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烈空武装イナヅマン(ご当地ヒーロー大戦)  作者: はくたく
第四章 株式結社 ゲル・ファーザー
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苦戦


 雷獣神……ツインアーマーを装着していたことを、俺は走り出してから思い出していた。

 妙に体が重く、思ったよりもうまく走れないのだ。それでもパワーアシストがあるから、生身で走るよりは余程早いのだろうが、意識にスピードが付いてきていない。

 さすがに天使達も甘くない。隙があると見たのか、標的を俺に変えて集中攻撃してきた。

 これでは、まるでこっちが囮だ。


「うわひゃひゃひゃひゃ!!」


 我ながら妙な声を出しながら、踊るようにジタバタと走って弾を避ける。

 足元を光弾が焼き、衝撃波がいくつも肩をかすめていく。避けきれなかった光弾を腕で受け流したが、痛い。かなり痛い。あ、そうか、そういやこっち折れてる方だった。

 そんなことを思いながらもそのまま突っ込めたのは、サバズシが付いていてくれる安心感からだ。任せろと言ったからには、コイツが何とかしてくれるに違いないのだ。

 だが、敵の目の前にたどり着いた時には、すでにツインアーマーはボロボロ。

 その姿を見て舐めてかかったのか、天使はたった一匹で襲いかかってきた。


『一匹か。もう二、三匹来てもよかったんだがな』


 耳元でサバズシが呟く。と同時に、ツインアーマーは勝手に解除された。

 解除といっても、それは爆発に近い威力があった。至近距離にいた一体の天使は、アーマーに弾かれて宙へ舞い上がり、そのまま空中で霧散してしまったのだ。

 驚いたような顔で振り向く天使達。なるほど。武装解除による衝撃なら、範囲は限られているから子供達にケガはない。それと同時に、爆発音で注意をこちらに惹き付け、隙を作るってわけだ。

 しかし俺は、それまで無表情だった天使達のビックリ顔に逆に驚いていた。あまりの無表情さと無機質なまでの表面の滑らかさに、ロボット的な何かかと思っていたが、表情らしいものを見せたってことは、こいつらはやはり生身の生物なのだ。

 だが、能面のような天使のビックリ顔は、この上もなく気味が悪い。やはり、イーヴィルは異界の生物なのだと認識を新たにする。

 俺から離れたアーマーは部品のまま空中を舞い、天使達の円陣をすり抜けて内側へ。

 そして、小学生達を取り囲んで空中を浮遊し始めた。


『キエエエエエエッ!?』


 状況を不利と見て、小学生に手を掛けようとした天使の一匹が、悲鳴を上げて後退る。

 同時に蒼白い稲妻が、周囲に散った。天使の腕は、真っ黒に焦げている。


「な……なんだよありゃ?」


『雷獣神のエネルギーを、チャージしたままパージしたのだ。ついでにサヴァズシ本体に帰らせず、小学生を守る盾としている。それよりボヤボヤするな。チャンスだ』


「そ……そうか!!」


 俺は慌てて雷獣剣を振るった。

 不意を突かれたのせいか、ろくに防御しなかった天使三体を一気に葬り去る。

 子供達を盾に出来ないと悟ったのか、仲間をやられて怒ったのか、天使達はすべて俺に向かって襲いかかってきた。

 至近距離で放たれた数発の光弾を、雷獣剣をふるい、サバズシの指示通りの太刀筋で弾く。


「すげえ……」


 感嘆の声を聞いて振り向くと、サンフジレンジャーが呆然と立っている。

 ようやく木の影から飛び出してきたらしいが、俺と天使達との戦いに割り込めず、うろうろと周りとうろつくしかできない様子だ。

 その時になって、アップルレンジャー残りの二人もようやくトイレの影から飛び出したのが視界の端に映った。


「タイミング見計らえって言ったろ!? 遅えぞ!!」


「す……すみません」


 答える声はえらく神妙だ。

 しかし殊勝な態度はいいが、飛び出してきておいて俺に手を貸さないのかコイツらは。

 にしても、本気になった天使は意外と強い。俺の斬撃を両手の爪でさばきながら、その手から次々に光弾を放ってくるのだ。

 至近距離でも手さえ封じれば狙いを外させるのは容易いし、わずかながら発射までのタメもあって弾道も読めるから、滅多なことでは当たらないとはいえ、一度に数匹相手にするのはさすがにキツイ。

 やっとのことでまた一匹を斬り伏せた。だが、状況不利と見たのか残りの連中は作戦を変えて襲ってきた。

 一匹が接近戦、残り数匹が少し離れた場所から光弾で攻撃してくる。俺は、光弾数発を背中に食らって膝を突いた。


『何をしているイナヅマン。今のは避けられただろうが』


 耳元でサバズシが騒ぐが答える余裕はない。一対多の戦闘は初めてではないが、天使達の攻撃力と素早さはかなりなものの上に、包帯に覆われたままの負傷部分には、サバズシからの電気刺激が伝わらないらしく、いくらサバズシが先読みしてくれても避けようがないのだ。


「ぐ……う……」


 雷獣剣で天使の爪を受け止めるが、力比べをしている場合ではない。このままでは他の天使の光弾にやられる……っと思った瞬間、横合いから乱入してきたサンフジレンジャーが目の前の天使に蹴りを入れた。

