度が上がっている気がする。元々運動は好きだし、足も速い方ではあるが…いわば自分の絶好調な時を常に出せるような…オーバーフローと言えば分かりやすいだろうか。
そうして走っていると性欲も少しは落ち着きを見せてくれる。走る方向を決めていた訳でもないが、やはりついでだし飯でも買うかと悪魔の街に出向いた訳だ。
悪魔の街と言えど、人間の街とそう変わらなく、市場があったり、民家があったりと悪魔が住んでいないなら人間の街と相違ない。しかし大都市という訳でもなく、城下町というのが近いかもしれない。実際に持ち主に会ったことはないが城もあるみたいだしな…。
そうやって今日の朝食は何にするかとウロウロしていると、昨日俺がフィリスと出会った場所に近づく。そうすると何やら野次馬が出来ているようだ。
チラッと遠目に眺めているとどうやら一人の男の天使が来ているらしい。なんとなくだが、天使の力の差というのは纏っている光の量や質でわかる気がしている。昨日俺を殴っていたルクス家の恥さらしはそこまで強い光を纏っていなかった。フィリスはその点、圧倒的な光の量だった。今遠巻きに確認する限り、光の量はフィリスと同等…いや少しフィリスより多いのかもしれない…。
「俺とは…多分関係無いだろ。うん、関わると厄介な予感がする。」
そう独り言を呟きながら離れようとすると、その男の天使が此方を向き見つめてくる。あっ…これ昨日の件だ、絶対。うわ……面倒なことになりそうだ…。なんだろう、この悪い事をして先生に呼び出される小学生みたいな状況は…。
「そこの君、ちょっとコチラに来てくれないか。」
えっと…これ間違いなく俺を呼んでるよな…。俺は別に悪いことをした覚えは無いし…平静を装おうか。
「はい…?俺ですか?貴方のような位の高い天使様から呼ばれるような事はしていないと思いますが…」
「何故俺が位が高い天使だと分かった?」
その男天使は静かに、しかしながら嘘をつかせないというような威厳のある声で聞き返してくる。完全に悪いのが俺みたいな構図の出来上がりである。
「え…?それはその光の纏う量というかオーラみたいなもので…」
「ほぅ…ならば君で間違いないようだ。」
「えっと…それはどういう…」
「……詳しい話は後でしよう。とにかく君は重要な証人だ。ついてきて欲しい。」
俺は悪くない…んだよな?重要な証人…
「仮に俺がそれを断ったらどうなります?」
「そうだな…その時は単刀直入に"俺の妹…いや、君を昨日助けたフィリスが極刑になる"」
「……は?」
《2話完》