繋がる世界
都内の某区の一軒家、時羽-ときわ-邸。
机に突っ伏して、窓の外を見ている少女。
「なんか…面白いコトないかな……。」
学校に行って、帰ってくると、この机に突っ伏して外を眺め、夕食を食べ、今日の後処理と明日の身支度をして寝る…。
その繰り返し…。
まだ自分がなにをしたいのか、何ができるのかわからないまま…だけど、ぼんやりと…このままでは何もない、つまらない人生になる…と少女は思う。
時羽ありす、16歳。
この時はまだ、奇妙なことが自分に起こるとは知る由もなかった。
日が落ち掛けたころ、
窓から眩しい光がほんの一瞬、降り注いだような気がした。
「気のせいかな…。」
西日にしては強く感じたありすは、窓を開けて周りを見渡す。
「いつもと変わんないか…。」
と窓を閉めようとした時、
「これって…ペンダント?」
ありすが手にしたのは、長い銀色をしたチェーンで、ビーズでできた翼の鍵にチェーンが巻き付けられたモチーフが付けられている。
「わたし、こんなペンダント持ってないはずだけど…。」
でも、この重さで風に飛ばされる訳はないし…。
このペンダントなら普通に着けていても 問題なさそうだし…。
と、ペンダントを首に掛けて窓を閉める。
「あ…そろそろ、下に降りないと…。」
階段に向かおうと、部屋を出た途端、驚くありす。
「え…なんなの……ここ…?」
下に続く階段は、見渡す限り…どこまでも続いているように見える。
一旦戻ろうと振り返ると、扉の枠はあるのだが、壁があるだけで部屋には戻れそうもない。
「進むしか…ないみたいね…。」
意を決して階段を降りていく、ありす。
静寂の中、足音しか聞こえない…そのことがありすを一層不安にさせる。
しばらく降りると、所々の壁がくり抜かれたようになっていて、いろいろなものが並べられている。
降りながら、しばらく並べられているものを眺めていると、あることに気づく。
「なんなの…ここ……。」
意味が分からない。
並べられているものは全て、今までありすが見て、多かれ少なかれ、気になったものなのだから…。
意図的に誘い込もうとしていると感じているありす。
「でも、行くしかないんだよね…。」
自分に言い聞かせるように、つぶやく。
それにしても、どこまで続いているんだろうと思わせるくらいに先は見えない。
先に進むしかない。そう思って先に進んでいるが、どこまで先に進めば違う場所に着くのか?着いたところで状況は好転するのか?考えたところで行かなければわからない。
「あぁ…!いつになったら、先にいけるのよ!」
ついにしびれを切らしたありすは、そう叫ばずにいられなかった。
誰もいないから、返事が無いと思っていた時、
タタタタ…
と何かが走ってゆく音が聞こえる。
ありすは、なるべく足音を立てないように降りていく。
遠くからは小さな点に見えた姿は、距離が縮まって少しずつ形が見えてくる。
(白くて…長い耳…うさぎ…?)
ありすが見たのは、白のタキシードを着ているうさぎだった。
ありすが追いかけるように走ると、
うさぎはそれに気づき、速度を上げて逃げる。しばらく走って、追いつきそうだと思ったその時、
突然、うさぎが消えた…。
「え…。えっと……消えた…?」
(もう…ホント、ワケわかんないんだけど…。)
あたりを見回して、痕跡を探す。
壁をよくみてみると、何か金属が出っ張っているように見える。
近づいて確かめると、ドアの蝶番だった。
(って、コトは…ドアだった…?)
いろいろ不可思議なことが起きすぎて、考えがまとまらない。
ありすは深呼吸すると、これまでの経緯を振り返ってみる。
(ペンダントを見つけて…階段を下りようとドアを開けて…出たら、この階段で…。もしかして、ドア…?)
何か閃いたありすは、実行に移す。
(多分、この辺よね。)
かつてドアノブがあったであろう場所に手を伸ばし、さながらパントマイムのように見えないドアを開けて、出る動作をする。
すると、どうだろう。
(当たってたけど…ここは…?)