 ようやく戦闘に介入する決心が付いたらしい。


「て……手を貸しますッ!!」


「よし。背中、任すぜ」


 言いざま、左前方に踏み込みつつ、動揺している天使を袈裟懸けに斬り倒す。サンフジと俺は背中合わせになり、ぐるりと一回転して周囲を見た。俺達を囲む天使はあと三匹。


「武器は!?」


「これです!!」


 サンフジのかざした武器は小さな剪定バサミだ。そんなもんでどう戦うってんだ。


「リーチなさ過ぎだ。コイツを使え」


 俺は左手に召喚した雷電槌、イナヅマン式テーザー銃を渡した。


「引き金は二度引け。命中したら電流を流すんだ」


 サンフジは黙ったままうんうん頷く。


「来たぞ。やれ!!」


 一匹が、光弾を両手に溜めた状態で距離を急速に詰めてきた。慌ててサンフジが引き金を引く。

 高圧電流で天使が痙攣し始めるのを見届けてから、俺は剣を携えて残りの二匹に向けて走った。

 むろん、ダッシュのタイミングはサバズシの指示通り。一匹の喉を突き、そのまま振り返る。虚を突かれた最後の一匹は、驚いたような表情のまま、雷獣剣で胴を横薙ぎにされ転がった。

 大きく息をついて振り向くと、トイレに隠れていた二人のアップルレンジャーも、ちょうど一体ずつ天使を始末したところ。

 まあ、いくらなんでもそのくらいは片付けてくれないと困る。そして、これでこのエリアの天使は一掃できたようであった。


「よし!! 君達、さあ、安全なところへ!!」


 だが、ツインアーマーをサバズシ本体に転送して小学生達を解放すると、途端に彼等は逃げ出した。


「きゃー!! わー!!」


「天使様達が――!!」


 子供達は、満面に恐怖の色を浮かべ、差し伸べられたアップルレンジャー達の手もすり抜けてバラバラに走っていく。

 とことん嫌われたものだ。だがあのまま逃げて、また天使達と鉢合わせするようなことがあれば、今度は彼等の命が危うい。


「まずいぞサンフジ!! あれじゃ却って危ない!!」


「う゛……ぐ……くそおおお!!」


 子供達に避けられてショックだったのか、サンフジレンジャーはしばらく呆然と立ちつくしていたが、ついに唸り声と共に駆け出した。


「うらああああああ!! おまえら!! 食っちまうぞおおおお!!」


「きゃああああああ!!」


 子ども達の悲鳴が響く。

 それを見て、他のアップルレンジャー達も子供を追いかけて走り出した。


「悪い子はこっちか!! うまそうだなああ!!」


「たすけて天使様――――!!」


 両手を振り上げ、つかみかかるマネをしながら、ヒーローが子供達を追い回す。

 なんというか、悪夢のような光景だ。

 だがまあ、たしかに説得するよりはこの方が早いかも知れない。子供達全員を体育館内に追い込むと、アップルレンジャー達は地面にへたり込んだ。


「俺……ショックだわ」


「広報の渡辺さんが悪いんだよ。TVもラジオも費用が高いから、地道にイベントとドサ回りだけで売っていこうなんてぬるいこと言ってるから……」


「敵役キャラがいないのも問題だよな。もう少し正義と悪をちゃんと区分けしないと……」


 息をぜいぜい弾ませながらも、のんきに今後の活動方針を話し始めた彼等を、俺は一喝した。


「バカかてめえら!! まだ作戦は終わりじゃねえぞ!! さっさと他の三人のところへ応援に行け!! 絶対苦戦してる!!」


「あ……すみません。あの、イナヅマンさんは?」


 実力差を感じたのか、俺をさん付けで呼ぶようになったようだが、そんなことはどうでもいい。


「ローメンマンさんのところへ行く。滅多なことはないと思うけどな」


 天使の数に偏りがあったのが気がかりだ。

 俺達の倒した数十匹に対して、アップルレンジャー達に振り向けられていた天使の数は明らかに少ない。これがもし、実力に対応してその数を増減させているのだとすれば、一番の実力者であるローメンマンさんのところへは、それこそ百匹単位の群が差し向けられていても不思議じゃない。

 俺達イナヅマン・チームがあっさり天使群を倒せたのは、実力以上に作戦のおかげだ。まともにやり合っていたら、おそらくもっと苦戦していたに違いない。

 喧嘩っ早いおまつさんの『先手必勝の精神』が無ければ、あの強力な天使の攻撃で負傷していた可能性もある。

 俺は踵を返すと体育館東側へ戻り、おまつさんたちの姿を探した。

 場合によっては、おまつさんか小鮎ちゃんのどちらかを、応援に連れて行く必要があると思ったからだ。だが、そこにいたのは青いアーマーのイナヅマン・アクア、つまり小鮎ちゃん一人であった。


「おまつさんは!?」


「ここは私一人で大丈夫そうだから、正面玄関に応援に行くって……」


「しまった」


 俺はあわてて駆け出した。

 予想通りの展開だとすれば、ローメンマンさんは間違いなく苦戦している。そこへ行ったおまつさんも危ない。


「きゃああっ!!」


 そう思った途端、正面玄関の方から響いてきた悲鳴。続けて、金属の破壊音。

 駆けつけた俺が見たのは、右半身の雷鎧を剥ぎ取られ、体育館の壁に叩き付けられるイナヅマン・フレイム、おまつさんの姿であった。


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